はじめに:このピアノソナタは、ベートーヴェン最後のピアノソナタで、どういうわけか3楽章ではなく2楽章構成になっています。52歳の時の作品でまあ晩年の作品と言えるでしょう。

 

しかし、最晩年の作品ではありません。ベートーヴェンが死ぬまでこだわったのは、弦楽四重奏曲で最後の16番は、57歳で亡くなるベートーヴェンの死の9か月前に完成を見ました。

 

ちなみに、最晩年の弦楽四重奏曲15番、16番は、今でも世界10億のベートーヴェン:支持者から神から授かった作品として崇めまつられています。そしてこのピアノソナタの2楽章もそのような傾向を有しているのです。

 

この第一楽章は「悲愴」と同じハ短調で悲しみあるいは災難が駆け抜けるような雰囲気、従来通りなのですが、この第2楽章ハ長調の変奏曲は、今までのベートーヴェンから聴いたこともない音の小宇宙が醸し出されています。この辺が神格化されるのでしょうね。

 

しかし、よく考えてみますと、52歳の晩年の作品と言われていますが、現代日本では、ドラマに歌に大活躍している福山雅治さんの年齢ですよ。21世紀を生きる彼には、寿命を全うするまで40年以上の時間がありますが、その時のベートーヴェンの残された時間は、5年足らずでした。100年人生ありがたいことです。

 

グレングールド    福山雅治

それでは、ベートーヴェン最後のピアノソナタ 32番 第二楽章を聴いてください。ピアニストは、グレン グールドです。

 

   グレン グールド::ピアノソナタ32番第二楽章

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15分にも及ぶ長い変奏曲です。変奏曲は、ベートーヴェンの得意技の一つですね。例えば、クロイツェルソナタの第二楽章、はたまた、ピアノソナタ熱情の2楽章、ある短いメロディーがあり、それに効果的な装飾音を加えたり,付点音符を多用してみたり、長調から短調に転調させたり、強拍と弱拍を入れ替えるシンコペーションの技法を使ったり、メロディーの流れを巧妙に変え聴衆にそのテクニックを誇示したり、楽しませたりするのが、変奏曲の狙いです。

 

しかし、この32番の変奏曲、どれにも当てはまりません。もしかすると旋律を巧みに変えていく性格変奏ではなく、バッハのゴールドベルグ変奏曲のような世界に先祖返りしているのかもしれません。私も専門家ではありませんから、この辺はよくわからないのですが、ちょいと歌うという意味のアリエッタいう指示があります。何か飛び跳ねるような雰囲気を感じますね。

 

神に対する小さな歌、あるいは祈りといったたぐいのものなんでしょうか。ピアノソナタ32番神秘的で不可解な作品であることは間違いございません。