ハードSFの旗手、ジェイムズ・P・ホーガン。



 

かなり多くの邦訳作品があるので、中々全ては読めず、今はこのくらい。



 

・「プロテウス・オペレーション」(全2巻)

 

・「終局のエニグマ」(全2巻)

 

・「マルチプレックス・マン」(全2巻)

 

・「ミラー・メイズ」(全2巻)

 

・「量子宇宙干渉機」

 

・「創世記機械」

 

・「ミクロパーク」

 

・「時間泥棒」

 

・「造物主の掟」

 

・「造物主の選択」

 

<巨人たちの星シリーズ>

 

・「星を継ぐもの」

 

・「ガニメデの優しい巨人」

 

・「巨人たちの星」

 

・「内なる宇宙」



 

「プロテウス・オペレーション」は冷戦終盤に書かれた本で、第二次大戦でドイツが勝った1974年が舞台。

 

アメリカは起死回生を狙いタイムマシンで過去に行き歴史を書き換えようとするが…というお話。

 

実はこの本がホーガン初読で、ホーガンという作家はこの手のポリティカル・スリラー的な作家だとばかり

 

思っていた。読んだのが学生時代までさかのぼるため、記憶はかなりあいまい(^^;



 

「終局のエニグマ」も時代的には似たようなもの。こちらはソ連のスペース・コロニーを探るアメリカの特殊

 

エージェントの活躍を描いたもの。これは非常に面白かった記憶があり、特にラストのどんでん返しには

 

うならされた。ジャンル的には「プロテウス~」とほぼ同じなので、まだハードSF作家の印象は薄い感じ。



 

「マルチプレックス・マン」は、次から次へと記憶、人格が入れ替わる男が自分の本当の姿を探すというもの。

 

さすがにこれはいかにもSFな作品。



 

「ミラー・メイズ」は、…なぜかあまり記憶に残ってないんですよねぇ(^^;なんでだろうか?

 

面白くなかったわけは無いんですが…かなりSF色の薄いポリティカル・スリラーの印象があるので、

 

当時の良く読んでいた東西陣営対決ものの中に埋没したかも。



 

「量子宇宙干渉機」は完成した量子コンピュータにより平行宇宙との接触が可能となり、それを使って

 

政府が色々悪さしようと言う、まさにハードSFな小説。量子コンピュータ・平行宇宙というアイテムも

 

あり、それについての論理の難しさもありでこういうのはホーガらしい作品と言えるのでは?



 

「創世記機械」は物理学の統一場理論に画期的解釈と実践を果たした独創的科学者が、政府の横槍を

 

受けながらも地球と人類のために一計を謀るというもの。こっちも素粒子物理学の理論がガンガン出て

 

くるので、物理的素養がないとちょっと難しいかも知れませんが、わたしも別に大した知識もなく、何とか

 

読めましたし、結構面白かったです。



 

「ミクロ・パーク」はミクロサイズのロボット製造の特許をめぐる陰謀劇ですが、主人公は発明者の息子で、

 

ロボット目線での世界の描写はピクサーあたりがよくCG映画化しているものと酷似していて、そういう意味

 

では非常に楽しい作品。ホーガン流のジュブナイルと言ったところ。



 

「時間泥棒」はわずか180ページ弱の小品。ニューヨーク市の時間がいたるところでズレはじめ、時間を

 

盗む何かがいるのでは?と調査する話。ホーガンにしては珍しいドタバタSF。

 

量的にも内容も気軽に読める作品。



 

「造物主の掟」と「造物主の選択」シリーズもの。人類が木星の衛星タイタンを調査すると、そこには中世

 

そっくりの生活をするロボットたちがいた。彼らを使って私腹をこらそうとする地球側組織と、それを阻止

 

しようとするインチキ心霊術師グループの話が、「~掟」。「~選択」はその続編。ロボットたちを作った

 

異星人たちの復活とそれを阻止するインチキ心霊術師グループの話。

 

思考するロボットという技術進化の頂点である存在が、神や奇跡を信じる中世的精神の持ち主という設定

 

が面白いし、彼らの生活ぶりもまた面白い。なぜ肉体を持たない彼らが進化し成長していくかの設定が

 

なんとも言えず楽しい。また、彼らを作った異星人たちの設定もおそろしくひねくれていて面白い。

 

それほど難しい理屈もないので肩肘張らずにリラックスして読めます。



 

<巨人たちの星シリーズ>は今のところ邦訳は4作品(のはず)。

 

「星を継ぐもの」は月面発掘の際に見つかった人型の死体が人類ではなく5万年前のものだった。

 

いったいこれは何なのかの謎を探るハードSFミステリー小説。

 

発掘→調査→仮説→新事実発見→発掘→…というループを繰り返すため、正直言って動きが少なく

 

物語的変化に乏しい作品ではありますが、ラストに判明するあっと驚く事実の前にはそんな事は

 

気になりません。



 

「ガニメデの優しい巨人」は前作で想定された巨人異星人との遭遇を描くもの。前作で未解決だった謎の

 

解明や、巨人異星人の進化の過程の解明などこちらも気持ちいい論理展開が味わえます。



 

「巨人たちの星」では、前作で友好関係を結んだ巨人異星人たちを本来の彼らの母星へ送り届けるため

 

の協力と、地球人のルーツを探る話。地球人がなぜ宗教やオカルトにのめりこむのかの理由が判明

 

します。そう言われればきっとそうかもと思わずひざを打つ理屈が展開されて楽しくなります。

 

そして巻を進めるごとに解決される謎と新たに現れる謎でホーガンの罠に引っ張り続けられる事に。



 

「内なる宇宙」は地球のルーツである異星人たちの間に巻き起こる人格変容事件の解明に、地球人と

 

巨人異星人とが協力してあたるという、アクション巨編になり、かなり作品のイメージが変わってきた

 

感じのもの。これは前作から徐々にこういった変化が現れてきており、本作では映画的手法とも思える

 

描写になってます。まぁ、これはこれで面白いんですが、論理的な謎解きよりもアクションのイメージが

 

強いもの。好き嫌いは分かれるかも。



 

シリーズはまだ続いてるらしいんで邦訳してもらいたいんですが、他にも未邦訳のものもあるようで、

 

何とかならないもんですかね。




左側の方が昔。カバーの痛みで時代が分かる。

アルバレスのブログ