放射能漏れで、皆、混乱しています。でも、今のところは、なんとか、落ち着く方向へ向かっているようです。テレビでコメントする専門家たる人たちの評価は、それぞれ若干、ばらついていることに、ご注目ください。


白血球が減少するなどは、重度な障害で、普通の人がそこまで被ばくしてしまうことは、まず、ありません。今後、さらなる放射能漏れが起きない限り、今、心配しなくても良いと思います。世界も、日本の事故は、このまま終息すると読んでおり、だから円高、株価も回復するのでしょう。


空気中に普段より濃度の高い放射能が漏れていて、いろいろなものにも汚染が進んでいます。人及び物が、微量あるいは少量の放射線に暴露された状態にあります。しかし、微量の暴露が人体に及ぼす影響の評価は、とても難しいと思います。本日のテレビのキャスターが、“直ちに影響を及ぼすわけでない“との言い方は、混乱を招くと言う指摘がありました。確かに、現時点では、”影響は及ぼさない“の表現が良いのかもしれません。放射線の人体への影響などは、ダイナミックに変化するものであり、万人共通に適用できる正しい数値基準はありません。


普段の食品の放射能基準値は、低く設定されているのですから、原発事故で屋根がぶっとんだ状況下、平静時の基準値などもぶっとびます。作業員の被ばく許容量も、平静時より高くして、作業にあたっているわけで、安全だから基準値をあげているのではありません。極めて安全な値、安全な値、ほぼ安全な値、安全をやや超えた値などと、安全基準値をあげているだけです。次第に絶対安全基準値からは遠ざかります。そもそも、人の体に作用する物質で、絶対的安全と保障できる値など無いでしょう。


安全基準値という考え方は、毒物学に適用されている考え方で、第一に、すべての人において絶対安全(と思われる)値を決め、第二に、それよりさらに低めの値を安全基準値値と設定とするのです。


人の健康問題(病気)は、個人差というおおきなばらつきのある領域です。つまり、万人に極めて安全とされた値を超えた時、危険性は個人によって一定ではないのです。今回のこの苦しい事故の経験を通じて、人々の間に、リスクの度合いを評価することの重要性の認識が高まりました。多くの人が放射線と健康との問題、さらに病気の個人差について興味を持つきっかけになったと思います。


健康への影響は、1対1の関係、つまり、あると無いとの関係ではではありません。つまり、放射能漏れの影響がないとか、影響がないとかではないのです。


テレビでコメントする専門家なる人のコメントも、それぞれ、微妙に言い方が異なります。つまり、専門家の評価は一定ではなく、正解は無いのです。専門家同士で評価が定まらないこと、ここは、まだ未知の分野です。ですから、それぞれの人が自身の価値観を軸に、判断するのが良いと思います。専門家の意見が異なるのは、専門家の価値観(バイアス)が入っています。だから、複数の人の意見を参考にすべきですし、自分でいろいろ調べ、考える状況にあるわけです。


放射線に極めて感受性の高い人(弱い人)、抵抗力の高い人(強い人)がいて、同じ危険線量の放射線を浴びた場合でも、影響の出ない人、白血球が一過性に減少する人、しばらく減少が続く人、骨髄抑制が強く起きる人など、白血球問題ひとつとっても、症状は様々です。長期的な影響については、さらに個人差が大きくなります。ですから、微量な量を浴びた場合、今後、体に何か異変が起きても、それが放射線との関連するのかは、誰も証明できません。


専門家なる人たちは、世の中のまだ未解決な問題を研究する人たちですから、その研究者の考えかたというバイアス(偏った考え方)がかかることは避けられません。


放射線から離れますが、専門家のバイアスについて紹介します。例えば、ピルの副作用についての論文を読むと、著者(研究者)によるバイアスを感じます。ピルは外国では、女性の必需品ですから、その副作用に関する研究データは、著者の考え方が反映されます。特に大規模スタディでは、その安全性を強調する書き方となります。ですから、ピルの安全性について、知りたい時は、多くの論文を読んでみる必要があります。個々の論文については、機会があれば、このブログでも紹介していきます。


論文の書きっぷりを見ると、安全であるとのメッセージをつたえたい著者の思いが見通せます。ピルは直腸がんや卵巣がんを減少させる効果があるので、そこを強調しています。ピルを使った女性、使わない女性を追跡調査して、ピル使用者は、数十年後の死亡率が低くなるとのデータをみかけますが、最初に調査に参加した女性たちの年齢構成は、ピル使用者の方が若いのです(だから死亡もすくない!)。


外来性のエストロゲンなどの分解には肝臓が働きますので、肝がんの発症などは、ピル使用者で増えています。ピルを使った女性の方が、全体的ながんの発症には低下するというものの、30歳未満の若年者ではがんの発症が増えていますし、がん死も増えています。若年女性では、何十年も前にピルを服用した加齢j女性より、がんが増えるのは、大事な所見ではないでしょうか?


データや論文を読む際には、著者による意図的なバイアスにふりまわされないよう、注意して読むことが大事と思います。