
今まで歩くのは好きでも、走るのは嫌いなたちだったので、かれこれ何十年も走ったことがなかったのですが、いざ走ってみると、まったく息も続かず、足上がらずで、二百メーターほどが限界でした。
で、毎日少しづつ距離を増やしながら、二週間ほど経った近頃、ようやく歩くのとかわらない遅さながら、四、五キロほど走れるようになりました。
走ることを嫌ってた私めが今さら突然どうしてかと言いますと、そのきっかけは以前、僕が四苦八苦しながら富士山を登っていると、軽装、短パン姿でカモシカのようにスイスイと山頂へと駆け上がって行かれた方がおられました。それを見て「こりゃ超人だな」といたく衝撃を受けたのでした。
で、そんなカモシカ超人のようになりたいか、いえいえ、そんな大それた気持ちは毛頭ないのですが、それに少なからず感化されてしまった馬鹿な我輩は、山林の鬱蒼と繁るケモノ道を少し走ってみたのです。
実際たいして速くもないのに、これは何という疾走感だろうか。
うねうねと曲がる細い道に、森の木々の流れる視覚が異様な速い疾走感を生んでいるのです。
まるで「追って」から逃がれんとする抜け忍、あるいは獲物をもとめて駆け巡る狩猟獣か、そんなにでも変げしたかのような体感が得られます。
この疾走感は道が細い茂みほど効果があります。
遥か遠い昔、間違いなくあったであろう完全に忘却された感覚だったに違いありません。
そんな快感と妄想をたのしみたいがために、ジョギングという苦行にハマりつつあります。


