
図書館で新書でもないのに、ページを開けると、誰も読んだ形跡が見られないほど綺麗な状態の本が並んでいる。
「日本の原爆記録」
原爆という言葉には人を寄せつけない力があるらしい。
二十冊の全集から、福田須磨子さん(1922~1974年)の
『われなお生きてあり』(1968年)
1945年8月9日の朝、長崎
彼女は勤め先の学校を休もうとするが、母親に諭され渋々、学校へ行く。
学校内にいた彼女は、ほぼ無傷でたすかる。
山へ避難するなかで原爆によって《人間の姿を失った化け物の行列》を目にする。
家にいた親たちは焼け跡から白骨として見つかる。
預けていた財産は親戚に奪われる。
ボランティア看護婦、屋台の店番、闇ブローカー、飲み屋、工芸品作り、そして詩人と流転し、放射能による奇怪な病に冒されながらも、
「われなお生きてあり」と題されたように、もがき苦しむ不幸のどん底で、力強く生きるひとりの女性の矜持が凛として輝く。
ちなみにこの作品は優れた女流作家に贈られる田村俊子賞を受賞している。

