別れはつらい でもいずれ 
               時が解決してくれるわ。
                   時の経つのに任せるのよ。
            (「シェルブールの雨傘」エムリー夫人の歌)
あらすじ
シェルブールの雨傘店の娘ジェヌビエーブ(カトリーヌ・ドヌーブ)は、17歳。近所の自動車整備工場で働く、ギイ(ニーノ・カステルヌオーボ)は20歳で、2人は恋仲。
この国の男子は、2年間の兵役義務があり、ギイに召集令状がきたため当分2人は会えなくなる。そのため愛の証を得るため2人は一夜を過ごし、汽車で出立するギイをジェヌビエーフは哀しく見送る。
雨傘店は、ジェヌビエーフの母で未亡人のエムリー夫人(アンヌ・ヴェルノン)が娘と共に経営していたが、最近は不況で税金の差し押さえを受け苦境になった。
夫人は、自分の宝石類を処分して資金を捻出しようとしたが足りない。そのとき宝石商のカサール(マルク・ミシェル)が、ジェヌビエーフの美しさに魅せられて、高額で買い取り援助することになる。
カサールは、そのうちジェヌビエーフに結婚を申し込む。
そんななかで、ジェヌビエーフはギイのこどもを宿していたにもかかわらず、離れていたギイとの連絡も途絶えがちになり、愛が薄れてゆくようになる。
母親の強い勧めと、こどものことも承知の上で結婚を望むかサールの熱意に動かされ、ジェヌビエーフはついに結婚を承諾し、結婚式を挙げてしまう
そのうち2年の兵役を終えた、ギイはシェルブールに帰還する。ところが雨傘店は人手に渡っており、ジェヌビエーフはいなくなっていた。
ギイの心は荒れて、自動車工場もくびになってしまう。また、ギイの育ての親も死んでしまい、ひとりとなったギイは、育ての親のひとり娘マドレーヌ(エレン・ファルナー)と結婚する。
ギイは育ての親の遺産で、ガソリンスタンドを買収して経営者となる。
数年後、ギイとマドレーヌには、子どもも誕生し、幸せな日々を送っていた。ある日スタンドに過っての恋人ジェヌビエーフが、給油のため立寄る。
ジェヌビエーフは再会して車の中にいる子どもを指差し、「あなたに似ているわ」と言うが、ギイは見向きもせず、さりげなく別れる。
ギイは現在幸せであり、ジェヌビエーフも幸せに日々を送っていた。
 
感想など
1 人生は思い通りにならなくても、幸せになれるのだ。結果よければすべて良しとい う内容に映画でした。でも、ちょっと女性の心変わりが気にかかりました。
 
2 エムリー夫人は、さすが年期の入ったおばさんという感じでした。打算もあったで しょうが、娘の将来を見抜いていたようです。人生経験に薀蓄ありです
 ギイも結局は、幸せを掴んでいました。
 
3 この映画は、会話がすべて歌でした。現実にはあり得ないことですが、そこが映  画の面白さですね。もし、こんな現実があれば、世の中はいつも平和かもしれませ んね。
 
4 人の情感を表現する音楽は、映画の奥行きを広げています。ミュージカル映画  は、ドラマに音楽や歌、ダンスなどの魅力が加わって、その相乗効果が楽しめま  す。「シェルブールの雨傘」には、ダンスはありませんが、会話がすべて歌になって いて、演技もマッチしていて不自然さがありませんでした。
 「口パク」(吹き替え)らしいのですが、よくできていました。
 
5 この映画の色彩感覚が、素晴らしかったと思います。出だしの石畳のこげ茶色の 上で、さまざまな雨傘の色、通行人の衣装の色が、行き交いそれが、ダンスのよう でした。また、街中の建物の色、壁の色の多彩さ、屋内の壁、カーテン、装飾品、 登場人物の衣装など鮮やかに表され、動く絵本のようでした。
 
6 物語の内容は、17歳と20歳の恋愛ですので、ヤングアダルト向きのおとぎ話でし たが、主人公の母親の言う「時はすべて解決する」という忠告どおりの結末でし   た。
 
7 主人公達の別れはつらく悲しいものでしたが、結末はハッピーでした。テーマ音楽 は、もの哀しいメロディでしたが、美しく結末を暖かいものにしていたと思います。
 
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       石畳と雨傘の対比の美しさ                    ギイとジュヌビエーフイメージ 3  イメージ 4
          エムリー夫人の忠告                       ギイとの別れイメージ 5   イメージ 6
          カサールとの結婚                     ギイと家族の幸せな暮らし