今日の東京は真夏日でとても暑い一日でした
真夏日の夕暮れ時って、日中の焼けるような暑さを乗り越えたあとの特別な美しさがあって、好きなのです
特に、夏至からお盆にかけての夕暮れ時には、夕焼けに特別な力を感じて、うっとりと見入ってしまいます
暑さの話で思い出すのが、20代後半で行ったエジプト、アブシンベル神殿行きの話です。
今考えると、若いからできたことではありますが、いくつかの偶然が重なっていたのだなと思うことがあり、振り返って書いてみたいと思います。
2009年の話になるのですが、当時西欧に住んでおりまして、夏休み(と言っても9月)に日本人の友人夫妻と3人で、ハルガダ(紅海)にスキューバダイビングに行こうという話になりました。
その際、どういう経緯だったかは忘れましたが、アブ・シンベル神殿にも行こうという話になりました。ハルガダからアブ・シンベルへは800キロ弱の距離があって、道も当時は砂漠の真ん中の一本道で高速のような走りやすい道ではなかったので、カイロやルクソールから行くのならともかく、普通はこういう旅程は組まないだろう、ということを承知の上で旅程を組んでいました。
そして、友人の旦那さんいわく、当時のエジプトは観光客のタクシーは、襲撃にあいやすいので、ローカルバスで移動しよう、という話になりました。
ちなみに、この旦那さん、アブ・シンベルにすでに2回行っていて、この地にご縁のありそうな方です
さて、いざ旅行が始まり、まずはハルガダの空港から、ハルガダ市内にあるバス停に向かい、アスワンハイダム行きのバス停を探しました。アブ・シンベル神殿観光の拠点となる街はアスワンなので、まずはアスワンに移動します。
旅行ガイドブックには、ハルガダのバス停からアスワンへは、一日1便程度のバスあり、時刻表は現地で要確認、みたいなことが書いてあったと記憶しています。
しかし、いざハルガダのバス停のオジサマ方にお聞きすると(当時女性が働いている姿はほとんど見かけず、男性ばかりでした)、バスは、「今日来るかもしれないし、一週間後かもしれない、道路事情による」といいます
バス停では、オジサマ型がオセロのようなチェスのようなもので遊びながら、お茶を飲んで、くつろいでいます。この方々も、行き先はいろいろですが、到着時間の読めないバスをまっているようでした。
そんな予定読めないの無理、と心のなかで思いましたが、友人の旦那さんが、とりあえず待ってみようというので、バス停で待ちました。バス停のオジサマ方も、まあお茶でもどうぞ、とご親切にも輪にいれてくださり、お茶を頂いて、他愛もないお話をしながら、いつ来るかわからないバスを待っていました。
お茶をしながら、と言っても、冷房のない外の待合ベンチで待っているので、今でしたら体力が持ったかわかりません
一日目は、バスが来ませんでした。ハルガダで一泊。
次の日もバス停に朝イチから移動し、バスを待ちます。昨日いたオジサマたちが、またお茶をどうぞ、と。
午前中、バスは来ません。オジサマたちも、来ないねえ、まあ気長に待ちなさい、と。
そうこうしているうちに、もう待つことなどどうでも良くなってきた頃に、確か夕方ごろだったと思います。
バスが来ました
バス停のオジサマ方のグループに完全に溶け込ませて頂いていたので、若干別れが寂しくなりながらもバスに乗った記憶があります。
さて、ここまでの話で、もはやエジプト時間を完全に忘れてしまった私は、よく待ったものだなぁと思ったのですが、この後にも忍耐時間は続いていたのでした。
まず、バスに冷房がないのです。窓を開けると、砂埃が入ってくるので、基本現地の人は窓を締めたり、布で顔を覆っています。
そして、皆汗だくなので、汗の匂いがこもっています。ローカルの方々は、半袖短パンという装いではなく、長い布の装いの方も多く、布に染み込んだ匂いが強烈だった記憶があります。
そして、渋滞。砂漠の一本道なので、故障車などがあるとそれで流れが滞ってしまう。
なんだかんだで、800キロ弱の距離を16時間かけて、ようやくアスワンに到着しました座席の乗り心地も、バネが壊れたような座席だし、タイヤもホッピングするような感じだったし・・・今考えると、若さの為せる技だったと思います。
一方で、今振り返ると、そもそも1週間来ないかもしれないバスが2日目に来たことも奇跡だし、ホテルで寝ている間にバスとすれ違わなかったことも奇跡だし、こんな体調に無茶するような移動方法を取って無事に目的地に到着したことも奇跡だし、満員のバスに非常に大きなスーツケースを持ちこんでローカルバスに乗って、道中何もトラブルが無かったことも奇跡だし、奇跡の積み重ねがあって、守られてアスワンに到着したのだな、と思うのです
そして、現代生活の便利さにどっぷり使っているなか、あえて効率の悪い移動方法を選んだことも、意味があったと思えるのです
ルクソールあたりからの道は、ナイル川を沿うように走っておりました。
陸移動の旅は、その地に残る過去の時間との交錯を感じることがありますが、敢えてゆっくり移動することに意味があったようにも思えるのです。
ちなみに、16時間の乗車中には、トイレがないローカルバスですから、もちろんバス休憩は1、2時間に一度あって、ローカルのスタンドでお水を買ったりサトウキビジュースや黒すぐりのジュースを飲んだのも思い出です。
そして、アスワン、イシス神殿、アブ・シンベル神殿をどうやってか一日で回って、またハルガダに戻って(確かこちらも20時間弱かかった記憶があります・・・)、スキューバダイビングを楽しんで、バカンスから帰国しました。
9月という最も暑い季節にわざわざ、しかし乙女座シーズンに行っているというのも興味深い
非効率で不器用な思い出も、よく見つめ直してみると、気づかなかった宝石の原石と再会するかのよう✨
古い写真ですが、掲載しておきたいと思います。
バスの車窓から見えるナイル川
こちらもナイル川
バスで日没を迎えて(おそらく休憩所で撮った写真)
何を撮ろうとしたか不明ですが、目覚めたらこういう風景だったのだと思います
アスワンに入ると道もきれい

ついにダム到着

そしてアブ・シンベル