米国ピッツバーグ大学とペンシルバニア大学の共同研究において、1979年3月28日に起きたスリーマイル島(TMI)原発事故時に、この場所に居住していた住民32,135人において、1回目は、1979年~1985年に死亡原因の調査研究がなされたが、死亡率の増加は観察されなかった。引き続き、今回は1979~1992年の間の死亡状況が検討された。PMID: 10856029


この間、いろいろな研究方法が変化したため、標準化するために、100を基準値として統計的に計算化された死亡率(SMRs)を用いた(100という数値は、他の地域の死亡率と変わらないことを表す)。調査集団には、喫煙者が34%含まれ、原発施設に勤務していた人の割合は、男性6.7%、女性3.0%であった。事故時は、推定量04mSv以上を5032名(15%)、325名が推定1mSvに暴露された。


この地域のすべての原因による死亡は、男性で1934/15539人、女性は1925/15707人であり、死亡率(SMRs)は、男性109、女性118と高くなった。推定の放射線量と全死亡との関連は、年齢で補正すると、0.08mSv未満暴露群で、男性122、女性142と高く、推定放射線量0.35mSv以上暴露群の死亡率(SMRs)は、男性105、女性123であった。女性では、推定暴露放射線量の多いグループと、低いグループで、死亡率(SMRs)が有意に高く、その結果、放射線量との死亡率とに線形の相関関係がみられなかった。


死亡原因として、心疾患が死亡の43.3%を占めた。心疾患に限定した死亡率は、男性113、女性130であった。しかし、住民背景や放射線量を考慮すると事故との有意ある関連は無かった。ガンによる死亡率は、他の近隣住民と比較して差が無かった。(男性のがん死亡率 100; 女性のがん死亡率 101)。リンパ球性及び血液関連のがんは、男性で高く115、女性でも108で、やや高い傾向はあったが、有意でなかった。


事故時に放出されたガンマ線量と、女性の乳がんとの関係に線形相関の傾向があった(p = 0.02)。推定暴露量0.08mSv未満の群の女性は、乳がんが88であり、0.35mSv以上群では、119であったが、この増加が放射線被曝に関連するとの確証は得られなかった。


まとめると、この研究の時点では、放射線の暴露と、死亡が関係するとのデータは得られなかった。今後も、注意深く、観察が必要である。 Environ Health Perspect. 2000 Dec;108(12):A546-9.