13暖房の効いた部屋で熱帯魚を眺めてアイスを食う風流だな~
T19ただいま~!あぁ寒っ!大雪だ大雪!
13おかえり


T19あんた等は良いなぁ、1日中暖かい部屋でのんびりできて
13この寒波じゃ、わしには何もできん南の島にでも連れてってくれるなら魚獲りまくってやる
T19俺だって金と時間があれば行きたいよまぁキノボリウオ見て南国気分になろう
13こいつ、名前付けてやったらどうだ?
T19それなぁ、考えてんだけどなかなか良いのが浮かばなくて・・・姐さん考えてよ
13う~ん・・・色白なやつだから・・・・・・・・・雪見だいふく・・・雪見ちゃん!可愛くない!?
T19それでいこか

と言うわけで、お迎えしたキノボリウオの名前は『雪見ゆきみ)』ちゃんに決定しました♪
温度計を興味津々に突いたり、空気を吸うため水面に浮いたり、外見も挙動も、ギルとライギョを足して割ったような魚です。

無邪気な雪見ちゃんを見てると、否が応でも想い出してしまう、15年前の出会いと別れ。

あれからどうなっちゃったんだろう、うぇるず・・・。


15年前、2010年2月。比叡山高校1年生だった私T19の元に、Y君から電話が掛かってきました。

Y君は小・中学時代に仲良しだった同級生で、学年では私と共に「生き物博士」と呼ばれてた子です。

私が魚類と両生類に明るかった一方、Y君は昆虫に詳しく、互いに知識自慢をしたもんでした。

Y君はエリート校の石山高校へ進学して離れ離れになり、連絡も途絶えてしまってたのに、突然の電話。

曰く「T19君にお願いがあんねん」との事で、一先ず彼の家へ。

❝お願い❞を要約すると、「アクアリウムにチャレンジしよう思ってナマズの赤ちゃん買うてんけど、餌食わんし元気無いし、魚に詳しいT19君に世話してほしいねん春になったら引き取る」と。

手間賃として2000円を差し出すY君。

何で不慣れな魚の飼育を真冬に始めるんだとか、手間賃ちょっと安過ぎだろとか(笑)、今思うとこの時点で突っ込み所だらけなんですけど、彼の事は話の合う大事な仲間だと思っていたから、私はナマズの世話を引き受けました

斯くして、発泡スチロール容器に水を張り、家に連れ帰ったナマズ幼魚の『うぇるず』。

人差指ぐらいの可愛いサイズながら、艶々してて健康状態に問題は無さそう。

このサイズを無加温飼育はちと怖いんで、35センチ水槽にミニヒーターを設置。隠れ家として塩ビパイプ投入。
水槽に放つとすぐパイプの中に引き籠ってしまったうぇるず。

その日はナマズ用配合飼料を水槽に入れ就寝。しかし翌朝も餌は残ったままでした。まぁ魚の導入あるあるですね。
こんな時は、生餌で本能を刺激する!赤虫を水槽に落とすと、そろそろとパイプから出て来たうぇるず。

パクッ!と赤虫を咥え、ダッシュでパイプの中に戻って行きました。魚飼育で感動する瞬間の1つ♪
以降ヤツは食欲旺盛になり、赤虫だけでなく配合飼料も喜んで食べ、これで一安心。

3月。怖がりなうぇるずは相変わらず餌の時間以外はパイプの中で、姿をじっくり見れるのは水替えの時のみ。
水槽洗ってる間、発泡スチロール容器にヤツを避難させ、そん時に全身を観察できるんです。

4月。うぇるずはとにかくよく食べ、すくすく育ち、手の平よりも大きくなりました。
ナマズって成長早いんだなぁ」と驚きつつも、自分の飼育で立派になっていくうぇるずがとても愛らしかったです。

何かおかしくね?」と思い始めたのは5月

間の抜けたユーモラスな雰囲気は既に無く、猛々しい顔付きに変貌。ちょっと短期間で育ち過ぎじゃない・・・

そして、よく見たら上顎に長いヒゲが1対、下顎に短いヒゲが2対、計6本のヒゲがあるんです。

マナマズのヒゲって4本じゃなかったっけ

本によれば、❝マナマズは稚魚期のみ6本ヒゲ❞と書いてあるけど、うぇるずはもう稚魚って大きさじゃないし・・・。
6月。Y君に「そろそろうぇるずを返しても良い?」と聞きましたが、「ごめんやけどもう少し面倒見たってほしい」と。

7月。成長止まらず、ヤツは塩ビパイプへの出入りができなくなり、攻撃的になって、水槽の面に体当たりするなど暴れまくりで、水替え時は戦々恐々。

異様な成長速度、奇妙な斑模様、ずっと6本ヒゲのまま・・・うぇるずがマナマズではないのは明らかでした。

こん時のうぇるずは少なくとも30センチ強。僅か5ヵ月で5倍の体躯になったと(ちなみにマナマズが孵化して30センチを超すには2年は掛かるらしい)。

そして8月うぇるずは35センチ水槽で体を伸ばせなくなった・・・。
常に体を折り曲げてる様は見るからに窮屈で、私は我慢できず「夕方で良いしウチ来て!」とY君を呼び出しました。

T19コイツ、普通のナマズちゃうよね?
Y君え~!よぅ気付いたな!流石やわ!
T19あっと言う間にこんなデカなるん、絶対おかしいやん!
Y君この子ね~、ヨーロッパオオナマズとかいう種類で、通販で安くてな!
T19はぁ!?

うぇるずの正体は、全長3メートル近くまで成長するユーラシアの怪魚ヨーロッパオオナマズ』。
ナマズ目としては勿論、淡水魚全体の中でも最大級の巨体を誇る化物です。

Y君は「飼育の道具がまだ揃ってへんしもうちょっと」と言いかけるも、私はそれを遮り「ウチではもう飼い切れへんし持って帰って!この水槽に入れて帰ったらええし!」と強い口調で言い切る。
Y君は納得いかなそうな表情で渋々承諾。父親に車で迎えに来てもらい、水槽ごとうぇるずを持って帰って行きました


安かったから巨大魚の赤ちゃんを衝動買い、飼育設備の購入は先延ばし、その間の世話を他人に任すというY君の行動を、私はどうしても理解できず、それ以降、彼との交流は無くなってしまいました。

成人式で聞いた話では「Yは関東で大学通って教師を目指して頑張っとる」らしい。

でも「ナマズを飼ってる」って話は出て来なくて、うぇるずがどうなったのか、今も分らぬまま

巨大化して捨てられたヨーロッパオオナマズがそこらの池や川で発見され騒動になる度に、「まさかね・・・」と嫌な汗が出ます。
ちなみにヨーロッパオオナマズは2016年に特定外来生物に指定され、輸入や飼育が原則禁止に。

うぇるずに窮屈な思いをさせ、Y君ではとても飼育できないと悟りながらも彼にうぇるずを返した(=事実上見捨てた)、あの出来事を決して忘れず、新たにやって来た雪見ちゃんを大事に育てなければと、気を引き締めているT19です。