「先生、増田君のお母さんは、ほんとに病気じゃないんですか?」

                 (金魚の水槽の清掃をさぼった生徒の言い訳を嘘だと決めつけたため他の生徒が質問した)

       (「蛇イチゴ」から倫子先生の教え子の質問 )

あらすじ

郊外の住宅地に住む明智家。長女倫子(つみきみほ)は小学校の教師。父芳郎(平泉成) 昔気質の技術者で、会社が機械化され解雇されている。しかし、家族にはプライドがあってそのことを隠している。祖父京蔵(笑福亭松之助)は認知症で行動が普通でない。母章子(大谷直子)は、家事と義父京蔵の介護に専念し円形脱毛症になるほど苦労している。もう一人の家族長男周治(宮迫博之)は、10年前に家出して音信不通で、葬式の香典泥棒などやっている小悪党だった


倫子は学校の同僚である鎌田(手塚とおる)と結婚を前提で付き合い、自分の家族に会ってもらう手はずになっている。その夜、鎌田は両親と祖父に会うため家に来た。認知症の祖父にも会い、芳郎は会社が忙しいと噓をつき、章子も介護に生き甲斐があるなど体裁を繕いみんなが談笑したため鎌田は「君の家はフランクで平凡でいい」とうらやむ。


そんな中、とうとう祖父京蔵は亡くなり葬儀場で葬式を執り行うこととなった。倫子がトイレに立った時、トイレで偶然、礼服姿の周治と出会った。周治は祖父の葬儀とは知らず、香典泥棒で居たのだったが、同級生から聞いてここに来たと噓を言う。やがて告別式が終わり火葬場に行こうとするとき、芳郎の所へ借金の取り立て屋が来て「こいつは会社をクビになっていて借金まみれだ。返してもらおう」と家族や参列者の前でどなり立てたため、その場は騒然となる。その場に周治が出て来て他人の弁護士の名刺を出し、取立人に対し「身内に請求を強いるのは法違反だ告訴する」と脅かしたため、その場はなんとか治まる


芳郎の失業と借金を知った章子は裏切られたとガックリする。家に帰ると早速、周治の言ったことが出鱈目だと分かり、借金取り立て屋が再びやって来た。警察を呼んでと言う倫子にもっと大ごとになると周治は、泥棒した金の120万円をポケットから取り出し、とりあえず帰って貰おうと芳郎に渡す。芳郎は外に出て話をつけに行く。章子はなにもかもパーだと嘆くことしきり。


電話がかかり、倫子は喫茶店で鎌田と会った。鎌田は弁護士がいてよかったと言う。倫子は「実はあれは兄貴なの。全部出鱈目」と告げる。鎌田は「分からなくなった。君の家の安らぎは嘘だったんだ」と暗にもうおしまいのような困惑顔になっている。鎌田は先に帰り、倫子はしばらくいたが、電車はなくなり、タクシーで家に向かう。タクシーのラジオで、香典泥棒事件について放送していた。


家では、周治が芳郎の借金がいくらあるのか書類を出させた。世の中の悪事に比べたら大したことはないと周治は冷静だ。「これだと破産だね」と軽く言う。「財産と家は全部持って行かれる。だが、父さんのものじゃないとすればいい。身内のものにすればいい」と周治は助言する。倫子が帰宅したので芳郎はその話をする。倫子は「そのまま信じるの」と疑い「周治は持って逃げる気よ」と懐疑的だ。そんな倫子に母は「倫ちゃんはいつも正しいの。でも息が詰まりそう」と嘆く。


風呂上がりの周治に倫子は子供の頃の思い出話をした。「昔、小学校の裏で蛇イチゴを見付けて場所を教えてくれたけど、あの場所にはなかったの。嘘を教えたでしょ」と聞く。周治は「嘘ではない。信じないなら今から案内する」と言い出した。その夜、周治は倫子を裏山に連れて行く。川を渡った向こう岸の岩の陰だと言って周治は渡ったが、倫子は怖くて渡れなかった。渡れないことを承知の上、噓を言っているものと感じた倫子は、そのまま一人で帰ることにした。


山の中を歩きながら倫子は、携帯電話で「最近起きている香典泥棒の犯人が裏山にいるので捕まえてほしい」と警察に通報した。そして倫子は家に帰らず一晩中河べりを彷徨った。
その後、朝日が昇って帰宅し、自分の部屋に入ると机の上に蛇イチゴが生った枝が沢山置かれていたのだった


感想など

うーん。この映画は何を言いたかったのだろう。家族の崩壊の辛さ。長女の潔癖性と他の家族の確執。妹と小悪党の兄の心の隔たり。正しい事の中に存在する不可解さ。嘘の中にある真実とは。そんな嫌らしいものばかりが混とんとしていて、それは一体なんだと考えさせてはくれるしかし、それに対する良し悪しやどうすればいいかなどにはなにもふれていない。


認知症介護や息子の家出など問題を抱えながらも一見、平凡で平穏な 家族だったが、祖父の葬儀の際、父親が失業しており、たくさんの借金を抱えていたことが、取り立て屋によって暴露される。その場に家出していた香典泥棒の息子が現れて、明智家の膿が一挙に噴出する。


生真面目でプライドが高い父親だったが失業を隠して給与を借金していたようだ。長女は真面目でウソには厳しく白黒をはっきりさせる性格で生徒にも厳しい小学校教師だ。母の章子は、認知症の義父の介護と家事に専念しているが円形脱毛症になるほど我慢に我慢を重ねていた。失業と借金がバレた父親は、途端に気弱で頼りにならない人間に豹変する。また、母親も愚痴だらけで、家出していた小悪党の息子を頼りにしてしまうのだ。


長女は同僚の教師と結婚間際で、お相手の男性を自宅に呼び家族に会わせていた。男性は認知症の祖父がいても気安い明智家を気に入っていた。しかし、祖父の葬儀で父親の醜態を見たり、家出の兄がいて出鱈目なお調子者だと知ると面喰い、引いてしまう。そんな倫子は、家出していた兄に対する不信感は、今でも拭えていない。


生真面目で気難しかった父親が、実は会社をクビになり、借金まみれだったことがばれると一転して、家族から蔑みの対象になる。家出した悪党の兄が一転、両親に頼られることになった。しかし、長女は兄を頭から信用していない。子供の頃、騙された蛇イチゴの採取場所の嘘を思い出し、兄が裏山に案内すると言い出したことに便乗して、兄を警察に捕まえさせるのだった。頭っから噓だと思っていた兄が以外にも本当のことを言っていたと分かったのは、その夜に採集した蛇イチゴが家に置かれていたためだった。


それは悪党の兄が妹に対して見せた誠意と反省なのか。悪党な兄がせめてもの妹に対する優しさの表現なのか。盗人にある三分の理なのか。その辺は、ぼやかしてある。この監督は、3年後に「ゆれる」という作品を作っています。そこでも、記憶の曖昧さ、事実の不確さ、真実とはなにか、本音と建て前、兄弟の絆など曖昧模糊とした人間心理を描いてるところが特色と言える。人間には不可解な面はたしかにある。不条理もある。この映画にはそんなブラック・コメディ的な面白さはある。しかし、それならどうすりゃいいかが問題になるのだ。


GALLERY
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タイトル                               明智家の朝
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京蔵は認知症で章子が介護していた            芳郎は会社をクビになり借金しているイメージ 5 イメージ 6
倫子は教師で生徒には厳しい                 倫子の恋人は同僚教師で家族を紹介するイメージ 7 イメージ 8
10年前家出した長男周治は、香典泥棒をしていた    芳郎は、家族に失業中なのを隠していたイメージ 9 イメージ 10
章子は円形脱毛症になっている               京蔵は死に葬儀が行われたイメージ 11 イメージ 12
葬儀場で周治と倫子は偶然出会う             借金取りが芳郎を脅しに来てすべてをバラすイメージ 13 イメージ 14
周治がその場を嘘で納め自宅に来た           自宅に借金取りがまた押し寄せてくるイメージ 15 イメージ 16
倫子の家庭状況を知り、恋人は引いてしまう       周治は芳郎の借金の整理を助言するイメージ 17 イメージ 18
恋人と別れ倫子は家に戻る                 破産宣告の前に財産の名義を変えると芳郎は言うイメージ 19 イメージ 20
周治を信用しない倫子は蛇イチゴを採った場所に案内させる
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ここだという周治を残して立ち去る倫子          香典泥棒が裏山にいると警察へ通報する倫子イメージ 23 イメージ 24
夜が明けて家に帰ると倫子の机に             周治が採ってきた蛇イチゴが置かれていた