どうもAirBow AP-505 Special(逸品館がTEACのアンプをチューニングしたもの)の音はおかしいのではないか,と思うようになったのは手に入れて一か月ほど経った4月初旬である.PCスピーカーでは比較対象とするアンプがないのでメインシステムのスピーカB&W 802 Diamondを鳴らしてみた(写真1).McIntosh MA9000のプリアンプ出力をAP-505 Specialに入れたわけだが,音像定位がおかしい.センターで聴こえるべきボーカルの音像が両スピーカーの間にぼわっと広がる.それで,JPOPのボーカルがセンターで左右からコーラスなどという部分で分離できず重なって聴こえる.バッハのマタイ受難曲だと女声合唱が左,少年合唱隊が中央なのだがこれも分離できない.ボーカルでなくても両スピーカーの間に定位すべき楽器は全部広がる.

 

写真1.AP-505 SpecialにMA9000のプリアウトを入れる.

 

音像定位は3年前にいいアンプとそうでもないアンプの違いとして見せつけられたところである.

 

 

するとAP-505は本物のHiFiオーディオアンプではないらしい.Specialかどうかは関係ないAP-505の素性だと思われる.といってMcIntoshをもう一台ポンと買えるものではない.下位機種のMA-7200でも百万円する上,重さが34kgあるので一人では移動できないのだ.

 

そこで気になるのはAirbowの上位機種AP-701 Specialである.AP-505 Special 203,000円の2倍の値段418,000円のAP-701 Specialならば音像はちゃんとしているのか?AP-701 Specialを試聴したいが残念ながら逸品館のレンタル機種リストには含まれていない.しかし素のTEAC AP-701ならレンティオが7泊8日11,980円で貸してくれるということで,早速借りてみた.AP-701は税込み定価352,000円だが4月16日現在価格コムの最安値は306,240円である.

 

すると案の定AP-701ならばボーカルが中央に焦点を結び,MA9000のパワー部と近い音像定位を示した.またPCスピーカーを鳴らしてみると(写真2),これまでニアフィールドスピーカー特有の音像表現と思っていたものが実はAP-505 Specialの癖で,AP-701だとちゃんと定位するようになった.AP-505はユーザーレビューの評価も良いし,Hypex社のNCoreというD級アンプモジュールを搭載していることはAP-701と共通なので,出力だけの違いで音質は同様ではないかと何となく思っていたのは世間知らずだった.値段相応という言葉はかなり普遍性がある.

 

写真2.AP-701をPCの隣りに仮設置したところ.

 

ただ,素のAP-701の中高音がドライな音色なのに対してAP-505 Specialの方がつやがある.AirBowの手が入っているからだろうか.というわけでPCスピーカーシステムのアンプは要再検討となった.

 

スピーカーならば,小音量で近くから聴くとか重低音は求めないなどの条件を付ければ金額を押さえることができる.しかしそれに合わせてアンプも節約してはだめらしい.フルレンジの小型スピーカーでもアンプの差はわかるのだ.AP-701 Specialはコストパフォーマンスが良いと誰かがレビューに書いていた.418,000円は安くはないが100万円ださなくてもいいという意味なのだろう.