T19「居た!」
スクリーム「うわ、びっくりした!」
T19「ヌシ様、お久し振りです。戻って来ました」
スクリーム「相変わらず、そこらの川にふつーに居るのね・・・天然記念物なのに」
T19「よし!ヌシ様に挨拶したし、車に戻って陽が出るまで寝よ!」
スクリーム「そうしましょ、気温-2度だって」
午前9時。
T19「あぁよく寝た!約束の時刻は13時だ」
スクリーム「怪しいLINEに乗せられて6時間もドライブするなんてねー、良い悪いは別として大したもんよ」
T19「元カノを放っておくわけにはいk」
スクリーム「一々かっこ付けない!」
T19「しかしやっぱ良いなぁ、この街の空気」
やって参りました広島県庄原市!大卒後、この街の養鶏場に就職して5年半の歳月を過ごした、私にとって第2の故郷。
私はまだ庄原市民だった2019年、1ヵ月程ではあるものの、Sさん(当時28歳)って女性とLINEで付き合っていたのです。
LINEでは会話が弾んでたのに、初対面のディナーで露骨に冷めた態度をとられ、話し掛けてもいい加減な相槌、目も合わせてもらえず、食事会は僅か45分でお開き。未だに当時の情景を思い出すと涙が溢れる、悲しい悲しい夜でした。
その夜を境にSさんとのLINEは止まり、色々あって愛知県の養鶏場へ転職することになり庄原を去って今に至るんですけど、先日Sさんから4年ぶりに「釣りを教えて下さい」、「ご飯行きましょうよ~!」などという奇怪なLINEが来たんですね。
怪しさ満点でも、マッチングアプリで惨敗続きな状況で、女性からこんなメッセージもらえるのは正直嬉しくて我慢できず、2連休を使って愛知から広島に戻って来たと言うワケです(笑)。
バッチリ身嗜みを整え、12時50分、約束の喫茶店へ。
私が車から降りるなり、「お久し振りで~す」と歩いて来た、凛とした雰囲気のSさん!しかもあの夜と違い今回は凄い笑顔!
T19「は、初めて入りますよこの店!オススメとかあります?」
Sさん「ここはチーズケーキが美味しいんですよ。うちはチーズケーキ!」
T19(高っけぇ!1切れ500円!?コスパ悪いぞコレは・・・)
Sさん「決めました?」
T19「あ、僕も同じので」
Sさん「実はうちね、たいぎい病気になったんよ」
T19「え?」
Sさん「いつ体めげるか分からんけぇ、今まで繋がりあった人に声掛けよるんです」
T19「そう、だったんですか・・・」
T19「・・・すみません僕、全然存じなくて!しんどい中LINEして下さったんですね」
Sさん「謝らんでええよ!遠い所からよう来てくれちゃった!」
T19「僕もSさんにまた会えて、来て良かったです!」
Sさん「ほいで、うちね、もしあの世行っても上手くやれるように、○○って宗教に入信したんよ。ええ機会じゃけぇ、祈祷したげる」
T19「ゑ」
スクリーム(そういうことかー)
Sさん「3分あったら終わる御祈りなんじゃけど、悪い霊を浄化できて」
T19「い、いや、除霊なら大学で履修済みで、自分でできるんで大丈夫です!」
Sさん「○○さんの御加護は本物で!」
T19「僕は大山咋神、素戔嗚尊、蔵王権現などなどメッチャ強い神仏の加護を受けてますから!」
スクリーム(神様でデュエルするんじゃないよ)
Sさん「へ~宗教詳しいんじゃね!うちそういう話好きじゃけぇもっと教えてぇや!」
T19「え、あ、まぁ、高校大学が宗教校だったもんで、へへっ」
スクリーム(やばい!旦那が乗せられちゃう!)
釣りの話なんて1個も出ないし、病とは言っても具体的にどんな病気か全く語らず、宗教のパンフレットを広げ始めるSさんに疑問を抱きつつも、私の知識を褒めてくれたことに幸せを噛み締める男T19。
Sさん「ほいでね、多くの人が現世でやってしまっているのが殺生。例えばあなた方が養鶏場で、ニワトリを〆ましたと。他の宗教では赦してくれんことでしょう?」
T19「ん?」
Sさん「○○さんの場合は3分の祈祷を受けることでその罪が赦されるんです」
んなアホな話があるわけ無い。今まで俺が仕事で殺めた、鳥達の最期の怯えた表情を、殺生の罪を3分でチャラにするだと?
できっこないし、やってはいけないことだ。
Sさん「本山は県外じゃけど、庄原でも話は聞けるけぇ、今から時間ある?」
T19「ごめんなさい。その宗教とは合いません。仕事柄、俺は今後も殺生を続けますから」
Sさん「・・・」
T19「ここのチーズケーキは美味いですね。500円の価値有りです。僕が払いますよ」
Sさんとの2度目の対面は、45分にも満たないタイムでお開きとしました。
「行きは6時間。てことは帰りも6時間」と当たり前のことを1人呟いて、晴れた庄原の街を展望。
スクリーム「みんなー!今日は遊びに来たんじゃないのよ!BOXに戻った戻った!」
T19「・・・いや、遊ぶか!」
スクリーム「え?」
T19「庄原まで来て、宗教の勧誘受けてトンボ返りって、納得いくわけ無いだろ。庄原は中国地方のほぼ真ん中。野池は冬モード。しかしこれだけの日照があれば・・・」
バスは浅瀬に現れるはず!
思った通り、ゆっくり泳ぐルアーの2メートルほど後方に分厚い唇の顔が見え、即座にルアーを空中へ引っこ抜いて回収。
居場所は分かった。冬モードの動きの鈍い魚には、敢えてすばしっこいルアーで闘争本能に火を点ける!
2023年、初バスもらったぁぁぁ!
Sさんに手取り足取りバス釣りを教える気満々でしたから(笑)、色んな種類のルアーを持って来てたことが功を奏しました。
本当はSさんの前で魚釣って見せたかったし、Sさんにも釣ってもらって、楽しい想い出を作りたかったなぁ。
スクリーム「やったねー!さ、安全運転で帰りましょう!」
T19「いや、今夜は庄原で寝る」
バスを釣ってもまだ帰る気になれず、前の会社の後輩M君、Y君を呼び出して緊急飲み会。
仕事で苦楽を共にしたのは勿論、社員旅行中ぼったくりに遭い、財布を空にされて泣き寝入りした想い出のメンツ(笑)。
Y君「いや~久々じゃねぇ!先輩また庄原来てくれるとは思わんかった!」
M君「オレ等の会社は鳥インフル出て最悪っすから、先輩辞めて正解でしたよマジで」
T19「まぁ、遅かれ早かれそうなるだろうって思ったから、リーダーほっぽり出して庄原から逃げたんだよ俺は。2人には申し訳無いけど」
Y君「まぁ飲みんさいや」
T19「・・・Uさんは元気?」
Y君「辞めた。大事に飼った鳥みな殺されてニュースで騒がれて、よう耐えれんかったんじゃろ」
T19「そうか・・・」
Y君「しかしそのSさんいう人、釣りを餌に釣り人を釣るんじゃけぇ、なかなかやり手よなぁw」
M君「先輩は舞い上がってから、女の子に言われるままにいなげな宗教入りそうっすよね!w」
T19「ぶっちゃけ今日、ちょっと危なかったよ」
M君「マジすか!?よう断れましたね!」
T19「ニワトリが助けてくれたんだよ」
今回の決まり手:グラッピーS60L+バトル2000+ナイロン10ポンド+マーゲイ・ステップキャット