「母さんは働きづくめで私たちと話す時間がなか

         ったから話の代わりに弁当を作ってたのよ」

              (「今日も嫌がらせ弁当」から若葉の言葉 )

感想など

中学・高校生時期は、いわゆる第二反抗期と言われる。親に保護されることへの反発、自立心の芽生え、親がそんなに理想的でなく親がそれほどのものではないと分かりかけた時期とでも言いましょうか。自分の部屋に勝手に入られることを拒否したり、親の注意や忠告に対し「ウザイ!」と言いごたえをしたり、親と口をきかなかったり手に負えない時期で子育て経験者にはよくわかる話だ。

 

この映画は、心理分析とか親子の対立とか、反抗期をどう過ごすかなど単なる体験談ではない。どちらかというと親と子のバトルを弁当作りの嫌がらせを楽しむ。娘もそれに負けじと完食するゲーム感覚のようなやり取りを続け反抗期を乗り切るという、出来そうで出来ない、できるかもしれないというコメディタッチのホッコリ映画だった。

 

ゲーム感覚の弁当だから奇抜である。キャラクターを卒業した娘に「赤ずきんちゃん弁当」二日酔いの朝に作った「鮭茶漬け弁当」内職疲れの時は「木工ボンド弁当」寝坊の朝は「おにぎり弁当」ネタ切れになりメッセージを「皿はかたずけや弁当」幼馴染で好きな男性のことを冷やかす「LOVEの弁当」には、娘はクラスメイトに恥ずかしさを隠せないところが初々しい。落ち込んだ時の「無駄なことはない弁当」就活には「夢をかなえろ弁当」ちょっとひねった「クイズ弁当」そして卒業式の日の巨大な「表彰状弁当」。娘がお別れに作った「元気でね弁当」は心がこもっていて泣ける。

 

母はキャラ弁当作りに合わせて、それをブログに載せて公開を図るとたちまち人気ブログになる。案の定ブログを見たシングルファーザーが見つけ、共通の話題を手掛かりに交流するが特に出会うことはない。ただ、シングルファーザーと息子も「文字弁当」を真似るのだが、息子は会話してほしいと捨てていたが、話し合いで誤解は溶けることになる。ただ、この父子親子と母子親子は、映画内では特別出会うことはない。

 

母親は心情をお友達にこう述べる「ツイ感情的になってしまうことを後悔している。憎くて可愛くて、むかつくけどいとおしい」そして娘の若葉もお別れの手紙で「進学してキャラ弁を開いたとき友達は可愛いと羨んだ。朝早く手作りしてくれたことに感動していました。三年間のキャラ弁ありがとう」と感謝の気持ちを残して別れます。親が真摯に頑張っている姿は、直ぐには理解できなくともいつかはきっと分かってもらえる。親も子も反抗期は避けられませんが、その過ごし方によってお互いが成長できるものだと思わざるを得なかった。

 

画像

 

タイトル                    家では口を利かない若葉

 

キャラ弁                   クラスメイトには注目の的

 

皿を洗えと                  LOVE弁

 

駆け抜けろ弁                進路をきめろ弁

 

幼馴染に惹かれた若葉         シングルファーザーも真似る

  

彼に作った弁当だが・・・・・・・・・・・・・・彼には先口がいた

 

就活への                  夢叶え弁

  

合格弁                     倒れた母

 

シングルファーザーからのメール    卒業式の巨大弁当

 

表彰状弁当                 都内へ旅立つ若葉への元気弁

 

見送る母と姉                いざさらば!

 

あらすじ

八丈島に住む持丸かおり(篠原涼子)には長女双葉(芳根京子)次女若葉(松井玲菜)がいて円満な家庭だったが夫が事故で亡くなり母子家庭になった。双葉は高校を出て働き別居したが、若葉は高等学校に入学した。二人の娘と両親とは幼い頃はラブラブの関係だったが、かおりと同居する若葉は第二反抗期で、かおりと打ち解けず会話もなくにも反発している。

 

そんな若葉のいやな態度にかおり側も手を焼き、それなら態度が改まるまで嫌がらせしてやると考える。そこで高校へ持ってゆく弁当に手の込んだ赤ずきんちゃんをあしらった幼児っぽいものを持たせた。同級生の見ている前で弁当箱を開いたときの驚きは隠せなかった。そんな嫌がらせは毎日続く。一方若葉は残せば負けだと意地になって完食する。

 

スライスチーズに海苔の切り絵で「杉ちゃん」を作る。鮭茶漬けの袋、木工用ボンドなど毎日作り続け一か月。姉の双葉も続くので感心。ネタが尽きるとメッセージにした。「皿はかたずけや」のメッセージは評判になり、片づけざるを得ない。ついに作るだけでは済まず、ブログで発信するとそれが人気となり6900人がフォローすることとなる。

 

そんなブログを見つけたのがシングルファーザー岡野信介(佐藤隆太)だった。保育園に通う息子のため真似をしたが失敗。そこでかおりに直伝を乞う。まず、蛸さんウインナー、スライスチーズの型抜きなど教わって息子に持たせる。

 

同級生山下達雄(佐藤寛太)は、若葉と幼馴染で女生徒達の憧れ的存在。そんな達雄が若葉の弁当を見て「母さんに愛されているよ。俺は作ってもらえない」と羨んだ。そんな若葉の気持ちを逆なでするような「LOVEの文字と達雄&若葉弁当」を作って嫌がらせをする。

 

交流ブログのシングル男性岡野は半年前に妻をなくし息子を保育園預け悪戦苦闘。かおりは娘二人を悪戦苦闘で育てたので共通認識を持て情報交換はいろいろできた。そんな中、岡野は保育園の弁当に海苔で文字を描いた弁当を持たせた。

 

そして若葉も高校3年生。進路につて聞いてもなにも決まっていないようだ。同級生の達雄は、東京で高校生の太鼓大会が行われるので頂点に立ちたいと練習に励のを見て、東京で仕事をしたい決心をして母にメールで知らせた。そんな双葉にクラスメイトは、達雄に太鼓大会当日の弁当を作ってやれと助言する。そのため母に対しキャラ弁当の作り方を教わり「頑張れ弁当」気持ちを混めて作る。

 

そんな「頑張れ弁当」だが、達雄に渡そうとしたところ別の彼女が先手を打っていてその彼女と達雄は仲良しだった。裏切られた悲しさ。それと共に就職試験も落ちた。荒れる若葉を叩く母。「何でも無駄なことはない」と翌日は「無駄ない弁当」を作る。双葉は謝り、今度は東京の会社に面接を決心する。そこには「夢をかなえる弁当」で送り出し今度は合格。

 

いよいよ高校卒業もカウントダウン。そんな中突然かおりが倒れた。脳梗塞の初期と言うことでしばらく入院となる。若葉は東京行きに迷うが母は「お前にはここに居場所はない」と突っぱねる。そんな言い合いで若葉は姉宅に逃避。姉の双葉は仲直りしろと説得。卒業式の前日、病院を抜け出したかおりは、最後の弁当作りにまい進する。

 

一方、シングルファーザーの岡野は息子に「文字入り弁当」を作ってやったが、息子は食べず捨てていたと保母から聞く。驚いた岡野は息子に聞くと「ママは話を聞いてくれていたけどパパは聞いてくれない」と本音をうちあけた。驚いた岡野は謝る。息子は納得した。

 

かおりはキャラ弁当作りの最後に「嫌がらせ弁当を三年間食べ続けたことを表彰します」という特大の弁当を作った。若葉のクラスメイトは大喜びで、かおりの作ってくれた弁当に手を付け美味しいと食べた。そんな若葉が東京に出発する前日、かおりと双葉に「元気でね弁当」残していった。双葉はそれを病院へ持って行くと、やはり若葉を見送りたいと港へ行くことにした。汽船は出航したがぎりぎり手を振り合うことができた。若葉の弁当にかおりと双葉は噛り付いた。