恐らく波を乗りこなせているのは今だけで、直ぐに振り落とされる日が来る。


現実を直視していた。ただし、夢見ていた。恋人を欲していた。
いれば毎日が光を帯びると思っていた。
駅へと向かうバスからの景色も、駅のホームも、売場の洋服、試着室のドアノブ、帰りの夜道も夏の空も全て輝きに満ちると思っていた。

その夢を手に入れた自分は、恐ろしく冷静だ。
恋人が出来たからといって飛び跳ねて喜ぶ年齢では、もう既になくなっていたのだ。

出会ってから一週間で恋人となった。
自分史上最短の期間だった。
しかし、その一週間はずーっと冷静だった。
まるで、付き合う事が当然だと思っていたかの様に。

そして、感付いた。
これが、本物の現実なのだ。
夢を見ていた期間が、夢だった。

それでも、彼女を大切に思っていることは確かだ。
顔に惹かれた、ネイリストという職業に惹かれた。
しかし、一番惹かれたのは彼女との波長だった。
足りない部分を補い合うかの様な二人だ。

ただ、現実は現実でしかない。
この現実が夢だったとしても、その夢さえもいつかは醒め、また違う現実がどろりと身に入り込んでくる。
その日まで一日でも長く、一秒でも鈍足に、一瞬でも眩しく、彼女を愛したいと。そう思う次第でございます。




咲いても喜び過ぎないから

茎/椎名林檎



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