外国では、うつ病における偽薬比較試験が行われています。うつ病のように、社会環境要因や性格要因が大きい場合は、他の病気の薬剤評価とは異なり、治療効果(再発率)を評価するのは難しいです。
うつ病の治療薬には、SSRI、SNRIなど薬剤投与や、認知行動療法が一緒にとりいれています。認知行動とは、患者自身による病気克服の行動を、医師らの治療者がサポートする方法です。
米国における、うつ病の治療成績の論文です。特に、女性は治療にかかわらず、再発率が高いです。但し、診断基準や治療効果など、日本とは異なりますので、この成績が日本の現状と一致するわけではありません。他の病気でも言えることですが、一般に、外国の方が病気は重いです。

日本では、偽薬比較テストは実施が難しいです。米国でも、同様に難しいようですが、研究者は工夫をして行っているようです。偽薬は短期間にとどめています。この論文では、短期治療の治療薬の内容は、その後の再発に影響を与えていません。治療薬は、ある程度の効果は期待できるにしろ、再発に有意な差がないようです。

デューク大学、ジョンホプキンス大学らの12か所精神疾患医療機関による共同研究です。思春期におけるうつ病を持つ、86人 の男性、110人の女性において、無作為に、4種の短期間治療を割り付けた。そして、2年後、5年後の予後を調べた。治療の4種類とは、①フルオキセチン(SSRIと呼ばれる抗うつ剤)②認知行動療法 ③①+②併用療法 ④偽薬群診断基準は、少なくとも8週間にわたり症状がない場合を、回復と定義し、一旦、回復した後に症状が出た場合を再発と定義した。診断は、確率された質問項目を用いた。

短期治療後、一旦回復した人の割合は、96.4%と、ほとんどの人が回復した。2年目までに病気から回復していた人の割合は、短期治療後の完全回復者で96.2%、一方、部分的回復者では79.1%であった。③群の併用療法群の成績が良かったわけではない。5年後までに、回復した人189 人において、88 (46.6%) 人が再発した。再発は、治療内容とは関係がなかった。短期治療後に完全あるいは一部回復した人では、5年後までに42.9%が再発し、短期治療後に回復しない人では、5年後までに67.6%が再発した(有意差、P = .03). 再発を予測する因子として、性因子が大きく、女性の再発者は57.0% 、一方男性では32.9% であった(有意差、P = .02).Arch Gen Psychiatry. 2010 Nov 1.