このメキシコ革命では、二人の英雄が現在に至るまで伝説的な人物として扱われました。
一人はメキシコ北部のチワワ州を地盤としたパンチョ・ビジャ。小作農の息子から山賊の首領となり、革命戦争が開始されると義勇兵を率いて勇猛に戦いました。
もう一人は、首都の南にあるモレロス州を地盤とするエミリアーノ・サパタ。独立農民の息子で、村一番の伊達男は頼まれてなった自警団の団長からいつの間にか農民兵たちの指導者となります。

と、ここで「反乱するメキシコ」のリンクを貼りたかったのですが、amazonと楽天のどちらにも置いていないようです。
けっこう紹介したい本があってもamazonに置いてないことがあるのですよね。出来るだけ入手しやすい本で紹介していきたいと思っているのですが、私が思っているよりも絶版が多いことをブログを書きながら、改めて認識しているところです。

メモ垣露文

左から、マデーロ、ビジャ、サパタです。
1913年には有力な軍人ヴィクトリアーノ・ウェルタが米国の支援を得てマデーロを殺害し大統領の座を奪います。それに対してビジャは北部師団と呼ばれる自身の軍団を創設して反撃、マデーロとは農民の権利についての対立から袂を分かっていたサパタも農民兵を率いてビジャと同盟してウェルタを国外逃亡に追い込みました。
そんな二人もサパタが1919年、ビジャは1923年にそれぞれ暗殺されています。

メモ垣露文

ディエゴ・リベラとシケイロスが帰国した1920年代初頭とは、こんな時代でした。
革命は、いまだ進行中で、最終的にどのような国のかたちになるのかも分からない時代に、メキシコの芸術家たちは大衆に向けた芸術運動として壁画制作を選択し精力的に活動していきます。

画像はWikimedia Commonsより。

メモ垣露文

これは大統領宮殿の階段に描かれたディエゴ・リベラの壁画です。壁画運動とは、たとえ字が読めず、教育を受けられなかった人であっても、絵の力によって思想や歴史を伝えようという意図で描かれました。この絵はメキシコの歴史をヴィジュアルとして表現しているのです。

メモ垣露文

シケイロスの描いた民主主義のメイデンは、手枷に鉄球をはめられたまま壁を突き破りそうな迫力で、革命を表現しています。
この数十年後のグラフィティ・アートは、こうした壁画運動に影響を受けているので、現在の目から見ると有り勝ちな構図に見えるかもしれませんが、当時は教育を受けていない人々に向けて描かれたので分かりやすいことも一つの条件だったのです。

メモ垣露文

メキシコ独立運動の指導者イダルゴ神父を描いたオロスコの絵です。わりと常識人だったオロスコに比べて、ディエゴ・リベラとシケイロスはむちゃくちゃなキャラクターでした。
どちらも共産主義者として活動しますが、かたやトロツキスト、かたやスターリニストと、どうしてこの二人がその後も一緒に活動を続けられたのかは、メキシコらしいといえばメキシコらしいのではありますが。

メモ垣露文

ディエゴ・リベラの妻のひとりは有名な画家フリダ・カーロです。“ひとり”と書いたのもディエゴ・リベラのとんでもない女癖の悪さからですが、彼女の作品も観ていて興味深いものがあり、機会があればどうぞ。
このカップルは自ら武装してトロツキーの護衛を始めてしまうようなふたりで、一方のシケイロスはトロツキーへの刺客を手引きしたと言われています。

魔術的リアリズムとはガルシア・マルケスの小説群につけられた表現ですが、ラテン・アメリカの魅力でもあります。
うーむ、ここで使おうと思っていた「赤い薔薇ソースの伝説」もamazonで画像が出てこない・・・。



このフリダ・カーロの映画の製作が決まった時にはメキシコ系女優では誰がフリダを演じるかで争奪戦があったという噂を聞きました。米国映画なので英語でメキシコを描くのは・・・とは思いますが、そこそこ楽しんで観た記憶があります。興味を持って頂けたら、入門編といった気分でどうぞ。