注目される災害時多目的船!
2011年の東日本大震災以来取り組んできた災害時多目的船の導入の議論が盛んになっている。その背景にあるのは新型コロナウィス対策としての船舶の有効性だ。医療機能を有する船舶があれば隔離病棟として利用できるからだ。
こうした病院船の注目度とは別に、私は2011年以来、病院船を含む災害時多目的船の導入について調査と議論を積み重ねてきた。とりわけ、2014年に立ち上げた自公議員連盟の「海洋国日本における災害医療の未来を考える議員連盟」においては米国海軍病院船マーシーの東京港入港や東京オリンピック・パラリンピック競技施設の海上からの視察などを実施し多方面から病院船の有効性を検討してきた。そして、議論の深まりを踏まえ超党派議員連盟の結成を模索してきた。
「超党派災害医療船舶利活用推進議員連盟」は、2月27日に設立された。名称にある「船舶利活用」の意味には2013年の政府見解が背景にある。すなわち、新造船には最大350億円、維持・運用費は年間25億円と試算しているのだ。新型コロナウィルスが猛威を振るっても、病院船建造にこれだけの予算をかける必要があるのかと疑問を持つ人も多いだろう。そこで、中古船の活用や民間船の借上げなど、様々な工夫によって災害時に船舶を用いた医療を提供しようということが「船舶利活用」の考え方だ。また、利活用には医療提供だけではなくロジスティックスを含む多目的な利用を含んでいる。
ここで、災害時のどのような場合に船舶が利活用できるのかを考えてみたい。まず、船舶を病院として利活用する場合の一つには、広域災害により病院機能が損なわれている期間に有効だ。この期間は、急性期や亜急性期にとどまらず慢性期に及ぶことも考えるべきだ。
二つ目には、感染症など隔離が必要な患者が発生している時だ。この度のクルーズ船の隔離もこのような使い方と言えるだろう。普段から病院船を活用していれば、政府職員の対応や船内での指揮系統の統一化などが図られ、船内感染の拡大をより防ぐことができただろう。
三つ目には、船舶を広域搬送拠点(SCU)として活用する場合だ。船内で応急処置された患者を船上から陸上の安全地域へ移送したり、患者の容体によっては専門病院への搬送も考えられる。
船舶を病院として利活用する場合には、常時医療行為を行う船舶とするのか、SCUのように搬送拠点として用いるかなど利活用の方法によって専用船にするか借上げにするか異なってくる。このことは、後日にまとめてみたい。
他方、船舶は、被災地周辺に停泊して災害時多目的船としての利用が考えられる。仮設住宅が提供されるまでの避難所生活期間には、入浴サービスや温かい食事の提供やホテルシップとしての利活用が可能だ。こうした活用は、すでに海上自衛隊の輸送艦や国交省による民間フェリーの派遣で実施されている。
さらには、離島や半島の集落が被災した場合には、被災地域が孤立し、地域に避難所が確保できないことがありうる。このように避難所確保が難しい場合には、臨時避難所として利活用が考えられる。
近年、頻発する広域災害に加え新型コロナウィルス対策を契機に、新たな危機対応が政府に求められるようになった。これには船舶が有効であることを超党派災害医療船舶利活用推進議員連盟から発信できるように努力していきたい。