薬石の湯呑(糸魚川産) | 弦楽器工房Watanabe・店主のブログ

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先週、上越高田へ墓参に行った翌日、糸魚川の土産店で見つけた薬石器。

薬石はヒスイとともに糸魚川の山で産出する褐色の石。小粒でも高価なヒスイと違い、薬石はお手頃な値段で手に入るのでこちらをアクセサリーとしてお土産に買って帰る人も多いと聞きます。色合いを目で楽しむには少々地味な石ですが、名前から察せられるとおり昔から有効成分があると考えられており、浴槽や飲み物に使用すると水の成分を変えることで知られています。
薬石が癌やその他の病気までを治すという言い伝えには、白菜を食べて百まで生きるに似た迷信あるいは信仰の域を出ない部分も確かにあるでしょう。現在は、医学上断定できない効能を広告で謳うことは禁じられているため、具体的な効能は記載されていませんが、いつもと同じ葉とペットボトルの水で作ったお茶を飲んでみると、口当たりが優しくまろやかになっている。薬効と言えるかはともかく、味に出る以上は薬石の含有成分がお湯に溶け出ているのは間違いないでしょう。水がうまいとか腐らないという評判もあながち嘘ではなさそうです。
外側に名士である相馬御風先生の書が印字されています。
文士の御風さんは石の専門家ではないですが、糸魚川のヒスイ再発見のきっかけを作った人でもあります。昭和13年の夏、古事記に登場する奴奈川姫の伝説を調べていた御風さんは、或る地元有力者に「小滝川にヒスイがあるはずだから探してほしい」と或る地元有力者に話を持ちかけた。早速その人が山手に住む親類の者に探索させたところ、果たして小滝川支流の土倉沢の滝つぼで色の神々しいヒスイが発見されました。薬石はヒスイより以前から採取されている石ですが、石にゆかりのある御風さんの湯呑は、まず糸魚川以外では作られそうにない商品です。
たけの子の
ごとくますぐに
のびのびと
そだたぬものか
人間の子も

御風