感想など
2月22日は猫の日だという。とくに2022年なのでスーパー猫の日とのことである。世界でも欧州では2月17日、ロシアが3月1日、米国は10月29日だという。テレビ番組表に「ボブという名の猫ー幸せのハイタッチー」があったので見た。実話だとエンドロールに書いてあった。ジャンキー(麻薬中毒者)の更生物語で、たまたま迷い込んできた野良猫との共生することで幸運に恵まれ立ち直るという所謂英国版「招き猫」的ハッピーな作品だった。
ただ、猫に注目しがちだが、主人公の音楽に対する姿勢が猫と同様の大きな意味を持っていた。映画の中で歌われる歌の内容が非常にポジティブであることだ。ジャンキーとか路上生活者と言われる人たちは、社会を斜に構え反社会・人間不信に陥る場合が多い。ある時期のシンガーソングライターは、反政治・反社会を歌う人が多かったが、彼の歌は。
「絶望しなかった心に 希望の光がさしこんだ♪」
「劣等感は忘れ ありのまま存在すべき♪」
「良心の小さな声に耳傾けろ そいつを歌わせる♪」などなど・・・
主人公ジェームズは幼いころ両親が離婚。父親の再婚など精神的に不安定となり麻薬に手を出し深みに嵌る。家から追い出されて、路上生活。たまたまギターと歌が上手で、路上で弾き語りをして投げ銭でその日暮らし。しかし、中毒が進行病院に救急搬送され、ソーシャルワーカーの更生プランによる薬物治療を行う。
ソーシャルワーカーからアパートを提供され、プラン通りの服薬治療と路上演奏でいくばくかの収入を得る生活が続く。そんな中、アパートに一匹の猫が迷い込む。飼い主を探すのだが見つからない。離すが、後々大きな傷を受けて戻る。同じアパートで犬を飼う女性ベティに相談し治療する。結局、飼い主不明で猫と同居。ベティが猫を「ボブ」と命名。
猫のボブはジェームスの路上演奏にも同行るジェームスの肩に乗り、一緒にいることで関心を引き、投げ銭の実入りが増える。隣人ベティとも仲良くなり行き来する。ベティは家畜解放運動者で肉食はしない。また、兄が麻薬中毒で亡くなったため麻薬中毒者には拒否的な人だった。そのためジェームスは自分が中毒者であることを言い出せない。
正月父親の家をボブと訪れて追い出されたり、路上演奏中トラブルで警察沙汰になり、路上演奏を禁止され、ベティにジェームスが麻薬中毒者だとバレて絶交される。路上演奏できないジェームスは社会事業の雑誌を売る。ボブと一緒のジェームスの雑誌の売れ行きは好調。そこで新聞記者の取材やsnsの動画サイトでも人気を獲得。
一時行方不明になったボブが帰宅としたのを機会に麻薬中毒治療に使う薬物を絶つことに決めた。そのためには2-3日間は塗炭の苦しみが伴う。ジェームスは耐えに耐えて完治した。そんなジェームスに出版社から原稿依頼が舞い込む。そして「ボブと作者」として出版、1000万部のヒットとなる。そんな中、父親やベティとは和解してハッピーエンド。
猫とは不思議な生き物だと思う(犬も)。人を怖がらない。(なつけば)なつくと人懐っこい。よそよそしくお世辞の態度がない。つまり空気のような存在。この映画では、飼い主の肩にちょこんと乗って一心同体のように振る舞う。やはり、通行人とのハイタッチ。飼い主とのハイタッチの場面は、たとえヤラセであっても心憎い。
特に孤立した人間にとって(孤立していなくとも)、愛玩動物は癒しの対象として打ってつけだと思う。漱石先生曰く「とかく浮世は住みにくい」と感じたとき、天真爛漫、裏表なく付き合ってくれる小動物は全然憎めず癒される。この映画の主人公が癒され、助けられ、更生を加速することには有る得ると思う。
一方、これは上手く出来すぎた実話で、だれもがこのようにうまくゆく訳ではないという感も免れない。この映画から麻薬中毒の治療は、麻薬をただ飲まないだけでは治せず、さらに治療薬を絶つことも大事なのだと初めて知った。治療薬をやめるのにも塗炭の苦しみを味わうらしい。また、「ビッグイシュー」も制度を知った。ホームレスの人たちが雑誌を仕入れ、販売して半額の収入を得させる自立支援事業である。
人が困難に遭遇して、落ち込み犯罪やドラックに溺れて転落し、もがきながら周囲の理解と本人の努力で更生し、幸福を獲得する話はたくさんある。どの話もそれぞれの感動ドラマである。この映画は、そんな物語の一つに過ぎないが、猫と音楽と周囲の理解者に恵まれた話としての感動ある映画であった。
画像
タイトル 更生中のジェームズは路上ミュージシャン
アパートを借りる 猫が入ってきた
隣人ベティにボブを命名してもらう ジェームズと一緒だと盛況
ベティに麻薬中毒者がバレる ビッグイシューの販売も盛況
犬にほえられボブは逃走 一人になったジェームス
SNSで評判なっていた ワーカーと薬物治療をやめる相談
苦しみを克服して完治 ワーカーに報告
ベティは実家へ引っ越し 出版社から手記執筆依頼
実父との和解 手記がベストセラーとなる
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