今回、日本の放射能汚染については、御用学者を信頼してはいけないとか、政府はうそをついているとかの議論がありますが、私はそんなことはないと思います。もし、私に言わせてもらえば、政治家は、「私は専門家ではない。そこはわからない」と言ってほしいですね。


そして、複数の専門家たちが議論するテレビ討論会をさせて、もっといろいろ問題点を掘り下げて欲しいです。バライティ問題で、皆が勝手にしゃべる、あの乗りです。そうした議論を聞きながら、それぞれ一般の人が、自らはどう行動するかを考えるべきでしょう。母親の中には、「しかたないですね。私は現時点では問題ないと思います」などを含め、自分の考えを言ってほしいです。誰かが危険と言えば、危険と振り回されるようでは、情報の世の中を生きているのに、もったいない気がします。


昨日の東京都のコメントも行き過ぎだと思います。はからずして、医療健康政策を決める立場の人に、放射線や安全基準を知る人がいない現状を、露呈したのではないでしょうか?東京都庁は、大声で数の多い職種が独断的に言い出したのか?裏ではどのような駆け引きがあったのでしょうか?見方を変えれば、専門家を政策に参加させていないと言うことが言えます。テレビの御用学者も、彼らはああした言い方が精いっぱいできることではないでしょうか?危険のリスクの度合いを理解できない人には、根拠なくノイローゼになってしまうのです。


それで、落ち着くためにも、もっとひどかった過去の事例を勉強しましょう。


チェルノブイリ原発事故は、今よりもっと深刻な放射能事故でした。論文も多数でています。ベラルス研究と呼ばれる研究成果を示した論文には、総472人の若年甲状腺がんの患者の評価が書かれています。JCEM1997;82:3563


チェルノブイリの事故は、1986年4月26日に起こりました。チェルノブイリがあったゴメルという土地の汚染(放射性ヨード131)は、原発付近が1平方メートル当たり37000キロベクレル以上(キロです。1000倍ですね)、ロシアに接するMogilev、Grodno と呼ばれる地域は、1平方メートル当たり5000-20000キロベクレル、ポーランドに接するブレストでは400-5000キロベクレルという数値です。そして、21歳以下の若年者を中心に、事故の後、甲状腺がんが増加しました。この地域の甲状腺がんの数は、ゴメル245人(51.9%)、ブレスト108人(22.2%)、ミンスク68人(12.3%)でした。この地域は、年間8人位の患者が発症していたようですが、1990年31名、1992年66名と増加傾向となり、ピークは、1993年93名、1994年96名、1995年には90名だそうです。事故の時に、5歳未満だった子どもの発症が多い(63%)とのことです。女性に多く、男女比は、1:2.5です。


別の論文には、事故後すぐ被曝した人の甲状腺放射線量を測定し、取り込まれたと推定される線量と、がん発症の関係を追求したものもあります。そうしたものを見ても、被爆時の甲状腺取り込みベクレルが上がるほど、がんの発症率が高くなる事が示されています。つまり、放射線で今後、問題になるのは、若年者の甲状腺がんです。しかし、今は、そうした問題量が流出しているわけではありません。


今は大丈夫と言ってあげると、おかあさんたちは元気になります。だから、今は、皆、悟りの境地で、今後の経過をみていきましょう。