NZクローラー「1匹も釣ってないのに・・・木に引っ掛けられちゃうなんて・・・」
ラスカル「そっかそっか、ついてなかったねぇ」
NZクローラー「あ、アライくん!?助けて!!」
ラスカル「あぁ良いぜ。僕のマスターの所に来なよ。ただ、1個お願いがあるんだけど」
NZクローラー「聞く!!何でも聞くよ!!」
ラスカル「その羽、ちょっと貸してくんない?」
さて、前回紹介致しました、入社したてで会社に素行を叱られ逆ギレした、問題児K君(22歳)。
ほとぼり冷めぬ6月中旬、彼は更なる問題を引き起こしました。会社に棲み着くようになったのです。
K君「じゃけぇ、嫁と離婚するんだって。たちまち家が無いけぇ、会社で寝泊まりさしてもらうで」
T19「オヤジさんの所に戻ることはできんのか?」
K君「・・・親父は仕事が忙しいけぇね。迷惑掛けとうない」
T19「なら、庄原市内でアパート探して、社員寮って形で会社に援助お願いするとか」
K君「いや、オレの車乗れんのんよ」
T19「へ?」
K君「オレのプリウス、車検切れたまま乗ってたらポリに押さえられてしもうた」
T19「ハァ!?」
離婚して家を失った上に車という通勤手段も無くなり、会社の事務室に布団を敷いて生活するようになったK君。
注意したら、「じゃあオレに道端で寝ろ言うんか?」とやっぱり逆ギレですよ。
私は我慢ならず場長の元へ、K君を辞めさせることはできないか談判しに行きました。
しかし場長、「まぁ若手不足の業界じゃけぇ、あんなでも足しにはなるじゃろう。お前が指導して育てちゃれ」と現場丸投げ・・・。
そして場長、私とK君のツーマンで、中型トラックでの福岡出張を命じてきたのでした。
場長としては、現場リーダーの私と問題児K君の仲が深まるよう、粋な計らいをした気なんでしょうが、こっちからすりゃただの嫌がらせです。
と言うわけで6月27日夕方、私T19とK君はトラックに乗り合わせ福岡へ出発。
家も車も、信頼も全く無いK君ですが、「来月はデリ中心でヤろうかのう」と、女遊びの話を無垢な子供のように語ってきます。
私はもう、彼のことを“人間からかけ離れた1頭の動物”としか感じられず、相槌を打つことすら面倒に思いつつ運転。
予定より20分ほど早く福岡県内に入れたから、コンビニで買い物と時間調整をすることにしました。
T19「おっしゃ、このローソンならトラックで入り易いな!」
K君「仕事たいぎいな。はよぅ帰りたいわ」
T19「それは俺も一緒よ。頑張れば頑張るだけ早く終わる」
K君「夜中に出張させられとるんじゃけぇ、ボーナスは太くなきゃ困るで」
T19「ボーナスのことはもっとお偉いさんに言ってくれ。俺は現場リーダー。現場を治めることが俺の仕事d」
ガンッ!!
T19「」
K君「え?何今の音!トラック何かにぶつかったんじゃないん!?」
T19「」
ローソンの駐車場にて、バック駐車すべくトラックを後退させた私T19、注意散漫の状態で下がったことが祟り、車体が何かに接触。
言葉が出ないまま、私は静かにトラックを降り、荷台を見に行きました。
トラック側はテールランプ周辺に軽い傷が付いたのみでしたが、ローソンと、隣のコインランドリーを仕切るブロック塀が無残に割れ、その破片が自動販売機を圧迫している状況。
・・・他所様の持ち物を壊した・・・会社のトラックで・・・俺が・・・もしもこれが人間だったら・・・。
私T19、頭が真っ白になることも、取り乱すこともなく、ただ自責と後悔、恐怖の念が渦巻いて、そこに立ち尽くすことしかできなくなりました。
T19「」
K君「ちょ、このままじゃヤバいけぇ、とりまポリ呼ぶで!ほいで先方にも「遅刻する」ってオレから電話しとくわ!」
T19「え、でも・・・遅刻したら怒られるよ」
K君「何もせんこうに離れたら当て逃げ食らうって!そんなら先方に怒られる方がまだええじゃろう!?」
K君が警察を呼んでくれて、また先方へも連絡してくれました。私はと言うと、ほぼほぼフリーズしてました。
お巡りさんに謝り、ローソンの店員さんに謝り、およそ1時間遅れで現場入りして先方の担当者さんに平謝り。
K君は、私と一緒に頭を下げてくれました。
帰りの車内では2人とも疲れちゃって、殆ど会話が無かったのですが、私は不意に口を開き、「K君、ごめんな」と言いました。
K君「まぁ事故ってしもうたもんはしょうがないよ。アレで済んだだけで良かったで」
T19「俺のせいで、巻き添えになって怒られて、嫌な想いさせちゃったな」
K君「平気じゃいやwオレなんか生まれてこの方怒られてばっかよwこないだも会社からボロクソ言われとるんじゃけぇw」
暗い空気を笑って流そうとするK君が、不覚にも頼もしく見えました。
心の底から軽蔑していた、女遊びしか頭にない人間失格の不良少年に助けられた私T19。
K君、君は悪人か善人か?人なのか人間なのか?・・・んなことばっか考えてる俺は何なんだ?
トラックは、夜明けに向かう静かな中国道をひたすら上って行きました。
T19「・・・」ハァ
CD「珍しいですね。烏龍茶なんか飲んで」
T19「俺は、甘ったれてたのかもしれない」
CD「余程深く落ち込んでいると見えますね」
T19「5年間の頑張りがチャラになったも同然だ。弁償は会社が保険でどうにかするって言ってくれたけど」
CD「解決したならもう良いじゃありませんか。これからも、今までの5年間と同じように、変わらず働けば良いのです」
ラスカル「やぁやぁ、堅苦しい話はもう終わりにして、この天気、ナマズが熱いと思うんだけど、今晩どう?」
CD「君、どうしたんだその羽?」
ラスカル「借りたんだよ!ランカー御用達デプス印のウィング!良いだろう!」
CD「君には・・・君にはプライドというものは無いのか?釣果に目が眩んで志を忘れたか!?」
ラスカル「初志貫徹してるから何しても大人気なんだよ僕は」
CD「ころころと動きを変えて、他人の力まで利用して、何が初志貫徹か!」
ラスカル「カウントダウンさんだって・・・アバシ、スキャッター、スクイッド、マグナム、あとそれから」
CD「止めろ」
ラスカル「結局ねぇ、変化ってのは避けて通れないもんさ。それでどうするマスター?ナマズ」
T19「行こうか・・・」
7月3日、ジトっとしたいかにも梅雨らしい夜。
最近雨天が多く、水量も安定してきてるはずだし、気分転換に、ナマズが生息する三次市の用水路へやって来ました。
デカあらい君クローラー改!
暗闇の水面に、派手な飛沫を上げて着水。リーリングを始めると、ヒタヒタと這うように泳ぎ出し、程無くしてバフッ!!
ラインを引き摺り出す程の猛ダッシュで、ライギョでも掛かったのかと冷やりとしましたが、見えたのは黒いツルンとしたボディ。
ランディングネットから何度も跳び出る、元気で目力の強いナマズさんでした!
ラスカル「痛てて・・・羽がズレちゃったよ」
T19「どうする?純正の羽に戻すか?」
ラスカル「いいや、ナマズ相手ならこの姿に拘る必要無し。変身!ジタバタアライくん!」
グローカラーのジタバタアライくんを葦際へ!
蓄光性能が高く、真っ暗な水面にルアーがボワッと鈍く光る!緩い流れの中で「ポコポコ・・・」と響くサウンド。そしてボフッ!!
2本目はあんまり暴れずすんなり揚がって来ました。ちょっと口が小さいナマズさん。
その後もう1本小型の個体を追加し、ナイトゲームは終了。朝が来て、デイゲーム突入!
T19「うわまたバレた!夜と比べりゃショートバイト気味だな」
ラスカル「ここは無難に行っとくか。変身!チマチマアライくん!」
7グラムの1口大ラスカルで、水生植物エリアを狙い撃ち!
魚が隠れてそうなピンポイントにキャストしてモジモジ左右させ、反応が無けりゃ即回収して次のポイントを攻撃。
どこからともなくヌートリアが泳いで来て、植物に齧り付いてガサガサし始めたもんだから、堪らず飛び出して来た魚影。
駄目元で狙ってみると、激しく水面を割って本気バイト!!浅瀬に誘導してランディング!
ヌートリアと似たような姿のラスカルが気に入らないのか、鬼の形相でルアーを睨んでおりました(笑)。
トップで釣る興奮と、大物を揚げる満足感を手軽に満たしてくれる『ナマズ』。この日も憂鬱な気持ちを忘れ楽しい時間を過ごせました。
数日後、場長の元へK君が来て、「社員寮か車を用意してもらえませんか」と必死に頼み込んできたとのこと。
彼は“両親から絶縁されていて嫁の稼ぎも無くなったから貧しく、会社での寝泊まりも精神的に苦しい”というようなことを言ったとか。
父親が金持ちで暴力団と繋がってるとかは恐らく、見栄っ張りの大嘘だったのでしょう。
場長へは包み隠さず本心を語ったK君。しかし、同情しようにも素行が悪過ぎたもんですから、場長は首を横に振りました。
K君はしばらく黙り込んだ後、「会社辞めさして下さい」と力無く発したそうです。
今回の決まり手:ライトニング・ショック+レボSTX+ナイロン16ポンド+デカあらい君クローラー改、ジタバタアライくん、チマチマアライくん