ハイフェッツ:モーツァルト変ロ長調ヴァイオリンソナタ K378 !

さて、ゾフィー ムッターが演奏したすぐ前のK377、へ長調(Fメジャー)のヴァイオリンソナタも無論名曲なのですが、このK378 変ロ長調(B♭メジャー)のヴァイオリンソナタ、まるで待ち望んでいた暖かい春の風を思わせるような聴く者全ての心を温めてくれるような優雅な作品になっています。

 

K377は、第二楽章を長調の平行調であるニ短調(Dマイナー)という形にして哀愁を取り入れ、曲にメリハリを与えていますが、K378は、何しろ春のやわらかな風ですから、短調が入る余地はありません。

 

第一楽章は、五線譜に♭二つの変ロ長調で始まり、第二楽章は、別に調を変えなくてもいいのですが、そこはモーツァルト♭を一つ増やし、五線譜に♭三つの変ホ長調(E♭メジャー)に変えるという工夫をしています。自信はないのですが この第二楽章は、第一楽章に比べ完全四度高くなっているのだと思います。

 

つまり変ロ長調の下属調(サブドミナント)である変ホ長調を選択したわけです。そのような関係調の採用は、自然で無理のない第一楽章との差異も表現できるわけですね。

 

この手法は、ベートーヴェンにしっかり受け継がれています。また、彼の「春」というタイトルのヴァイオリンソナタも もしかして、これを参考にしたのかもしれませんね。

 

モーツァルトの音階や調性に対する感覚は、ショパンと並んで天才的と言うより他はありません。やっぱり双方とも音楽の仕組みを知り尽くしていますね。

 

さて、第一楽章をお聴きになると直ちにわかることですが、モーツァルトのヴァイオリンソナタは、ヴァイオリンが主で、ピアノが従という形態ではありません。二つの楽器は、五分、五分の関係にあります。

 

ヴァイオリンが、主旋律を演奏するとピアノが伴奏、しかし次の瞬間は、その立場が全く逆になるのです。したがって、ヴァイオリンとピアノのための二重奏曲と呼んだ方が正しいかもしれません。

 

このようにちょっとした音楽知識を土台にして聴き込むと、更にモーツァルトの作品の理解度が深まるのではないでしょうか。

    ヤッシャ ハイフェッツ

最後に、ヤッシャ ハイフェッツのヴァイオリン演奏に関しては、恐れ多くて、批評など披露できるものではございません。