『料理店のアルバイト店員がSNSにおふざけ動画をアップし、炎上』

 昨日の夕方のニュース。食材を床にわざと落として、その後調理。ショッキングな映像が繰り返し流れてた。なにそれ。その動画からはなんの創造性も感じなかったし、なにより見ていて気分が悪くなった。全く理解できない。同様な動画は他にもあって、まさかこんなモノが流行っているの?と、疑問に思った。気分が悪いまま、兼ねてから予定に入れてた舞台を見に下北沢へ。

 『みみばしる』はJ-WAVEと松居大悟主宰劇団ゴジゲンが製作した舞台。ラジオのリスナーと共に創作をしてつくりあげたという企画は斬新で、見る前から楽しみにしていた。まさに画期的。

 ストーリーは会社をクビになったOLさんの目線で語られている。新しく得た職場は舞台制作のお手伝い。フィットできない自身の葛藤をラジオが救う。そのラジオ番組の制作現場がある種の問題だった(僕もラジオ番組を担当しているので、そのあたりの空気は実によくわかる)。放送局の立場。本音と建前。リスナーの気持ち、それをとりまく社会人たちの苦悩が音楽と共にテンポよく切り取られていて、すっと心に入って来た。劇中歌はミュージシャンが生演奏。言葉がすっと胸に届く。

 この舞台の核となっているメッセージは、

 『何を発信してゆくか』

 どきりとした。

 発信すること。その意味。

 楽しく、時に笑いながら観ていたこの舞台、そのメッセージを受け取った瞬間から、なんだか背筋がのびた。

 僕らは常に発信している。それが人間。何も僕が音楽人でCDを出したり、番組で喋っているから(実際に今もこうやってブログに書いているしね)だけではない。社会で生きる、というのはすべからく”発信し続ける”ということだと思う。人と人が交差する。それは言葉を持って、文字をもって、繋がる、ということ。その全てが発信。何を言うか。どう切りとるか。その言葉選び、センスが人を作る。同じ景色を観ても、その感想は十人十色。良いところを見つけてそこを伝える人がいる一方で、一部分のマイナス点をピックアップして、ネガティブなことを拡散する人もいる。言葉は人を救う。そして傷つける。人柄とはつまりその人が選んだ表現方法。言葉はその人の全て。例え、本当に思っていないことであっても、口から語られたその言葉は、発信されたメッセージは、その人を表す全てとなる。だから僕らは言葉に責任を持たなくてはいけない。ステージで語る言葉も、作品として発表するメッセージも、友人との会話も、家族との他愛のないやりとりも、その全てに。

 舞台、みみばしる。僕はそんな感想を持ちました。昨日が初日。ここから回を重ね、ツアーに出る、とのことです。チャンスがあれば皆様も是非(これも僕からのメッセージ!)。

 

 

 追伸。

 冒頭のニュースの話。おふざけ動画をアップしたアルバイト諸君。もしかすると一人一人は普通の学生さんだったりするのかな。友達とのやりとりで、誰かに認められたくて、笑いを取りたくて、本当にそれがやりたいわけではなく、ちょっとした悪ふざけで行ったかもしれないね。だけど口から出た瞬間に(この場合はSNSという手軽で恐ろしく広い世界)それが君を表す全てとなる。その動画をアップする前に、この舞台に出会っていればよかったのに。残念です。

 

 

 

J-WAVE30周年×ゴジゲン10周年企画公演

みみばしる

 

https://mimibashiru.com

 

 

上演期間:2/6(水)~2/17(日)

劇場:下北沢 本多劇場

【作・演出】松居大悟

【音楽監督】石崎ひゅーい

【主 演】本仮屋ユイカ

【出 演】※五十音順

市川しんぺー(俳優/劇団「猫のホテル」)、祷キララ(俳優・大学生)、工藤真唯(保育士)、小松有彩(会社員)、
鈴木翔太郎(大学生)、鈴政ゲン(俳優)、タカハシマイ(ミュージシャン/Czecho No Republic )、
玉置玲央(俳優/劇団「柿喰う客」)、仲山賢(高校生)、奈良原大泰(アルバイト)、日高ボブ美(俳優/劇団「□字ック」)、
藤井克彦(楽器屋店員・ブロック塀研究家)、前田航基(俳優・大学生)、三浦俊輔(俳優・大工)、宮平安春(庭師)、
村上航(俳優/劇団「猫のホテル」)、目次立樹(俳優/劇団「ゴジゲン」)、本折最強さとし(俳優/劇団「ゴジゲン」)、
ゆうたろう(モデル・俳優・ショップ店員)