オッド・トーマス・シリーズ第2弾。
霊を見ることのできる20歳の青年、オッド・トーマスの物語。
前作では、若干の犠牲を出しながらも、その能力により大量虐殺事件を最小限に食い止めるが、
自身は取り返しのつかない悲劇に巻き込まれたオッド。
その失望感の中から本書は始まります。
今回は、オッドのただ一人の親友(骨形成不全症を患う)が何者かに誘拐され、彼を救うため、
たった一人で誘拐犯たちに立ち向かうというお話。
こう書くと、主人公のオッドは前向きで溌剌とした正義感あふれる青年のようにみえますが、
実はそれとは違い、友達も少なく、内向的で、後ろ向きな、とてもヒーロータイプには見えない悩める青年です。
彼の見る霊は言葉を話しません。
何か訴えたい事があっても苦悩したり泣いたりするだけなので、オッドが何とか理解してやる必要があります。
霊はいつでもどこでも好きなときに現れます。
場所と時間に縛られているものもいますが、何か強烈に訴えたい事があるものはそれには捕らわれません。
その姿は生きている人間と何ら変わりません。
ただしゃべれないだけです。
そのため、本書を読んでいると、最初、その人が生きているのか死んでいるのか分かりません。
オッドは彼を頼りに現れる霊たちのために、霊が何を訴えたいのか何とか分かろうとしてあげます。
(そうする義務があるわけでもないのに)
その代表がエルビス・プレスリーの霊。
エルビスは頻繁にオッドの前に現れ、時に陽気に、時に泣きながら、オッドに何かを訴えます。
それはエルビス自身の事だったり、これからオッドに起こる事だったりします。
エルビスの挙動が本シリーズでは重要な役割を演じている場合があります。
オッドは今回、ただ一人で事件を解決しようとしますが、その過程で生と死について思いを新たにし、
前作の悲劇に折り合いを付け、人生の次のステップに踏み出します。
本シリーズには未訳の続編2作があるので、早く邦訳される事を望みます。
オッドは思わず応援したくなるほど、大変いいやつです。
決してスーパーマンのような強い肉体や明晰な頭脳があるわけではなく、
どこにでもいそうな青年なので、大変感情移入しやすいです。
前作での悲劇では思わず涙がにじんできました。
大変よい本です。