少女漫画の最高傑作「ミントな僕ら」 感想 | 司法書士のゲームブログ

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いきなり女々しい言い訳から入るのだが、自分には妹がいるので少女漫画を読む機会というのが割とある。

 

誤解のないよう言っておくが、別に少女漫画が趣味というわけではない。ただ、暇で暇でしょうがないときに、妹が持ってる漫画を借りて、ちょっと読ませてもらっているに過ぎない。……というのは建前で、面白いものはやっぱり面白いのである。少年漫画や青年漫画とは、また違った面白さがある。

 

そして、自分が今まで読んだ少女漫画の中でも自信を持って「一番面白い」と断言できる作品がある。「ミントな僕ら」だ

 

連載されたのは1997~2000年だが、絵も話も古さは感じない。全6巻(文庫版なら全4巻)という手軽なボリュームも程よく、サクッと読める。久々に読み返してみたのだが、やはりいい。

 

あまりに面白かったので、同じ作者の「ウルトラマニアック」や「ランダム・ウォーク」も読んだ。いずれ劣らぬ名作だが、しかしやはり思い入れの深さもあり、自分はこの「ミントな僕ら」を最高傑作に挙げたい。

 

 

なぜこの作品はこれほど面白いのか?その理由を簡単に3つ挙げてみたいと思う。

 

 

 

①設定が面白い

 

本作は男が主人公である。これは、少女漫画にしては中々珍しいと言えるだろう。

 

 

「主人公いないじゃん」と思うかもしれないが、そうではない。左の青い服を着ている少年が、本作の主人公「のえる」である。ここが本作の設定における最大の「肝」だ。

 

双子の弟にして重度のシスコンである「のえる」は、姉である「まりあ」の初恋を阻止するため、森ノ宮学園へと転入する。しかし既に新学期が始まっていたため女子寮しか空いておらず、のえるは女装して転入することを決意する。

 

とはいえそんな無謀な潜入を試みて平穏無事でいられるはずもなく、クラスメイトで女嫌いの「佐々」や、ルームメイトで嘘が大嫌いな「未有」を巻き込み、様々なトラブルやハプニングを引き起こしていく……というのが本作のあらすじ。

 

 

ここまで読んで気づいたかもしれないが、本作のストーリーはギャグ中心である。そして、だからこそ読みやすい。

 

少女漫画と恋愛は切ってもきれない関係である。もちろんこの「ミントな僕ら」でも、キャラクター達の恋愛模様が話の軸になっていることには違いない。

 

しかし、コメディ色が強いおかげでその恋愛模様もカラリと爽やかなのである。少女漫画にありがちな「どんどん生々しい展開が続いて暗い気持ちになった」という事もない。

 

「男子中学生が女装して女子寮に潜り込む(しかも理事長公認)」という設定も、現実的に考えたら割ととんでもない事をしているように思えるが、「漫画だから」「のえるだから」とすぐ受け入れることができる。

 

だから、「少女漫画」という点に拒否反応が起きないならぜひ読んでみてほしい。気構えることなく老・若・男・女を問わず誰でも楽しめる作品、それが「ミントな僕ら」である。

 

 

 

②テンポがよく読みやすい

 

前述したように、本作は全6巻というコンパクトなサイズにまとまっている。そして、その6巻の中で次から次へと事件が起こっていくため読んでいてダレにくく、一気読みしやすい

 

1巻あたりの密度は決して薄くない。それなのに、(感覚的には)あっという間に読み終えてしまう。もう何度も読み返したはずの自分ですら、いちど読み始めると続きが気になってページをめくる手が止まらず、最後まで一気に読み切ってしまうのである。

 

これは、作者の漫画家としての圧倒的な力量はもちろんの事、ダラダラと余計な引き延ばしをせず、作品のテンポが非常に良いことが理由ではないかと思う。

 

 

しかし、だからこそ逆に、自分としてはもっと引き延ばしてほしかったと思うことがある。漫画界においては何かと嫌われがちな「引き延ばし」だが、この作品に関しては逆だ。

 

何しろキャラもストーリーもよく、もっと深彫りしてほしい「おいしい展開」や「おいしい設定」がゴロゴロ転がっているので、「ああ、あのキャラ達の掛け合いをもっと見てみたかったのに……」と思ってしまうのである。それらを惜しげもなくサッと片付け次に進んでいくところに、本作の真の凄さがあるのかもしれない。

 

近年では、同作者の不朽の名作「ママレード・ボーイ」の続編が連載されたが、自分は「ミントな僕ら」の続編にずっと期待し続けている

 

 

 

③キャラクターが可愛らしい

 

これは2つの意味を含んでいる。1つは、「絵柄」の可愛らしさ。「ミントな僕ら」に登場するキャラクター達は、同じ作者の他作品に比べると、かなり見た目が幼い。

 

もう1つは、「性格」の可愛らしさ。見た目の幼さに合わせるように、本作のキャラクター達は性格も子供っぽく(というより年相応に)なっている。

 

たとえば同作者の「ウルトラマニアック」も同じく中学生主人公なのだが、こちらは「こいつらほんとに中学生か?(笑)」と思うほど、見た目も性格も大人びている。

 

これは作者が意図してそうしたものであり、ウルトラマニアックにて「あの時(ミントな僕ら)は顔や体形をかなり幼く描いた」旨が語られている。

 ⇒ちなみに作者曰く、ミントな僕らでは普段と異なる絵柄にしたために、「終盤ちょっとその絵柄に飽きがきてしまった」とのこと。しかし、本作の雰囲気には、この可愛らしい絵柄が非常によくマッチしていたと思う。

 

そういう訳で、「ミントな僕ら」は、作者の作風の中では割とイレギュラー寄りではある。しかし、この大胆な作風の変更によって、登場人物たちはいずれも「愛すべきキャラクター」として印象に残り、ひいては作品そのものも「愛すべき作品」として、読者の心に残り続けるのではないかと思う。

 

 

 

ここから本題。以下、ネタバレを含むので注意してほしい

 

 

 

 

 

 

 

■登場人物紹介

 

ミントな僕らに登場する、個性豊かなキャラクター達。

 

 

 

■南野のえる

 

本作の主人公。前述したとおり重度のシスコンであり、姉であるまりあの初恋を阻止するため、女装して森ノ宮学園に転入する。

 

決して女装の趣味があるわけではなく、むしろ女に間違われることを極端に嫌う(昔から、女と間違えた相手をボコボコにしてきたらしい)。

 

しかし見た目は姉のまりあにそっくりであり、ロングヘアーのヅラの効果もあって、周りは誰も男であることを疑わない。「そうだなおれは…」と男言葉で喋ってもまるで怪しまれず、本人も複雑な心境だった模様。

 ⇒女言葉の練習もしていたらしいのだが、誰も疑わないので結局普段通りの言葉遣いで通すことになる。しかし、女言葉で話すのえるもちょっと見てみたかった気がする(笑)。

 

 

さて、そんな訳で姉のまりあを追って女装し、転校し、バスケ部のマネージャーにまでなったのえるだが、この「まりあの初恋阻止作戦」は割と早い段階でご破算してしまう。

 

姉のことが大好きなのえるとしては、まりあに強く出られるとあまり露骨な妨害はできないし、結局、まりあは良陽と両想いになって手出しできなくなってしまうからだ。

 

 

そういう訳で、のえるの転校してきた「当初の目的」は早々になくなってしまうのだが、佐々とは(紆余曲折あったものの)親友同士となり、ルームメイトである未有に片思いをしたことで、のえる自身にも「森ノ宮学園に残る理由」ができる事となる。詳しくは未有の項にて。

 

 

 

 

■南野まりあ

 

のえるの双子の姉であり、もう1人の主人公。佐々が「姉貴の方はごくフツーの女の子って感じだよな」と言っているように、見た目こそのえると瓜二つだが、性格はまるで異なる。

 

また、いつもロングヘアー(ヅラ)を下ろしているのえるに対し、まりあは度々ヘアスタイルが変わるため、そこで区別がつきやすい。

 ⇒これは、髪型に無頓着な男の子のえると、ヘアアレンジに敏感な女の子まりあの対比を狙ったものと思われる。

 

しかし、これを逆手に取り、髪を下ろしたまりあがのえるに成りすます事もある。元がそっくりな双子だけに、こうなるともはや読者にも見分けがつかない。

 

 

その完成度たるや、いつものえると一緒にいる佐々をして「のえるそのもの」と言わしめる。終盤ではクリスのことも見事に欺いており、意外と演技派なのかもしれない

 

のえる曰く滅多に泣くことはないらしいのだが、作中では割としょっちゅう泣いているイメージが強い(パッと思いつくだけでも、良陽のとき、大輔のとき、クリス事件のときにそれぞれ泣いている)。

 

元々のえるが「まりあの初恋を阻止する」ために転校してきたこともあり、序盤は広部コーチや良陽といい雰囲気になる度、妨害を受ける羽目になる。

 

しかし、それによってのえるに愛想を尽かす事はなく、むしろ自分から仲直りを持ちかけたり、逆にのえるが未有を好きになったときは積極的にサポートしてあげるなど、弟思いの、とてもいいお姉ちゃんである

 

 

が、しかし。当時の読者からの人気はあまり芳しくなかったらしい。これは作中においても(メタ的に)ネタにされている。

 

 

ちなみに、その人気投票の結果は以下の通り。

 

1位 のえる(2214票)

2位 佐々(1849票)

3位 未有(1229票)

4位 まりあ(1205票)

5位 良陽(207票)

6位 果林(160票)

7位 加奈子(100票)

8位 晶(90票)

9位 宮ノ森志津子(51票)

10位 キー坊(44票)

 

これを見ても分かる通り、主要4キャラの中では1番下ではあるものの、5位以下をぶっちぎってはいるし、3位の未有とは僅差だからそんなに悲嘆する程のものではないと思うのだが、W主人公の片割れという観点からみれば、たしかにチト弱い。

 

※注:なお、この人気投票は果林や大輔がギリギリ登場したぐらいのタイミングで実施されたものであり、作者も「もうちょっとキャラが増えてからのほうが面白かったかな」と述べている。しかし、もし連載後に人気投票をしたとしても、果林・大輔・クリス・理々子が5位以下に食い込めるかどうかという程度であり、主要4人がブッチギリという結果には変わりなかっただろう。

 

のえるが「そーゆーことするから」と言っているように、まりあの人気が今一つ伸び悩んだのは「男をとっかえひっかえしていたから」というのが原因である。確かに、最終的にみれば広部コーチ→良陽→大輔→佐々と相手を変えていったわけだから、読者からすれば移り気なようにも見える。

 

しかしあえて擁護するなら、人気投票のタイミング的には広部コーチ→良陽に乗り換えたぐらいの頃だから、「とっかえひっかえ」と言う程のものではない。さらに言えば、広部コーチとは付き合ってすらいなかったのだから、そもそも「とっかえひっかえ」自体していない。だが、結果的にまりあの行為は読者には好意的に映らなかったようだ。

 ⇒というか、まりあの行動が読者の反感を買ってしまうなら「ランダム・ウォーク」の主人公はどう思われていたんだろう。あっちはもっと酷いぞ(笑)。

 

しかし、序~中盤をのえるの物語とするなら、終盤はまりあの物語だったと言ってもいいほど、「ミントな僕ら」にとって重要なキャラクターである事もまた間違いない。

 

のえるの恋愛模様が「のえる&未有」でほぼ一貫され、やや起伏に乏しいのに比べると、まりあの恋愛模様は最後まで紆余曲折かつ波乱万丈。ストーリーを動かすため、最も大きく作品に貢献したキャラクターと言えるだろう。

 

読み返せば読み返すほど好きになっていくキャラであり、今、もう1度人気投票をすれば、きっとまた違う結果になるに違いない。

 

 

 

 

■佐々龍至


のえる・まりあのクラスメイト。まりあと同じくバスケ部に所属している。趣味は釣り。


そのルックス、クールな性格、スポーツ万能とあらゆるイケメン要素を兼ね備えており、当然のごとく女子からの人気も非常に高い。

 

これは作中に限った話ではない。人気投票においてものえるに次いで2位、未有やまりあの約1.5倍の得票数と、読者からも圧倒的な人気を誇る

 

少女漫画の男キャラというのは、メイン読者に愛されるという重大な「使命」を帯びているために、どこか作者の理想を投影したかのような、悪く言えば「わざとらしい」キャラクターも多い。
 ⇒これは、少年漫画のヒロインがどこか「わざとらしい」のと同じ原理だろう(もちろん全員がというわけではないが)。

 

しかし佐々に関しては違う。読んでみると分かるが、本当に「いい奴」なのである。少女漫画の男キャラで、これほど素直に好感が持てるキャラクターはむしろ希少ではなかろうか。というか、作中での描写は一切ないが、実際にこんな奴がいたら周りは男友達だらけだと思う

 ⇒いつものえると一緒につるませるため、その辺の描写はバッサリ切り捨てたのだと思われる。

 

もちろん言い寄る女子生徒は後を絶たないが、幼少の頃の苦い記憶(実はこれものえる・まりあが原因)のため、女性に対し苦手意識を抱いており、のえると出会うまでは異性に興味を抱くことすらなかった。

 

のえると出会ったことで苦手意識を克服できたかと思いきや、実はのえるは男だったわけで、何とも気の毒なことだと思う(笑)。

 

この辺りの展開は、ミントな僕らにおける「最初の山場」である。佐々を「友人として」好きになっていくのえる、のえるを「異性として」好きになっていく佐々、そしてただ一人、全ての事情を把握しているまりあ。陰ながら見守りハラハラしているまりあの姿が面白い。

 

 

そんな訳で、のえるが事情を打ち明けた後は「フツーの男同士の友情(?)」を育んでいくことになるのだが、これ以降、佐々の色恋沙汰はパッタリと鳴りを潜め「ミントな僕ら」の恋愛模様から長らく離脱することとなってしまう。

 

これは少女漫画としては極めて珍しい展開だろう。のえるは半分女バージョンなので除外するとして、主要キャラで唯一の正統派イケメンが、少女漫画で恋愛模様に絡んでこないのだから。

 

その後、佐々の立ち位置は三枚目ポジション・苦労人ポジションがメインとなる。作者の作品ではおなじみの「崩れたギャグ顔」も、のえるに次いで多い。これほどのスペックでありながら三枚目役もこなせるスゴい奴であり、そこがまた佐々というキャラクターの魅力に繋がっている。

 

 

 

 

 

 

■ちょっと脱線:まりあと佐々

 

さて、最終的にまりあと付き合うことになる佐々だが、実は物語の終盤になるまで、まりあと佐々がくっつくとは全く予想できなかった。これは、少女漫画としてはちょっと異例である。

 

何故なら、少女漫画というのは「恋愛」が話の主軸に置かれることが多いだけに、結末が予想しやすい。1話を読んだ時点で「あーはいはい、こいつとこいつが最後にくっつくのね」と分かってしまう事もある。

 ⇒それだけに、少女漫画というのは「過程」を楽しむものだと言えるだろう。

 

ところが、ミントな僕らについてはこの結末が全く予想できていなかった。主要4キャラのうち「のえる&未有」が確定なのだから、客観的にみれば「まりあ&佐々」は意外どころか、ごくごく自然な帰結であるにも関わらず、である。

 

 

なぜ自分はこの結末を予想することが出来なかったのか、改めて読み返してみて合点がいった。それは、物語序~中盤における、まりあと佐々の距離感に原因がある。

 

まりあと佐々、互いにクラスメイトであり、同じ部活のメンバーでもありながら、接点はほぼない。佐々が「苦手なタイプ」とはっきり言っている事からも分かるように、両者は気が合う性格ではなく、「本来なら交わりあうことのなかった2人」なのである。

 

しかしのえるが転入してきたことで、少しずつ状況に変化が訪れる。本来関わることのなかった2人が、「のえるの姉・まりあ」「のえるの親友・佐々」として、互いに繋がりを得たのである。

 

とはいえ、この時点での2人はまだまだ他人行儀そのもの。1巻も終わりかけの頃になって、ようやく両者は事実上のファーストコンタクトを果たす。

 

 

 

その後も、2人はのえるを中心に関わり合いを深めていく。この友人というほど密ではないが、知人というほど疎でもない距離感は、実に絶妙。まりあは良陽→大輔と付き合っていくので佐々とは恋愛の「れ」の字にもならないのだが、徐々に名コンビ感を増していくのが分かる。

 

 

のえるをサポートするための「入れ替わり大作戦」の1シーン。この時、「自分の恋愛のことしか興味ないのかと思ってたけど、ちょっと見直したぜ」と、佐々のまりあに対する印象も好転している。

 

 

のえるが未有に本当のことを打ち明けようとした場面。まりあも「あたしたちってなんかのえるに関してはチームワークいいよねー」と言っているが、このシーンは特に息ピッタリで、完全にシンクロしている。

 

 

のえるが失恋し、感慨にふけっているときの場面。こののえるに対する冷静なツッコミなどは、まさに「名コンビ」という感じではないだろうか。

 

 

そして物語も後半に差し掛かった4巻の終わり、とうとう転機が訪れる。ある出来事がきっかけで、佐々の優しさに気が付くまりあ。ここから、物語は終盤に向けて大きく動き出す。初めて互いが互いを意識した瞬間だと言えるだろう。

 

このシーンの佐々は格好良すぎる。まりあでなくとも惚れる。

 

 

ちなみに自分は、このシーンを見るまでまりあと佐々がくっつくとは微塵も予想していなかった。それほどまでに2人の距離感は、あくまで「のえるの姉」「のえるの親友」というセーフティな間柄でしかなかったのである。

 

しかし、いつも2人と一緒に過ごしているのえるは、彼らの心境の微妙な変化をいち早く察知していた。

 

「なんかおれはこの先2人がくっつくよーな予感が…」

 

意外と鋭い、預言者のえる。しかし、当のまりあにまだその気はない。というより、良陽→大輔と、短い期間で2度もの失恋を経験してしまったためか、まりあも少々疲弊し、慎重になってしまったようだ。

 

「ものすごく大好きな人にものすごく大好きって思われる…そういう恋できる日が来るといいな

 

前の彼女とか新しいライバルとか出てきても絶対あきらめられないくらい大好きな人──

 

そーゆー人見つけるまで 待つんだ!」

 

 

2人の心情に決定的な変化が訪れたのは、体育祭のとき。これまでずーーっと「ミントな僕ら」の恋愛模様から遠ざかっていた佐々が、ここにきてようやく、ようやく物語の本筋に絡み始めるのである。

 

 

それにしてもこのシーンのまりあ、酷すぎじゃないだろうか、のえるの「付属品」って(笑)。やはり、(少なくとも4巻の後半まで)まりあにとって佐々は、「弟の親友」という認識でしかなかったのだろう。

 

 

4巻後半と、5巻のこの辺の場面は「ミントな僕ら」の中でも指折りのお気に入りシーンで、何度も読み返してしまった。拙いながらも真剣な佐々の告白が印象に残る。何より、ここまでの展開で「佐々はいい奴」という認識が完全に定着しているので、ついつい佐々を応援したくなってしまうのである。

 

しかし、これでめでたしメデタシとはいかない。まりあの前に良陽が、佐々の前には理々子が現れ、さらにもう一波乱が巻き起こされる。詳しくは良陽と理々子の項にて。


 

 

 

 

■牧村未有

 

本作のヒロイン。そして、のえるのルームメイト(ただし物語中盤にて別室になる)。虫が苦手。

 

やや複雑な家庭事情と育ってきた環境のために嘘を極端に嫌う、少々純粋で潔癖なところがある。

 

また、人見知りをする性格であり、中学では友人を作りそびれてしまう。大人びた雰囲気も相まって、クラスメイト達からは少々誤解を受けていたようだ。

 

「すごくきれいな子よ。でもクラスの誰ともほとんどしゃべんないの。一匹狼ってゆーか…ちょっと大人っぽい雰囲気で近寄りがたいカンジ」

 

ちなみに作者の作品では、こういった「クールビューティ系」のキャラクターが高い確率で登場する(未有、茗子、紗也香etc...。しかし第一印象は「クールビューティ」でも、話が進んでいくとそれぞれが全く違った印象になっていくから面白い)。

 

未有も、少々人見知りをするというだけで根は素直ないい子であり、のえるの無邪気さもあって、すぐに打ち解ける。

 

可南子や果林らが認めるほどの美人であり、果林に至っては、一目見ただけで「あ ダメだ 負けた」と白旗を上げている。そのせいか、他の主要3キャラに比べると「崩れたギャグ顔」になる回数が少ない。

 

 

 

さて、のえるの初恋相手となった未有だが、何しろのえるは「女」として学校生活を送っているだけに、アプローチも一筋縄ではいかない。ルームメイトという非常に近しい関係にありながら、そもそも未有に「異性」としてすら認識されていないのである。

 

転機が訪れたのは夏休み。外出中にばったり未有と出会ったのえる(男バージョン)は、咄嗟の機転とまりあの助言により、「トオル」という偽名を使ってアプローチすることを思いつく。

 

 

正直かなり綱渡りな作戦としか言いようがないのだが(笑)、まりあや佐々の協力もあり、何とか未有といい関係を築くことに成功する。しかし、そんなウソをいつまでも貫き通せるはずもなく、結局はバレて破局を迎えてしまう。

 ⇒しかも、これは見方を変えればまりあや佐々も「グルになって未有を騙していた」わけであり、余計に未有の逆鱗に触れる結果となった。

 

 

そんな訳で、一度は破滅的かと思われたのえると未有の関係も、時間が経つにつれ徐々に修復されていく。

 

未有の側からすればのえるの行為は裏切り以外の何物でもないわけだが、そののえるの行為も、自分を想っていたからこそだと根底では気付いていたのだろう。何という懐の深さであろうか。大人びているのは、見た目や雰囲気だけじゃない。

 

そしてもう1つ、これはのえるだから許されたというのもあるだろう。他の男がこんな真似をすればただでは済むまい。人気投票で堂々1位に輝いていることからも分かるように、作中のキャラ・読者を問わず、誰からも愛されるのえる。その人気の秘訣はどこにあるのか?

 

自分は、一言でいえば「純粋さ」だと思う。まりあからは「子供っぽい」、果林からは「ガキんちょ」と言われてしまう事もあるが、持ち前の無邪気さで誰ともすぐに打ち解けることができ、感情を(やや大げさなぐらい)ストレートに表現する。その純粋さこそがのえるというキャラクターの大きな魅力だ。

 

まりあも、のえるの世話には手を焼きつつ、満更ではないように見える。ワガママを言われても、つい許してしまいたくなる愛嬌がのえるにはあるのだ。普通なら言いにくいような事でものえるならズケズケと言えてしまったり、ある意味、得な性格だと思う(笑)。

 

 

未有や果林も、のえるのそんな所に惹かれたのであろう。一時は恋人から友達へと「格下げ」されてしまったのえるであるが、最終的には無事に元のポストへと収まることができるのだった。

 

 

さて、そんな未有だが、のえる以外のキャラと関わる事は少ない

 

佐々とは、イトコ同士であることが判明した時は打ち解けていたが、その後はほとんど関わることはなかったし、まりあに至っては会話自体が数えるほどしかない。基本的にはずっとのえる絡みで話に関わってきたキャラクターだと言えるだろう。

 ⇒欲を言えば、まりあや佐々達との絡みももっと見てみたかったところである。
 

 

「最初は愛想のない女だな──って思って

 

仲良くなれそーにないカンジがして

 

でも 人見知りするだけでほんとは普通のいい子で

 

時々見せる笑顔がすごく可愛くて──」

 

これはのえるの独白だが、未有の魅力を最も的確に表しているように思う。誉め言葉になっているかどうか分からないが、未有の魅力はどこか少年漫画的なのだ。もし少年漫画のヒロインとして未有が登場していたら、きっと圧倒的な男性人気をかっさらっていたに違いない。

 

また、2巻の巻末おまけ漫画である「長野へジャンプ!」では、番外編のためかいつもとちょっと違う雰囲気の未有を見ることができる。こちらも、ぜひ単行本で確認してみてほしい。

 

 

 

 

■栗栖慈朗

 

物語も後半になって急遽投下された核弾頭。あるいは終盤の賑やかし。白黒なので分からないが、髪の色は赤。

 

その圧倒的なルックスから「女子の人気を佐々と二分する有名人」(可南子談)らしい。

 

しかし、その端正なルックス故にいつも女子生徒たちからの注目を集め続け、いつしか彼女たち一人ひとりを個体として捉えられないばかりか、みな同じ野菜の集団に見えてしまうようになったという。

 

その裏返しなのかどうかは分からないが、女性から冷たくあしらわれる事に慣れておらず、ぞんざいに扱われるとすぐ相手に惚れてしまう。そして、惚れた相手のことを「ハニー」と呼ぶ。

 

 

 

作中では、のえる→未有→可南子の順番で「ハニー」が切り替わっていく。もちろん恋愛に発展することはないのだが、のえるを巡って佐々と、未有を巡ってのえるとライバル関係を生じることになり、ただでさえコメディ色の強い本作を、より賑やかなものとしてくれる。

 

頭の切り替えが早いというべきなのか何なのか、敵・味方の区別が非常にはっきりした性格。ライバルである佐々を蹴落とすためなら「ハニー」の姉であるまりあにも手を下すし、標的が未有に切り替わったときは、元ハニーののえるであろうと容赦なく敵対する。

 

 

かように、ビジュアルこそ佐々や良陽に匹敵するものの、性格はネタキャラそのもの。作中の設定では「佐々と人気を二分する」との事であったが、読者人気においては、残念ながら佐々には及ぶべくもなかっただろう(笑)。

 

また、最初の頃こそ「憎めないおバカさん」という感じのキャラだったのだが、極めてプライドの高い性格ゆえに、佐々やのえるに対する妨害は徐々にエスカレートし、最終的には犯罪者まがいの行為にまで及んでしまう。この辺は最後ちょっと損な役回りだったかもしれない。


 

 

 

■広部良陽

 

恋多き少女・まりあの1人目の彼氏。

 

一言で言えば「まりあの理想の男性」。まりあの理想像である「なんでもリードしてくれる優しい年上の人。もちろんルックスも良くてスポーツも得意」「顔も優しい感じが好きなの」という要素をパーフェクトに兼ね備えている(というか、これほどのスペックを兼ね備えていればまりあに限らずほとんどの人間にとって理想だと思うが……)。

 

しかし、会ってすぐまりあに交際を申し込んでしまったためか、のえるからの印象はすこぶる悪い
 

 

その後、以前から良陽はまりあに対して思いを寄せていたことが判明する。実際、まりあと付き合い始めてからの良陽は、最初のチャラいイメージは何だったのというぐらいの聖人君子ぶりである。

 ⇒人気投票で今いち票が伸び悩んだのも、最初の軽いイメージが原因なのではないかと思う。今、もう一度人気投票を実施すればもっと票が伸びるのではないだろうか。

 

 

結果、さすがののえるも2人の交際を認めざるを得ず、順風満帆かに思えた2人の関係だが、そうは問屋が卸さない。良陽の幼馴染である「中山晶」の登場により、事態は急転直下を迎える。

 

 

この晶は、ミントな僕らではほぼ唯一の敵役と言っていいキャラだろう。基本的にいい子たちばかり、せいぜいクリスが「憎めないおバカさん」程度の、爽やかさが持ち味な本作にあって数少ない「ドロドロ」を持ち込んだキャラクターである。

 

結果、あれほど上手くいっていたかに思えた2人の関係は、あっという間に破局を迎えてしまう。まりあ自身、「理想の男性」である良陽を前にして、いつも無理して振舞っていたようだ。

 

 

ミントな僕らの世界に「もし」があるなら、「もし晶がまりあの前に現れなかったら」というのは気になるところである。

 

まりあと良陽はずっと良い関係を続けることができたのか、それとも、遅かれ早かれ、無理して振舞っていたまりあに限界が訪れていたのか。自分は前者だと思うが、ここは意見が分かれるところであろう。

 

 

これで良陽はフェードアウト……と思いきや、そうではなかった。終盤、佐々から告白を受けた直後、再びまりあは良陽と巡り合う。

 

 

ここから先の良陽は本当に聖人君子そのものというか、だから最初のチャラいイメージは一体何だったんだというか、こんな男いたら引く手あまただろという感じなのだが、やはり良陽自身もまりあの事を忘れられず、ずっと気にかけていたようである。

 

その後、まりあは佐々か良陽かという贅沢すぎる2択を迫られる。もちろん結果は佐々が勝つのだが、良陽はまりあに対し、未練がましい事は何一つ言わない。あまりにも見事な引き際であった。

 

 

 

 

■麻生可南子

 

まりあのルームメイト。親友にして、よき相談相手でもある。

 

まりあ達と同い年でありながらどこか達観したところがあり、聞き上手。こんな友人がいたら頼もしいだろう。良陽と交際することになった時の「見た目がいいのだって人間の長所のひとつだよ」という励ましには、まりあも大きく助けられたのではないかと思われる。

 

佐々やクリスといったイケメン達の情報についても詳しく「顔さえ良ければオールオッケー」とさえ豪語する。先のまりあに対する励ましも、イケメンの情報を追いかけるうちに辿り着いた可南子なりの「哲学」なのかもしれない。

 

学校内のいつどこに現れても不自然でなく、かつのえるの秘密を知らないキャラクターというのは使い勝手がよいらしく、絶妙なタイミングにてたびたび登場する。

 

もっと可南子にスポットを当てた話があってもよかったと思うのだが、あくまでも「良き脇役」という立ち位置に徹しており、最後まで恋愛模様には絡んでこない。

 

ただ、最後の最後、クリスとのやり取りの中で新たな「ハニー」として標的にされてしまう。

 

のえる&未有はクリスの呪縛から解放され、イケメン大好きな可南子もクリスに言い寄られて全員ハッピーエンド……と思いきや融通の利かないクリスには、優しい可南子もご立腹。「顔さえよければオールオッケーと思ってたけどやっぱアホはイヤ!!」と可南子の哲学にも多少の変化があったようである。

 

しかし、何しろ相手は冷たくされるほどに燃え上がる男である。可南子がクリスの呪縛から逃れるのは、そう簡単ではないだろう(笑)。

 

 

 

 

■立原果林

■桜井大輔

 

のえるとまりあの、前の学校の友人。のえる&未有や、まりあ&良陽といった序盤の展開がひと段落したタイミングで登場し、両者ともにストーリー中盤の中核を担う

 

果林はのえるの事が、大輔はまりあの事が好きなのだが、2人は森ノ宮学園へと転校してしまい、しかもそれぞれに思いを寄せる相手ができてしまった。いわば、離れている間に「先を越されてしまった」のである。

 

まりあに彼氏ができて大輔がヘコんでいるのを傍目に、果林は「落ち込んでる場合じゃないよ」と怯まない。この辺の台詞は、ちょっと勝気な果林の性格がよく表れていると思う。

 

「のえるはガキんちょで 恋なんてまだまだ遠い世界ってカンジで──

 

でもそんなとこもかわいくて好きだったから自然にめざめてくれるまで待つつもりだったのに

 

あとから出てきた女に横取りされてたまるもんですか

 

黙ってひきさがったりしない 絶対!」

 

このサバサバした性格が読者からも好感を得たのか、登場したばかりにも関わらず、人気投票では主要4人 + 良陽に次いで6位にランクインしている(一方、大輔はTOP10圏外のため不明)。

 

こうしてのえるへの積極的なアピールを試みる果林だが、(主にのえるの鈍感さのせいで)さんざんに振り回された挙句、のえるが未有一筋なこともあって上手くいかない。そして、連絡を取り合っている内に、のえるが女装して学園生活を送っていることに気付く。

 

 

最終的には自身の行動がきっかけでのえると未有が付き合うことになるという、果林にとっては何とも「シャクな結果」に終わってしまう。

 

しかし、最後の去り際も、果林らしくとてもサバサバとしたもの。読者としても読んでいて気持ちが良く、このシーンで果林のイメージがぐぐーんと3段階ぐらいアップした人も多いのではないだろうか。

 

 

良陽といい、果林といい、理々子といい、どうして「ミントな僕ら」のキャラクターはこうも去り際が見事なのか。この辺りも、本作の爽やかなイメージを後押ししているように思う。

 

ところで、「今、ミントな僕らの人気投票をしたら誰が『5位』になるか」というのは、けっこう白熱する議論だと思う。主要4人がTOP4を独占するのは間違いないとして、それに「次ぐ」人気キャラクターは一体誰か。

 

候補としてはクリス・良陽・可南子・果林・大輔あたりだろうが、自分は果林ではないかと予想する。それは、作中の人気投票で6位だったというのもあるが、純粋に、彼らの中で最も魅力的に描かれていたのが果林だと思うからだ。

 

 

さて、続いて大輔について。こちらは、恋多き少女・まりあの2人目の彼氏でもある。

 

果林と異なり、念願かなってまりあと付き合うことができた大輔だが、その関係ははじめから前途多難であった。というのも、まりあ自身、これまで大輔のことを異性として意識したことがなかった為である。

 

タイミングもあって付き合い始めた2人だが、良陽のときと異なり、明らかにまりあのテンションが上がっていない。

 

それでも、大輔からすればずっと想い続けていたまりあとカップルになれたのだから、嬉しかっただろう。要するに、2人の付き合いは初めから温度差があったのだ。

 

「あたしの「好き」より大輔くんの「好き」の方がずっと大きいのわかるから

 

ときどきすごく大輔くんの気持ちが重く感じたり 視線が息苦しかったりする…

 

会ってる間は楽しいんだけど会うまで気が重かったり、会ったあとすごく疲れちゃったりするんだ」

 

これはまりあの台詞だが、「気持ちは分かる」という人も多いのではないだろうか。まりあも大輔も、どちらもいい子だというのがまた痛ましい。自分など大輔と一献傾けたいぐらいだ。

 ⇒ちなみに、まりあはこの複雑な心情を「愛されるより愛したい byキンキキッズ」という的確かつ独特な言い回しにて表現している(笑)。

 

 

そんな訳で2人の関係は長続きせず、3巻の終わりに付き合い始めた2人だが、4巻にて別れることになってしまう。早い。

 

のえる&果林の別れは爽やかなものだったが、まりあ&大輔については少しほろ苦い別れとなってしまった。この辺りは、互いの性格の違いもあるだろう。大輔の優しい笑顔が、また悲しい。

 

のえると付き合うことすら出来なかった果林に対し、大輔はまりあと付き合うことはできたのだが、それでも果林のほうが(表面上は)ずっと清々しそうに見えるというのも、興味深い。

 


 

いずれにせよ、果林・大輔の2人についてはこのままフェードアウトとなり、ここから先の展開には一切登場しない。

 

果林の行動がきっかけでのえる&未有が付き合い始めたこと、大輔との別れがきっかけでまりあ&佐々が互いを意識し始めたことを考えると、まさに彼らは、「序盤がひと段落した後、さらなる波乱を巻き起こし、最後は終盤の展開へと繋いでいく」という中盤の橋渡し役を担ったキャラクターだったと言えるだろう。

 

 

 

 

■岩崎理々子

 

物語の終盤も終盤、6巻になって突如登場したキャラクター。

 

兄がいるせいか女子のノリについていけない事が多く、交友関係も男友達のほうが多い。スポーツ観戦が好きで釣りもやるなど、男子と気の合う話題が多く、女嫌いのはずの佐々とすら初対面であっという間に打ち解けてしまう。

 

「うーん 佐々とこれだけ会話がはずむ女の子ってはじめて見たよな しかも初対面で…」

「見た目はそーでもないけど中身はけっこう男っぽくてサバサバしてる感じかな。釣りもやるらしいし」

(いずれものえる談)

 

その立ち位置は、良陽が「まりあにとっての理想の男性」であるなら、理々子は「佐々にとっての理想の女性」だと言えるだろう。

 

序盤、サバサバした性格で「女特有の苦手な性質」を持ち合わせていないのえるに惹かれた佐々だったが、のえるは男だった。しかし、今度現れた理々子は女であり、性格も佐々の理想通り。さあ、どうしますか?という訳である。

 

 

こうして、5巻を経てようやく互いの心が通じ合ったかに見えたまりあ&佐々だったが、ここにきて進展が一度ストップしてしまう。

 

まりあには良陽が、佐々には理々子が。互いの「理想」となる相手がみつかったことで、上手くやっていく自信がなくなったのだろう。直前にて、まりあが良陽のことを「理想」だと断言していたのも、佐々にとっては辛かったに違いない。

 

 

「おれはおまえが好きだし…おまえもそう言ってくれてうれしかったけど

 

もともとお互い好みじゃないんだし もしつきあっても不満な点がいろいろあってケンカばっかりになりそうだろ

 

おまえに合ってるのは良陽だよ

 

おれも──自分に合った子見つけたから たぶんその子とつきあうと思う」

 

 

互いが互いのことを想い合っているにも関わらず、理想通りでないために「最後の一歩」が踏み出せない2人。「ミントな僕ら」という作品が大団円を迎えるために用意された「最後の山場」であり、本作の終盤は、ほとんどまりあと佐々の物語だったと言ってもいいように思う。

 

 

さて、長くなったが(熱く語りすぎて1万5000文字を超えてしまった)、最後にミントな僕らで最も好きな台詞を紹介したい。

 

はじめは「苦手なタイプ」とまで言い切っていたまりあに、どうして佐々はここまで惹かれることになったのか。作中では、佐々の象徴的な台詞によって、その思いが綴られている。

 

「今にして思えば、のえる(女バージョン)を好きになったのも友だちとしてだったかも

 

女だと思ってたから友情の「好き」を恋と錯覚しただけで

 

実際好きになったのは、苦手と思ってたやつ…

 

合わないから 自分と違うから 惹かれるのかなあ…」