モーツアルトのトルコ行進曲 内田光子さんの演奏でお楽しみください。

  先ずは、私には見事な演奏ですが、伝統的でオーソドックスな演奏に感じられる、内田光子さんの演奏に耳を傾けてください。
   Mitsuko Uchida plays Turkish march

東ヨーロッパは、16世紀以来スレイマン大帝という、強そうなオスマントルコの指導者に率いられた軍隊に脅かされてきたと言われています。

そのような史実のオスマントルコの軍隊をイメージして作曲したものと思われますが、そのようなオスマントルコの強勢は、どのくらいの期間続いたかはわかりません。

太鼓など打楽器が主体の軍楽隊だったと言われ、その行進に特徴があったのでしょう。


曲の構造は、2/4拍子、出だしは、導入の役目を持った有名なメゾピアノのイ短調 (A minor)のアレグレットのメロディーから始まりますが、0:45、大きく曲想が変わります。

イ長調(A major)に転調しているからです。この部分こそ、トルコ軍の太鼓のマーチです。

やっぱり内田さん、勇ましく弾いていらっしゃいますよね。それが続くと思いきや、単純化を避けたのか、更に関係短調の 嬰へ短調(F#minor) に転調していきます。

そして、再びの転調の後、繰り返しになり、閉じられます。透明な音、いかに深く楽譜を読みこんだか直ちに、わかる素晴らしい演奏になっています。 次は、同曲、グレングールドの演奏に移ります。内田光子さんとグレングールドの違いに注目してください

   Glenn Gould plays Turkish march 出だし、メゾピアノで同じ音量ですが、速度がまるで違います。内田さんが、アレグレットだとするとグールドは、アンダンテです。
                   Glenn Gould


その証拠に内田さんの場合は、イ長調のトルコ軍隊マーチの部分まで、45秒ですが、グールドは、65秒かかっています。

これではモーツアルトの指定した速度を守っていないことは明らかです。グールドという人は、他のピアニストと同じような演奏をするのなら元々録音しないし、楽譜に繰りかえしの指示があっても、 同じ勝負は二度する気はないので、繰り返しなし。

更に、内田さんより、2割ほど速いトルコ行進曲のヴァージョンも用意しかねないピアニストです。そんな振舞をしても周りからクレームが出ることはありません。

ただ、マーチの部分は、フォルテで男性的な雄々しさをしっかりと表現しています。ゆっくりですが、一音一音粒だっていて、メゾフォルテくらいになると、右手と左手の分離が見事です。

モーツアルトの時代は、もうポリフォニーの時代ではないのですが、グールドは、相変らずバッハの時と同じように、右手で、あるいは左手で何をしているのか明確にするピアニストである姿勢を変えません


それなりに、モーツアルトも聴かせてしまうところが凄いなと思います。