――2023年の振り返り――


2023年のNHK『紅白歌合戦』の提示した「テレビにおけるアイドル観」は〈YOASOBI〉の『アイドル』に日本と韓国のアイドルを次々と登場させたシーンに象徴されました。
『America's Got Talent』で披露された〈アヴァンギャルディ〉のダンスから始まり、〈Rev.from DVL〉と〈ゆるめるモ!〉所属だった2010年代半ば頃にネット上のミームで「天使と悪魔」と対比されていた地方アイドルのアイコンだった橋本環奈と地下アイドルのアイコンだったあのの二人が当時話題となったポーズを再現するステージでした。


そして、この二人の前にステージに登場したアイドルたちがテレビ「地上」波において認識される「アイドル」ということになるのでしょう。
日本人K-POP枠が〈NiZiU〉〈JO1〉に、48グループ出身の宮脇咲良のいる〈LE SSERAFIM〉と〈twice〉の日本人メンバーを抽出した〈MISAMO〉の4組で、韓国枠が〈SEVENTEEN〉〈Stray Kids〉に特別枠をわざわざ設けた〈NewJeans〉の3組。秋元康枠は〈乃木坂46〉と〈櫻坂46〉の2組。国産ボーイバンドとして〈BE:FIRST〉。懐古枠として元〈キャンディーズ〉の伊藤蘭とアミューズ社三人組アイドルの後継である〈Perfume〉。
ここに23年の「紅白」には呼ばれていない旧ジャニーズ勢と、それぞれ十年前と二十年前に一時代を築いていた〈AKB48〉と〈モーニング娘。〉ぐらいが「テレビの人たち」(作る側も見る側も)がイメージする「アイドル」の全てと言ってしまっても言い過ぎではないはずです。

ここから分かるのは、今現在の日本における「テレビの人たち」にとっての「アイドル」のメインストリームはK-POPアイドルであって、非K-POPな日本のライブアイドルは得体のしれないアングラな存在でしかなく、色物として『紅白歌合戦』では20年の〈BABYMETAL〉、21年の〈BiSH〉、23年は〈新しい学校のリーダーズ〉とたまに1枠与えておけばいいや、ぐらいの扱いなのでしょう。

そもそも大衆マス 向けメディアである「テレビ」が歌って踊る日本人アイドルを好まないところがあって、橋本環奈あのもそうですが、他にも王林ファーストサマーウイカ生見愛瑠などアイドル色を抜いてからテレビが扱うようになりますよね。
また、男性アイドルでも〈BE:FIRST〉を成功させたSKY-HIが〈AAA〉での同僚Nissyと『SUPER IDOL』と歌い、ジャニーズを離脱した平野紫耀ら〈Number_i〉が『GOAT』と歌っても大衆にはブロードキャスト(伝播)されないのが現実です。
「なんで紅白にK-POPばかりを呼んで日本のアイドルを出さないんだ!」って怒っている人たちもいるけど、彼らだって実際のところ、具体的に呼ぶべき「日本のアイドル」をイメージできていない人がほとんどでしょ。

中森明夫の『推す力 人生をかけたアイドル論』から一般論として……中森明夫に対しては色々と思うところあるので、あくまでも一般論として引用します。
かつてアイドルはテレビがメインステージだった。テレビに出ないとアイドルとして認められない。テレビから姿を消して"アイドル冬の時代"となった。
しかし、新たなアイドルブームは、テレビがメインステージではない。ライブ+インターネットだ。
~(中略)~
テレビのキー局はすべて東京にある。大手芸能プロダクションも同様だ。つまり、かつてアイドルになろうとすれば、東京在住が必須条件――上京するしかなかった。今は違う。地元でライブをやって、地元から発信できる。インターネットの普及によって、全国各地がアイドルの活動できる場になったのだ。
たとえば地方に住む、芸能プロダクションに所属しない1人の少女がいるとしよう。路上でライブをやって、スマホで動画を撮り、YouTubeにアップする。なんと、たった一人でアイドル活動が展開できるのだ。いつでも、どこでも、誰でもアイドルになれる。24時間、世界中に発信できる。これは大変なことだ。アイドルをめぐるメディア環境は一変してしまった。
アイドルに限らず「芸能」全体が「テレビ」に映るかどうかで判断されています。
コンサートで何万人も動員しているミュージシャンであってもテレビに映らなければ無名の「地下」的な存在として扱われるし、テレビに映っていた俳優が劇場に活動の場を移せば「終わコン(終わったコンテンツ)」扱いされる。テレビに映る芸能人は映らない芸能人に比べて「高級」扱いされるのも現実です。
でも、多くの人たちがあまりに「テレビ」に価値判断を委ねているようにも思えませんか?
口の悪い人の言う「マスゴミ」なんて表現も情報依存の裏返しでしかなく、大衆マス 向けメディアなんてそんなもんでしょ、としか私は思えません。みんな「テレビ」の悪口は言うわりに情報を依存し過ぎているように見えます。

それでいて、「テレビ」の権益は、ジャニーズ社問題が象徴的ですが、東京のテレビ局と大手芸能プロダクションのインナーサークルで独占され、大企業病に侵されたまま、革新的な商品開発も野心的な人材育成もされず閉塞感のみが高まっていく。
これはテレビを中心とする芸能界やマスメディア各社だけじゃなく、日本社会全体にある閉塞感ではないでしょうか。
テレビの音楽番組がK-POPアイドルに占められつつあるのだって、ネット上で流布する陰謀論者が言うような「韓国の陰謀」でもなんでもなく、ただ単に、既得権益の配分ばかりにかまけて自前で何も作れなくなりつつある「日本」がアウトソーシングに頼り切りになった、というありふれた話でしかないわけで。
アイドルは本来、歌手としてデビューするが、その後、女優に転ずるケースがある。「転ずる」というより「成長する」と捉えるむきもあった。長く芸能界で活動を続けるには、それがある種の必然だったのかもしれない。
昭和から平成になって、アイドルの形も変わった。分業化したのだ。バラエティー番組に出るバラドル、グラビアアイドル略してグラドル、声優アイドル=声ドル等である。
「アイドル女優」もその中にあった。女優の肩書きだけれど、アイドル的な受容をされている女子タレントたちだ。90年代後半からゼロ年代にかけて("アイドル冬の時代"とも相まって)、アイドル女優たちが輩出した。
上戸彩がその代表格だろう。さらには広末涼子や田中麗奈ら、映画やドラマよりも前にまずテレビコマーシャル=CMで顔を知られた、いわば「CMアイドル」発の女優たちだ。長澤まさみや沢尻エリカ、宮﨑あおい、蒼井優、井上真央、堀北真希、上野樹里、新垣結衣、石原さとみ、綾瀬はるか……といった顔ぶれが思い浮かぶ。
ところで、この「アイドル女優」という呼称は、当人はもとより所属する芸能事務所サイドからひどく嫌がられる。「ウチの〇〇はアイドルなんかじゃありません! 立派な女優です!!」というわけだ。明らかにどこかアイドルは女優よりもはるかに位が低いといった印象なのである。
「テレビの人たち」にとって歌って踊る日本のアイドルは80年代で終わっているのですよね。80年代末頃からバラエティ番組の賑やかしを担当するバラドル、(あえて古臭い表現で)お色気を担当するグラビアアイドル、オタク層向けの声優アイドルなどに分業細分化され、90年代になるとアイドルという呼称自体が忌避されるようになります。
90年代を代表する「アイドル」は広末涼子と安室奈美恵になるでしょうが、彼女たちは当時アイドルと表立っては呼ばれていませんでしたし、アイドル呼びする場合にはどこか"位が低い"と卑しむ感覚がありました。
そして、この90年代の"「ウチの〇〇はアイドルなんかじゃありません! 立派な女優です!!」"という表現は三十年経った今でも普通に見かけます。普段は「アイドルなんか」とバカにしていた人がアイドルにハマると口を揃えて言い出す「〇〇はアイドルじゃない。アーティストだ」はこの感覚を引きずった表現ですよね。

K-POPアイドルが90年代を起点に歴史を語るのとは逆に、日本では90年代に大衆マス 文化としての歴史が断絶されてしまっています。だから大衆はテレビに映るバラドルやグラドルは知っていても、歌って踊る(本来の)日本のアイドルがどのような音楽をやっているのかに興味を持たないし知らない。音楽をやっているのは韓国アイドルだけだと思い込んでいるのでしょう。

私自身は音楽をやっていないアイドルに興味は全くありません。
その上で、「プロフェッショナルな韓国アイドルに比べて日本のアイドルはアマチュアだ」という価値観のみが肯定されて、例えば、田舎の高校生がバンドを組んで地元の小さなライブハウスから始めて大きくなる、そんなストーリーを完全否定し、大手芸能プロダクションが養成したミュージシャンだけが認められる、そんな社会も私は望みません。


〈カイジューバイミー〉のカヴァーした〈フラワーカンパニーズ〉の『深夜高速』。
機材を載せたクルマに乗り込みライブハウスからライブハウスへ旅を続けるバンドマンとライブアイドルの生活を重ねたもの。

そういえば、ここ最近、韓国で〈緑黄色社会〉の人気が出始めていますね。「会社がメンバーを集めて作ったのではない、地方都市の高校の同級生で組んだバンドが大きくなった」とストーリーが語られながら。
もちろん、〈NEMOPHILA〉のように「会社」主導で結成されたバンドもあっていいのですよ。どちらか片方だけが全肯定され、そうじゃない方は全否定されるのは楽しくない、という話です。


米国の音楽チャート「Billboard」に掲載された23年の振り返り記事「U.S. Music Consumption Saw Double-Digit Growth in 2023 as Streaming Surged, Sales Rebounded」(24年1月10日付)がちょっと面白かったので紹介しておきます。
Rock led album sales with a 41.5% share, more than triple No. 2 hip-hop’s 12.9% share and No. 3 pop’s 12.7% share. Country was No. 4 with a 7.8% share and World — mainly K-pop — was No. 5 with a 6.9% share.
In terms of growth rate, World music — which also includes J-pop, or Japanese pop, and Afrobeats — topped all other genres with a 26.2% increase in U.S. on-demand audio streams to 5.7 billion. No. 2 Latin was close behind with 24.1% growth but was far larger with 19.4 billion on-demand audio streams. Country was No. 3 in terms of growth, up 23.7% and with a total of 20.4 billion on-demand audio streams.
~(中略)~
J-pop totaled 1.67 billion on-demand audio streams (of J-pop tracks ranked in the top 10,000 world music songs). J-pop's success comes from a youth movement: Fans are 95% more likely than the general population to be Generation Z and 94% more likely to identify as LGBTQ+, according to Luminate.
なんだかんだ言っても米国では今もロックの売上が一番でアルバムセールだと41.5%のシェアを持ち、二位がヒップホップで12.9%、三位がポップで12.7%、四位がカントリーで7.8%、五位が米国人にとっての海外音楽であるワールドミュージックで6.9%。
ワールドミュージックの売上を主導するのがK-popなのは前提として、注目すべきジャンルとしてアフロビーツと並び、J-popおよびJapanese popの急成長が記されています。そしてJ-popの米国におけるリスナー層として、Z世代の若者層とLGBTQ+なアイデンティティを持つ層が一般層に対し有意に多い、と。
最近は、米国のヒップホップはじめとする黒人カルチャーと日本のポップ・カルチャーの文化交差に注目する研究が目立つようになってきていますが、日本のポップ・カルチャーはカウンター・カルチャーとして受容されていることが改めて分かりますね。日本には「LGBT陰謀論」みたいなものもありますが、この層は「日本」にとって重要なお客さんです。

そして、24年始まって最初の日本発の世界的バズは〈Creepy Nuts〉の『Bling-Bang-Bang-Born』。アニメが日本国外に日本の音楽を広げる重要なポータルになっています。
日本のラップミュージック/ヒップホップ界隈における23年の大きな話題は〈BAD HOP〉と〈舐達麻〉の抗争でしたが、喧嘩騒ぎには良くも悪くも界隈の持つ若さとエネルギーを感じます。


テレビ「地上」波の基準とは違う「地下」の一つの「アイドル」評価として、12月末に発表される「アイドル楽曲大賞」のランキングを毎年紹介しているので今年もここから始めます。

メジャーアイドル楽曲部門
1位.『楽の上塗り』CYNHN 2位.『コズミック・フロート』ukka 3位.『ar』Devil ANTHEM. 4位.『kyo-do?』私立恵比寿中学 5位.『ジンテーゼ』CYNHN 6位.『Summer Glitter』私立恵比寿中学 7位.『この空がトリガー』=LOVE 8位.『Start over!』櫻坂46 9位.『リサイズ』CYNHN 10位.『天使は何処へ』≠ME
11位.『メロメロ!ラヴロック』わーすた 12位.『シュークリーム・ファンク』フィロソフィーのダンス 13位.『MONONOFU NIPPON』ももいろクローバーZ 14位.『NEW WORLD』lyrical school 15位.『GAV RICH』ミームトーキョー 16位.『かわいいメモリアル』超ときめき♡宣伝部 16位.『ボイジャー』私立恵比寿中学 18位.『青春を切り裂く波動』新しい学校のリーダーズ 19位.『熱風は流転する』フィロソフィーのダンス 20位.『青いペディキュア』JamsCollection 20位.『どうしても君が好きだ』AKB48

とりあえず20位まで紹介しましたが、メジャーアイドル部門の中で、23年の『紅白歌合戦』にもエントリーしているのは〈櫻坂46〉と〈新しい学校のリーダーズ〉の2組。〈新しい学校のリーダーズ〉は「地下」からテレビ「地上」波に乗るようになったチームですが、逆に〈櫻坂46〉と〈AKB48〉はテレビに頼らず「地下」でもちゃんと戦えるようになったとも言えます。

アイドル界隈で俗に「楽曲派」と呼ばれる層に今現在人気があるのはDEARSTAGEグループ(以下、ディアステ)の〈CYNHN〉なのか。
私個人がメジャー契約しているアイドル楽曲で23年に気に入ったのは中野雅之が楽曲プロデュースしたWACKグループ所属の〈BiS〉『僕の目を見つめて 君の世界になりたい』と『イーアーティエイチスィーナーエイチキューカーエイチケームビーネーズィーウーオム』だったけど、「楽曲派」には全く反応がなかったよう。


中野雅之といえば私たち世代にとっては〈BOOM BOOM SATELLITES〉ですが、(大枠としての)90年代デジタルロックでは〈THE MAD CAPSULE MARKETS〉の上田剛士が楽曲プロデュースした〈Devil ANTHEM.〉の『GOD BLESS YOU!!』はアイドルの実写と概念をAIに読み込ませて作らせたMVが興味深い。ここからどう表現は発展するのだろう、と。
そして、テレビ「地上」波ではない「地下」のアイドルがバンド・カルチャーに属しているのが分かりますよね。
現在の〈BiS〉のバンド・アプローチが〈BOOM BOOM SATELLITES〉に続いて〈DOPING PANDA〉の古川裕の『LAZY DANCE』で、次に用意されているのが〈スーパーカー〉の中村弘二に、〈Age Factory〉で、姉妹チームの〈ASP〉も次に用意されている曲は〈WARGASM〉。こうしたWACKの方針は面白い。

WACKだとステージを観たら意外に良かったのが〈KiSS KiSS〉でした。
23年にあったWACK周辺状況だと〈BiSH〉の解散は「地上」でも報じられるほど大きな出来事でしたが、「地下」においては、毎年恒例だったWACKグループの合同オーディション合宿の中止発表が大きな影響を女性アイドル界隈に与えています。
WACKの拡大路線が止まったことで、これまでWACK第一志望だった浪人生たちが一斉に進路変更を迫られました。例えば〈PIGGS〉と〈MAPA〉のそれぞれ二人の新人や、AqubiRecグループの〈MIGMA SHELTER〉〈BELLRING少女ハート〉〈Finger Runs〉では各チームに一人ずつ新人採用し、秋元康プロデュースを冠したチームでも〈WHITE SCORPION〉がWACKの元練習生を二名採用するなど、次々と他グループに採用されています。WACKでのブートキャンプ体験は評価されます。
ただ、「アイドル楽曲大賞」は本当にWACK嫌いが多いのだろうな。WACKから離れた松隈ケンタの『青春を切り裂く波動』は18位だけど、WACKとしては〈BiSH〉最後の曲で〈THE YELLOW MONKEY〉の『Bye-Bye Show』が45位で最高位。

その一方で、「アイドル楽曲大賞」で常に上位に評価されるSTARDUST PLANETグループ(以下、スタプラ)所属のチームだと、23年の象徴的な歌詞として「共同戦線」を訴える〈私立恵比寿中学〉の『kyo-do?』に以前触れましたが、スタプラ旗艦チームの〈ももいろクローバーZ〉になると『MONONOFU NIPPON』MVで逆襲を訴えています。
20年公開の〈BiSH〉の『スーパーヒーローミュージック』MVと『MONONOFU NIPPON』MVを続けて見ると面白いし、さらに24年冒頭にスターダスト社は元〈BiSH〉からセントチヒロ・チッチの獲得を発表。
〈BiSH〉解散後、ももクロが旗手を再び担おうという表明に見えます。

……芸能人の事務所移籍というと、昔はヤクザを使った抗争が始まるくらいタブーとされていたけれど、例えば、WACKには逆にスタプラや〈HKT48〉から移籍してきたメンバーがいます。今のアイドルはプロスポーツ選手がチームを変わるように移籍するので、「芸能界」とは違うカルチャー。
メンバー編成が変わるのを嫌がるファンもいるけれど、風通しを良くする意味でも悪い話ではないと私は思うのだけどな。プロスポーツのチームのように毎年のチーム編成を楽しむように見ればいいのに。


インディーズ/地方アイドル楽曲部門も20位まで紹介すると、
1位.『八月』fishbowl 2位.『Lily』Ringwanderung 3位.『』タイトル未定 4位.『』タイトル未定 5位.『わざとあざとエキスパート』いぎなり東北産 6位.『あんたがたどこさ ~甘口しょうゆ仕立て~』ばってん少女隊 7位.『Vibes』Task have Fun 8位.『真夏のユーレイ!!』Merry BAD TUNE. 9位.『九天』fishbowl 10位.『Flyways』jubilee jubilee
11位.『ぴゅあいんざわーるど』FRUITS ZIPPER 11位.『Adam』Ringwanderung 13位.『神話級ハッピーエンド』さとりモンスター 14位.『夏へのとびら』クマリデパート 14位.『Sparkle』SANDAL TELEPHONE 16位.『主人公 』Layn 17位.『夏が来れば』タイトル未定 18位.『シリウスにマフラー』開歌-かいか- 19位.『尻尾』fishbowl 20位.『フロンティア』RAY

現在の地方アイドルの旗手は、静岡を拠点とする〈fishbowl〉と北海道を拠点とする〈タイトル未定〉。そこにスタプラの地方拠点チーム〈いぎなり東北産〉〈ばってん少女隊〉を軸とする上位層。

とはいえ、地方アイドルの動員はどこも減少傾向にあると〈fishbowl〉〈タイトル未定〉らと「地方アイドル界隈」を構成する京都拠点の〈きのホ。〉プロデューサーは語っていました。「楽曲派」が好むチームも全体としてあまり調子が好さそうには見えず、「アイドルブーム」の終了で新規ファンの流入がほぼなくなって既存ファンが界隈を回遊するばかりになっている印象は拭えません。


インディーズだと〈RAY〉の『火曜日の雨』が私のティーンエイジ心を刺激します。

アイドル楽曲大賞の会場でも「楽曲派」好みの曲とTikTokでバズった曲のバランスをどうとるのかが話題になっていました。
音楽の好みは別にして、女性アイドルで2023年に一番注目された存在だったのは〈iLIFE!〉になるのだろうな。
そして、もしプロスポーツのように「新人王」があるとすれば〈iLIFE!〉兼〈i-COL〉メンバーのあいすが選ばれると私は思います。


23年の女性アイドル事情を、単純な言葉で表現するならば「原宿系」の躍進が特徴的だったと言えるでしょう。
ブームの終了で新規ファンを獲得できなくなった「楽曲派」とは逆に、〈iLIFE!〉らのHEROINESグループは「独り勝ち」と言われるくらいに好調でした。
女性アイドルの本拠地というと〈AKB48〉や〈でんぱ組.inc〉に代表される秋葉原が2010年代前半まで。10年代後半からは〈BiSH〉や〈ZOC〉に代表される渋谷でしたが、20年代に入るとパンデミックの影響でライブハウスでよりもインターネットに強いチームが勢力を伸ばし、23年にはNHK『紅白歌合戦』出演の〈新しい学校のリーダーズ〉とTBS『輝け!日本レコード大賞』新人賞を獲得の〈FRUITS ZIPPER〉を送り出し「地上」でも無視できない存在となったASOBISYSTEMグループ(アイドル部門はKAWAII LAB.)に、「地下」で独り勝ちしたと言われるHEROINESグループらの本拠地である原宿のアイドルたちがTikTokを活用したプロモーションで女性や子どものファンを多く獲得し既存の客層の外から人を呼び込むことに成功。
主戦場はTikTokとなり、ここで強いかどうかが今現在の勢いの差になっています。
……スタプラ好きな「アイドル楽曲大賞」なら〈AMEFURASSHI〉とエースの愛来を評価しても良さそうだけどそうでもないのかな。


23年のアイドル界最大の事件は「ジャニーズ帝国」の崩壊でしたが、「地上」が解放されたことで男性アイドルも様々な形式で人気を得るチームが24年には出て来るかもしれませんね。
12月に開催されたSKY-HI主宰のショーケース「D.U.N.K.」には、ジャニーズ改めSTARTO社所属の〈Travis Japan〉と、ジャニーズを離脱しチームごとTOBEに移籍した〈IMP.〉が参加していました。「ジャニーズ帝国」が支配していた時代には考えられない話です。ジャニーズを離脱したSKY-HIと〈IMP.〉のいる場に旧ジャニーズ所属のチームが出て来るなんて。
なんだかこれまでの足枷となっていた旧弊が解除されたような感覚があります。

24年に入ると、韓国企業と組んで男性アイドルの〈JO1〉と〈INI〉、女性アイドルでは新たに結成した〈ME:I〉で侵攻を始めていた「ヨシモト帝国」も揺らぎ始めています。マスに作用する「(テレビ)芸能界」の風通しが好くなると「日本」の閉塞感も少しは晴れる気分になるんじゃないのかな。


リンクしてあるのは、Bring Me The Horizonの『Kingslayer』ft. BABYMETAL。

ようやく公開された『Kingslayer』のライブMV。今現在の男女合わせた日本型アイドルのトップで代表の座にいるのはSU-METALこと中元すず香なのは明らかですね。
Rage Against The Machine〉のTom Morelloにギターを弾かせた『メタり!!』を聴くと美空ひばりポジションを狙っている? とも。
そういえば、〈Bring Me The Horizon〉のOliが参加したYUNGBLUDの『Happier』MVは日本の女性ライブアイドルMV感があって面白かったな。