本日も、昨日に引き続き、放射線と発がんのデータの紹介をします。


今回は、米国スリーマイル島の放射能漏れ事故後の甲状腺がんについてのデータです。米国において、がんの発症は、地域ごとに集計されているので、そうしたデータを利用しての結果です。


スリーマイル島Iにおける甲状腺がんの増加について
1979の3月28日にスリーマイル島の原発事故が起きました。その後の甲状腺がんの発生状況における疫学研究です。超過死亡・超過発症というのは、他の地域に居住する人たちとくらべて、この地域の人々に限定した場合、どの位にがん発症による死亡、あるいは発症の増加があったのかをしめす数値です。論文サマリのみのデータによるので、細かい調査方法はわかりません。


事故時、周囲5マイルには、32,135 の人がいました。この郡に居住する人々では、がん死の超過増加はありませんでしたが、長期の影響について、1985年から2002年まで、18年にわたり、甲状腺がんについての超過発症の調査がなされました。


スリーマイル島付近のDauphin, York, Lancaster の3郡が、甲状腺がんの調査の対象でした(Dauphin郡はスリーマイル島がある地域)。1985年の調査開始時に、新たな甲状腺がんは、それぞれの郡(Dauphin, York, Lancaster).で11 人発見されました。 2002年までに, Dauphin郡29 人, Lancaster郡, 81人 、York County郡 69 人のがんが発症しました。同じ時期の米国の平均の甲状腺がんの発症状況と比較して、Dauphin郡では、がんの発症は上昇しませんでした。York 郡では、1995年 から 2002年の間の1年間、高い超過のがん発症があったと見なされました。Lancaster 郡では、調査年間すべてで、がんの発症は上昇したと見なされました。一番多い年は、50% の超過発症であると計算されました。


まとめ
スリーマイル島があったDauphin郡では、がんの超過発症はありませんでした。Lancaster 郡では、有意差をもって1995年から毎年甲状腺がんが増加しました。
PMID: 18300710 Laryngoscope. 2008 Apr;118(4):618-28.
他の論文ですが、住民が浴びた放射線量は、5マイル圏内で10日間で、0.09-0.25ミリシーベルトという推定の数値がありました。ウキペディアによると、0.01-1ミリシーベルトと書いてありました。