なぜロシア文学は長い作品ばかりなのか? (R25)
ドストエフスキーの『罪と罰』が上中下巻で1209ページ。同じく『カラマーゾフの兄弟』が、3冊合わせて1962ページ。トルストイ『戦争と平和』なんて、全4巻で実に2800ページだ(いずれも新潮文庫)。…なぜロシアの文学はこうも長いのだろうか?
「ロシアの夜は長いから…というのは冗談にしても、思索好き、議論好きの国民性が影響しているのはあるでしょう。そうした国民性は、長い厳冬期を強いられる風土が育んだものと思われます」
そう語るのは、文芸評論家の永江朗氏だ。つまり室内で過ごす時間が長いため、人々は思考を巡らせ、議論する習慣を強めたという。
「さ
らにいえば、ドストエフスキーもトルストイも、会話が非常に長いのが特徴ですよね。ロシア文学者の故・江川卓さんが生前、ドストエフスキー作品の会話部分
をストップウォッチで測りながら朗読してみたところ、現実の時間進行と小説内の時間進行が合致したそうです。これでは長くなるのも当たり前かと」
ちなみにロシアは他にも、世界に名だたる文豪を多数輩出している。なぜ、ロシア文学はこれほどの勢力になり得たのか?
「こ
れはおそらく、ロシアの後進性と関係があります。宮廷の公式言語が仏語だったことからもわかるように、ロシアの上流階級は西欧文化に憧れとコンプレックス
を抱いていました。だからこそ、より思弁的に文化を進化させようとし、とりわけ文学では哲学的な背景や構造が強固になったのではないでしょうか。また、日
本でよく読まれるようになったのは、厚くて難解そうでも、哲学書よりはわかりやすい点に理由があるのでは」
永江氏いわく、二葉亭四迷や田山花袋といった日本の近代文学も、ロシア文学の影響のもとに始まっているという。日本人がロシア文学を比較的好むのも、そんな経緯があればこそだ。分厚いロシア文学は本棚映えするし、いっちょ気合入れてトライしてみようか!?
(友清 哲)
(R25編集部)
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