グレン グールド : ベートーヴェン ピアノソナタ32番 第一楽章】

       (グールドの写真は、1分後から現れはじめます。)

(注)私のブログの全ての記事及びその案内をクリックされる場合は、決して叩くのではなく優しく撫でるようなクリックをしていただければ、目指す記事に到達できる進み行きになっています。
 

ベートーヴェンのピアノソナタを聴くにあたって、最初からベートーヴェン最後の32番のピアノソナタを聴く人は極めてまれでしょう。一般的には、「悲愴」~「月光」~「熱情」から入っていって、「テンペスト」~「ワルトシュタイン」~「告別」の第二波といったところです。

 

ハンマー クラーヴィアと呼ばれる29番から32番の最後のソナタ4曲は、前期のソナタをじっくり聴いてから、踏み込んでいったほうがいいと思いますね。これらは、いっそ還暦を過ぎてからの楽しみにするというのも一案でしょう。

 

ちなみに、1番から7番までのソナタは、やはりハイドンの影響があるのでしょうか?まさに古典的で、あまりベートーベンのロマンティシズムというものが発揮されていないようです。でも、第8番の「悲愴」から第32番ソナタは、すべて聴く価値があると思いますね。

 

繰り返すようですが、悲愴、月光、テンペスト ワルトシュタイン、熱情、と聴いてきたからベートーヴェンのソナタは卒業と考えてしまう人がいかに多いことか!

 

それでは、富士山の八合目まででそこから引き返してしまう登山者に似ています。最後頂上にある最後のソナタ32番をとことん鑑賞することによって初めてベートーヴェンのピアノソナタを真に鑑賞したと誇れるのではないでしょうか!

 

 

できれば、ユーチューブだけに頼るのではなくグールドやバックハウスあるいはケンプあたりのベートーヴェンピアノソナタCDのコレクションなどを手に入れたいものです。

 

今回は、32番のピアニストとして、グレン グールドを選んでみました。彼のアナログレコードを持っていて、40年間ほど聴き続けているということもありますが、やはり極めて魅力に富んだ演奏をしているからに他なりません。

 

ところでグールドは、バッハ演奏のスペシャリストと考えられていますね。それには十分な理由があります。つまり彼は、J.Sバッハのキーボード作品をほとんど網羅しているからです。しかし、彼の弾く、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス、プロコフィエフなどにも宝石のように輝く演奏は沢山あると思います。

 

ただ、私の個人的な感想を言わせてもらえれば、グールドの弾く「テンペスト」は、全面的に脱帽ですが、「悲愴」に関しては、100%納得できない部分もあります。

 

さてこの演奏をたどっていきたいと思います。冒頭からあの「熱情」に負けないほどの強烈なフォルテッシモの序奏、最晩年のベートーヴェンですが、音楽に対する情熱は微塵も衰えていません。ベートーヴェンほど死ぬまで成長し続けた作曲家は、存在しないのではないでしょうか。

 

次に、いよいよ1分55秒あたりから、第二主題に突入、グールドは、作曲者が指定した表情記号や速度を無視する傾向があります。ここでも、作曲者が指定するマエストーソ、すなわち堂々と巨匠風にという雰囲気を考慮に入れないで他のピアニストが真似をできないような信じられないスピードでしゃにむに突っ走っていきます。

ピアノソナタ32番を懸命に弾くグレン グールド

確かにベートーヴェン大好き、ピアニスト ウィルヘルム ケンプ大好きの元東大法学部名誉教授の丸山眞男氏などは、グールドのような型破りの演奏は認めないと思いますね。

 

しかし、極端なスピードでも一音たりとも曖昧の弾き方をせず、しかもこの作品の構造を100%我々に明確にしたグレングールドの演奏意義は、限りなく大きいと感じている私です。

 

こういったところに、グレン グールドのベートーヴェン作品に対する執拗で強い意志を垣間見ることができます。

 

グールドの演奏するテンペスト三楽章もご覧になる方は、上の動画の音を切って下記の写真の入っている部分をクリックしてください。

 

 

ケンプが演奏するピアノソナタ32番もご覧になる方は上の動画の音を切ってから下記の写真が入った部分をクリックしてください。