科学的根拠のない海洋保護区は不要!
「国家管轄権外区域の海洋生物多様性(BBNJ:Marine Biological Diversity of Areas beyond National Jurisdiction)の保全及び持続可能な利用」に関する新協定の交渉が今年の9月から始まる。「国家管轄権外区域」とは公海や深海底のことを指す。
公海や深海底の海洋の生物資源の保全や開発は、国連海洋法条約(UNCLOS)と生物多様性条約に基づいて協定の作成の是非について2006年から検討されてきた。そして、2016~2017年には新協定テキスト案の要素について検討され(BBNJ準備委員会)、今年からいよいよ政府間会議(IGC)において新協定のテキストを交渉することになった
BBNJ準備委員会は、新協定テキストの論点を4分野に取りまとめたが結論をださなかった。IGCにおいても同じ4分野を検討することとしている。一つ目は海洋遺伝資源。ここには途上国の遺伝資源を利用した場合にはその利益配分をどうするかということも含まれる。二つ目には海洋保護区を含む区域型管理ツール等の措置。三つ目は環境影響評価で、四つ目は能力構築及び海洋技術移転となっている。
漁業資源の分布する水域や公海を含む海域に広く回遊する魚種には、漁業協定や漁業機関が現に存在する。これらは資源量調査等の科学的根拠に基づいて漁獲量や漁獲水域を決めている。これらとは別に海洋保護区のような区域型管理を新たに設定するというのは理解に苦しむところだ。
IGCの交渉では、UNCLOSの規定と完全に整合的なものであるべきであり、既存の法的文書、枠組み、機関を損なうべきではないことが決められている。これらは当然のことで、既存の枠組みや機関を超越して資源管理を行う必要性が見当たらないばかりか、混乱を招くだけだ。こうした主張は、日本だけでなく、米国や中国なども一致した見解になっている。しかし、一部の急進的なNGOは、海洋保護区の設定など、既存の枠組みや機関などを超越したものを求めている。
これらの議論は当面2020年まで続けられるが危惧することもある。それは、捕鯨とは直接に関係ない国々が加盟して反捕鯨仲良しクラブの様相を呈している国際捕鯨委員会の二の舞になることだ。信頼に足る科学的根拠に基づく冷静な議論によって4分野の検討を進めるべきだろう。