こちらも巨匠のハインラインは以下の6作品を読了。

 

(発表順)



 

・「人形つかい」

 

・「ラモックス」

 

・「銀河市民」

 

・「夏への扉」

 

・「宇宙の戦士」

 

・「月は無慈悲な夜の女王」



 

「人形つかい」「ラモックス」「銀河市民」はジュブナイル扱いされているものですが、

 

特にその傾向が強いのは「人形つかい」。

 

謎の宇宙生物が人間に取り付き、取り付いた人間を操りながら世界中に勢力を伸ばす…

 

というボディ・スナッチャーな話ですが、正直言って大人が読むにはちょっとつらい。

 

主人公は秘密組織のエリートらしき設定ながら猪突猛進、感情優先、無為無策のため

 

やたらと墓穴を掘るので、読んでて「もうおまえ死んでしまえ!」と思えて来ました。

 

とられる作戦も「裸になれば取り付かれてるかどうか分かるぜ」作戦のような、

 

ウルトラマンタロウのZATがよくやっていた子供じみたものだったり。

 

まぁ、気楽には読めます。



 

「銀河市民」もやはりちょっと子供向けな印象。

 

ただ、こちらの方が物語的にはなかなか読み応えがあります。

 

ラストが知りきれトンボなのがもう一つですが。



 

「ラモックス」は、宇宙冒険家の家に飼われている宇宙怪獣ラモックスと飼い主の少年を

 

めぐる話ですが、こちらは意外と大人の鑑賞にも堪えうる面白い小説です。

 

この何でも食べて(特に鉄)ドンドン大きくなるラモックス(少年のおじいさんの代から飼われている)が

 

実はトンデモナイ存在であり、最終的には人類存亡を賭けた大事件にまで話は広がります。

 

また、その過程で地球政府の官僚制批判的な描写もあり、案外社会派小説の側面も。

 

とにかくだまされる覚悟で読むと、いい方向にだまされる作品です。



 

「夏への扉」はハインライン作品の中でもかなり有名なもので、題名だけ見るとSFっぽく無いですが、

 

純然たるSF小説。

 

信じていた同僚に裏切られ全てを失った主人公がコールドスリープとタイムマシンを使って時間を

 

行き来し復讐を果たすといった内容で、こういうと結構ドロドロした話かと思われますが、

 

結局、復讐は二の次になっていき、ラストは実にさわやかな終焉を迎えます。

 

読んでいてだんだん暖かくなるような作品。よいです。



 

「宇宙の戦士」は説明不要の超有名作品で、ポール・バーホーヴェン監督により映画化されたもの

 

(「スターシップ・トルーパーズ」。都合シリーズ3作まで作られた)。

 

ただ、映画の方は監督の人体破壊趣味をここぞとばかり表現した、小説とは似ても似つかない作品

 

なので、あまり参考にはなりません。(個人的には大好きな映画ですが)

 

小説の方は、実は戦闘描写はそれほど多くなく、訓練シーンの方が圧倒的に多いです。

 

ストレートに読むと戦争礼賛にしか読めませんが、そこは感情の裏返しとして読む方が正解かも。

 

ちょっと説教じみた感じもあるので多少読みづらいですが、読んで損はしません。



 

「月は無慈悲な夜の女王」は、地球政府からひたすら搾取され続けている月世界市民が地球から

 

独立するまでを描いた作品。兵器を持たず、圧倒的に物量に劣る月世界市民が、徐々に組織を

 

構築、拡大し、地球政府内部の切り崩し、交渉、マスメディアの利用、現有設備を使った戦闘を

 

経て見事に独立を果たす描写は非常に細かく、巻末解説にもあるとおり「クーデターのバイブル」

 

的な印象。特に、組織構築の論理はなかなかにすごいです。

 

ただ、本書の非常に残念な点は、活字がすごい小さい事。

 

最近の本のポイントからすると2周りほど小さいのでは?

 

すごい読むのに苦労します。内容はいいんですが…

 

わたしが持っているのは2007年の22刷なんですが、もう少しまともな感じになったのが出てるのかな?



 



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