「相手の無実を実証するためであっても、双眼鏡で暮ら
しを覗き見することは、道徳に反するのだろうか」
(「裏窓」からジェフの言葉 )
あらすじ(ネタバレ)
雑誌社のカメラマンのジェフ(ジェームス・スチュアート)はニューヨーク市グリニッチ・ビレッジのアパート暮らし。最近、自動車レース場で足を骨折して、退院後もギブスを装着して三週間は出歩けない。毎日、出張看護師ステラ(セルマ・リッター)が治療に来て雑談を交わす。また、恋人リサ(グレース・ケリー)も訪ねてくる。リザはお金持ちのお嬢さんで、結婚して危険の伴うジェフの現在の仕事より、ファッションやポートレートの撮影を望んでいるのだが、ジェフは今の仕事を続けたいので結婚に踏ん切れないでいる。
毎日、ジェフは窓から中庭の向こう側の裏窓に見える住人達を眺めまわしている。独身女性の一人暮らしの様子。女王蜂のように男性を集めて物色する女性。ピアノに向かい作曲に苦労している男性。犬を飼っている夫婦などの日常生活が観察できた。ある雨の晩、眠れない夜、病気で寝たきりの妻と暮らすセールスマンが、深夜の2時ころから3回も大きなカバンを持って自宅から出入りしているのが不審に見えた。
昼になり、双眼鏡や望遠レンズのカメラでセールスマンは、肉切り包丁や鋸を新聞紙に包んでいる情景を目撃した。その後、その男の寝たきりの妻がベットから消えてしまっていた。ジェフは再び来たリサにセールスマンが妻を殺したのではないかと話す。当初、有り得ないと言ったリサだが、大きな箱を縛っている状況を見て、その気になり、翌日郵便箱からラース・ソーワルド(レイモンド・バー)という名前を調べて来た。
ジェフには友人で警察署長ドイル(ウェンデル・コーリー)に捜査するよう頼む。一方、ステラも死体の解体は風呂場ではないかその気になる。そんな中、ラースの部屋では、大きな荷物を運送業者が運んで行く様子が見えた。ドイルは「これだけ窓に囲まれていて殺人を犯すとは考えられない。署には言わず個人的に調べてみる」と否定的だった。そしてドリルはラースについて直ぐに調べて来た。「昨日、朝の6時に夫婦で家を出た。女房を駅まで送り亭主は戻ったとアパートの管理人と住人が証言している」という。その時間帯ジェフは眠っていたのだった。
その夜、ラースの部屋では衣類を用意。ハンドバックから貴金属を出し、長距離電話をしていた。そこへリサが来て、女性は好きなバックは必ず旅行には持参する。またバックに宝石は入れない。結婚指輪は肌身離さず持っている筈だと言う。もしかしてラースは別人と駅へ行ったのではと不審な点を指摘した。そこへドイルが来る。ドイルは殺人を否定した。ラースの妻がメッツビルへ旅立ったのを確認した証人が居る。またメッツビルの警察は到着したトランクをミセスソーワルドが受け取ったのを確認したと連絡があったという。
ドイルが帰るとリサは「無事だったことを喜ぶべきよ」言い。ジェフも納得し、明日から盗み見は止めようと反省した。しかし、その時突然、外から悲鳴と泣き声が聞こえた。真向いの夫婦が飼っていた子犬が中庭で、首を折られ殺されたと言うのだ。ほとんどの窓が開けられ、住人たちの視線が中庭に集中する。子犬の死体が引き上げられ、騒動は一旦落ち着く。
そんなジェフが、ラース・ソーワルドの窓だけが開かなかったことに気付く。犬の死体があった場所はラースの庭(部分)だった。犬が掘ろうとして殺したのではという疑いを感じた。遂にジェフは「ラース・ソーワルド、彼女はお前がやった」という手紙を書き、ラースの部屋のドアにリサが挟んだ。手紙を見たラースに大きな変化はない。そこでジェフは、電話帳からラースの電話を調べ「お前の死んだ女房の件だ。ホテルに来い」とおびき出す。
外出したラースがいない間に中庭で子犬が掘ろうとした場所をステラとリサが掘りに行く。なにも出ないためリサは外階段を登りラースの窓から部屋に侵入。するとラースが戻って来た。ジェフは「部屋で男が女に暴行している」と110番通報した。ラースはリサを見付け、問い詰めている様子が見える。動けないジェフはどうすることも出来ない。警察はやっと到着。リサはラースから泥棒と思われているらしい。
リサが警官と話す際、ハンドバックに有ったラースの妻の結婚指輪をジェフに見えるよう窓に示した。ラースはそのことに気づき、窓の方向に目を向け不審さを感じた。ジェフはドイルに証拠を手に入れたと通報する。しかし、リサは不法侵入として警官に逮捕され連行される。
誰も居ないジェフの部屋にラースが忍びこんできた。身動きのできないジェフはフラッシュを焚いて、目くらましを図るがそれだけしかできない。ラースは「何故、あの女は自ら捕まった。何が望みだ。指輪を返せ」とジェフに襲いかかり、窓から落とそうと迫った。必死で窓際に捉まるジェフ。そこへドイルや警官が駆け付けた。堪えられずにジェフは落下する。しかし、下で警官2人が受け止めてくれたが、右足も骨折する。
ジェフは救急搬送され再度手術し退院。今度は両足にギブスを嵌めることとなる。しばらくは外出できないが、今度は窓から近所を眺めまわすことは止めた。
感想など
自宅の窓から周辺の裏窓が見えて、様々な隣人を俯瞰する。隣人のプライバシーの断片がサイレント映画のように見え、話声は聞こえない距離である。セールスマンの男の不審な行動、包丁や鋸、大きなトランク、男の女房が消えた。そこから空想力が働き、殺人事件と死体をトランクに詰めどこかへ送ったという犯罪を主人公は連想するというもの。
友人の分署長は、私的に相談を受け捜査をするが、犯罪の臭いはなく妄想ではないかと言い切る。しかし、恋人や看護婦の女性の勘が働く。ハンドバックや結婚指輪を旅行に持っていかないのはおかしいというのだ。男を外におびき出した隙に不法侵入した恋人が見事、証拠の指輪を見付ける。だが、男は主人公の存在に気づき、主人公を襲う。間一髪、警官がそれを救うというサススペンスが、巧みに構成され実に見事である。
病気やケガで自分の行動を制限されたとき、空想力や妄想が過敏になるのだろうか。カメラマンは、防犯カメラのようになり、更に推理と空想を描き執着する。見えた部分と見えない部分を推理で繋ぎあわせ一つの仮定を導き出す。その主人公の空想力を否定するのが、友人の警察署長の実証調査で、対立軸として出てくる。アパート管理人と住人の証言。郵便箱にあった妻からの「到着した具合がいい」というハガキの存在は、主人公の妄想説を裏付ける。しかし、主人公は、さらなる疑問を感じて自説を曲げない。
事件解決の決め手は、女性達の女性心理であった。女性はハンドバックに宝石は入れない。また、旅行に行くのに結婚指輪を置いては行かないという特有の心理だ。それを見事に恋人の勇気と機転が証明したのだ。サスペンスに富んだラストの展開が見事である。主人公は、骨折が治りかけたのに更に骨折するという皮肉な巡り合わせと、事件に懲りて、覗き見はやめるというオチも見事だ。
観客をはらはらドキドキさせ、最後に「なるほど」と言わせるのが、ヒッチコックサスペンスの真骨頂である。次から次へと新しい工夫と技術を凝らし、徹底的な娯楽作品に仕上げてくれる。そこには人生とか、社会問題とか、思想的な主張には直接触れず、奇抜なのに本当みたいな面白さを職人技で作っている。
最近は防犯カメラの設置で犯罪捜査がやり易くなっている。民宿で消えた女性の行方が、借りていた外国人の出入りを防犯カメラが捉え、トランクで切断した死体を運び出していたことが分かった。駅構内での殺傷事件などは、防犯カメラによって公開され、犯人が自首して出るケースも頻繁にある。そんな昨今の時代を予感させるような映画でもある。
GALLERY

タイトル ジェフは骨折で車いす暮らし


ジェフは周囲の裏窓に見える他人を眺める 恋人リサは結婚を望むがジェフはその気がない


不審な男がいたので望遠レンズで見る ラースは肉きり包丁や鋸を持ち妻の姿がない


リサは止めさせようとするが聞かない ラースは大きな荷物を業者に頼んだ


友人ドイル警察署長は妄想だと言う 中庭で子犬が殺される

ラースは妻のバックを持っており不審に思える おびき出す手紙を渡す


リサはラース宅に忍び込む ジェフはリサの行動に驚き110番通報する


ラースは戻りリサを捕まえる 警察が来たので不法侵入で引き渡す


リサはバックからラースの妻の指輪を発見していた 指輪を盗られ外の不審に気づくラース


ジェフはドイルに連絡する ジェフの部屋にラースが入ってきた

警官が到着しジェフの部屋へ ジェフは窓からラースに突き落とされそうになる


下で警官が受け止めてくれた 両足を骨折し歩けない