このところ、やたら若山氏への批判を書いていてので、若山氏の苦しい立場も考えてみたい。。
 
一般的に、実際の事件の背景には、複雑な要因がある。
それぞれの登場人物のうち、誰かが特別にひどい人とか、特別に悪人だったとか、
逆に、誰かが特別にピュアーで正しい人であったりはしない。
善悪がはっきりしているのは、時代劇の中だけだ。
 
現実の事件では、それぞれの登場人物ごとに、気の毒なる情状酌量の余地がある。
競争の激しいエリート研究者で、STAP事件の登場人物はそれぞれに苦しみながら、不幸にも窮地にはまり込んだまま、事件は迷宮入りしてしまった。
 
若山氏が矛盾した行動をとったと、あれこれと本ブログに書いているのだが、若山氏も、事態を良い方向へと持っていくべき努力をしたであろう。
しかし、それが果たせず、現状の若山氏も、四面楚歌で不実を疑われる身になってしまっている。
 
若山氏が沈黙する態度をつらぬく前に、若山氏のプライドを汚すような出来事があったかもしれないと思う。
たとえば、STAPネーチャー論文発表前に、若山氏が、論文発表を強行せず、再検討すべきと笹井氏に申し出た経緯はあるようだ。
再現性の失敗をアピールしたにもかかわらず、受け入れなかったようだった。
 
若山氏は、再現性が得られない事に加え、マウスの遺伝子異常を強く懸念していたのかもしれない。
何か、彼の実験室で異常が起きていた事に気付いていたのかもしれない。
 
しかし、笹井氏と若山氏の話し合いはうまくいかず、結果、両者が断絶してしまったようだ。
実際に何があったのかは、第三者には不明だが、若山氏がSTAP論文を発表前に捨てた理由には、正当な根拠があったかもしれないのである。
 
若山氏自らが実験した結果を書いた論文であるにもかかわらず、実験者の主張が通らないという事態となれば、実験者は怒るであろう。
メンツを無くしたと感じた若山氏は、私はもう責任をとらないぞ!となってもしまったのかもしれない。
 
実際にできあがった最終論文は、実験を担当した若山氏の意見や修正が入らず、問題多い論文にならざるをえない。実験者の協力が得られない論文は、すぐ反対論者の餌食になるのは当たり前である。
 
主要著者三人の間には、疑惑、誤解、メンツが渦巻いていたようで、人間関係がおかしくなっていたからこそ、STAP事件の悲劇が起きてしまったようだ。
 
論文発表前、3回、CDBのGRASで行われた遺伝子解析の時期は、調査委員会の報告書にかいてある。
この解析結果でわかった”想定できない遺伝子”について、笹井氏がどのような認識をしていたかはわからない。
笹井氏は小保方氏を信じ、STAPの真正を信じていた。
そのため、若山氏の主張を理解しようとしなかったかもしれない。
GRASの解析結果は、今は考慮しなくてよいと頭の中を整理したかもしれない。
 
この、STAP(幹)細胞遺伝子の問題点に関しては、理研の上層部もある程度に把握していたであろうから、その先に起こるかもしれないイベントを、理研上層部は危惧していたであろう。
しかし、マスコミと学会から、これだけ強く反発されるとは予想外だったかもしれない。
GRAS結果を漏らしたアンチSTAP派の作戦勝ちという感じだ。
 
話しを再現実験の計画の頃に戻す。
再現実験を実施することをマスコミに報告した4月7日の相澤・丹羽氏記者発表の様子を須田氏は(ねつ造の科学者)に、次に様に書いている。
須田氏は記者会見の席で、相澤氏に残存検体の遺伝子再調査の必要性をせまっているのである
162頁 青字は引用
 
私は気になっていた残存資料の解析について聞いた。若山氏の解析結果で不自然な結果がでていることもあり、検証実験よりそちらのほうが大事なのではと思っていたからだ。残っている資料を解析する必要性について尋ねると、相澤氏は「STAP現象があるかないかという観点で、今残っているものが答えを与えるとは思っていない」と否定した。
(須田氏)「それはなぜでしょう」
相澤氏「例えば、STAP幹細胞が凍結保存されているが、それを融かしてきて、キメラマウスができたとしても、STAP細胞があったことの証明にはならないんですよ。ある人たちはES細胞がまざった細胞だからそうなるだけでしょうと言う。・・・、STAP幹細胞由来のキメラマウスも残っているが、それを調べても、STAP細胞があったことの証明にはならないから、この検証では調べないと言っている」
 
同席した坪井裕理事が補足した。「残った資料を使ったSTAPの実証についてはどういうことがやれるかは、理研の改革推進本部でも検討していこうと思っている。現時点ではやらないとは決めておらず、何ができるかは検討したい。
引用終わり
 
このやりとりは、三人三様に対照的な見解を述べていて、それぞれ対比させると興味深い。
 
須田氏はこの時点で、GRASに残っている検体の遺伝子解析をすれば、ESねつ造説が確定すると考えている。
残存検体の検査結果を暴露させたいのだ。
本来なら、著者しか知ることのできないGRASの解析結果を、すでに得ていた須田氏だからこそできる質問と言える。
彼女はすでに、GRASの解析情報を得ているであろうから自信たっぷりだ。
この情報は、反STAPの学者たちの誰かが吹き込んだろう。複数であったかもしれない。
マスコミよ、がんばってESねつ造の証拠をつっこめ!と学者たちは発破をかけている。
 
一方、相澤氏もGRASの遺伝子解析に不穏な結果がでているのは知っている様子だ。
だからこそ、残存検体の遺伝子調査はやりたくないとの相澤氏の決意がありそうだ。
相澤氏は、残存検体はすりかわっているかもしれないから、そんなものは調べないと言っているのだろう。

理研の上層部はGRASの解析結果はいじられたリスクを疑っていたと想像できる。
 
これらのやりとりを聞いていた、事務屋の坪井氏は、残存検体からSTAP現象やSTAP細胞の証明ができないか?と言わんばっかりになっている。勘違いしている節があるようにみせかけて、視点をはぐらかしているようにも見える。
坪井氏もGRASの遺伝子解析の“不穏な結果“の情報は持っていると思われる。

いずれにしろ、坪井氏は、実際には何も答えていないのであるが、いかにも誠実に答えているかのようにしゃべる。
これが国会答弁と同じく、事務屋の巧みな答弁ということなのか?と感心する。