非常に広い範囲でとらえればこれもSFかな?
トロイの木馬でおなじみのトロイア戦争を描いた作品ですが、本作はアカイア(ギリシャ)勢を率いる
アガメムノンと勇者アキレウスとのいざこざからトロイア勢の主将ヘクトルの死までを描いたものなので、
ここではアキレウスの死やトロイの木馬は出てきません。
それでも上下巻あわせて900ページほどもあります(巻末の訳注も含む)。
数年前、ブラッド・ピット主演で映画化された「トロイ」はトロイア陥落まで描かれていましたが、
大きな違いはギリシャ神話の神々が出てくるか来ないかに尽きます。
本作ではギリシャ神話の神々の話が半分くらいある印象。
とにかくやたらにちょっかい出してきます。
実質、彼らのおかげで趨勢に大きな影響が出てしまいます。なんと言っても神なので。
ところで、これを読むのには実は普段の5割り増しくらいの時間が掛かりました。
決して読みにくいわけではないです。
それどころか文章としては読みやすい方です。訳者の方が苦労されたんだと思います。
ただ、どうも頭に入ってこない。
普通の小説のような文体というかなんというかとはかなり違います。
たとえばある戦士を形容するのに「獅子のよう」という表現が良く出てきますが、
この「獅子」をさらに詳しく説明しています。
「○○で××し、□□の△△を◇◇したような、そんな獅子のように…」という表現が
非常に多いです(実際はこの説明が数行続く)。
また、台詞が長い。平気で4~5ページ続きます(昔の人がおしゃべりというわけではないでしょうが…)。
そんなわけで物語が伝わりにくいです。
ただ、戦闘シーンなどは非常に細かく描かれており、槍がからだのどの部分にあたり、人体がどのように
壊れたかなどと言った描写がそれに当たります。
もともと琵琶法師が詠じた平家物語のような詩物の文章化なので、現代の小説のようにいかないのは
当たり前なんでしょうが、学生や研究者でない一般人が読む場合はそれなりの覚悟が必要でしょうね。
ただ面白くないわけではないです。ちょっと読みづらいだけですんで。
あと、下巻巻末にはヘロドトスのホメロス伝(30ページくらい)が載ってます。
ホメロスの人となりがわかります。
ホメロスって本名じゃないんですね。盲人という意味だそうです。
勉強になるなぁ。