TAC制度に太平洋クロマグロを追加
太平洋クロマグロの資源管理は、我が国が国際社会の中で率先して取り組んでいることだ。具体的には、中西部太平洋マグロ委員会(WCPFC)の国際合意に基づいて30キログラム未満の小型魚の漁獲上限を4,007トンと定めて資源回復に努めてきている。
この内訳は、大中型まき網漁業が2,000トン以下、近海竿釣り漁業は106トン、そして曳き網や定置網等の沿岸漁業は共同管理と全国5ブロックの合計で1,901トン以下となっている。
クロマグロの漁場形成は気まぐれで、待ち網漁の定置漁業では獲れたり獲れなかったりの差が大きいことで知られており、突然に大漁が続くことがあればまったく獲れない年もある。漁業者からすると、大漁になるとうれしい反面、漁獲上限を気にしながらの操業になる。
漁獲量の予測が難しい魚種ではあっても、我が国では行政や漁業団体、漁業者ら協力してクロマグロの漁獲管理に取り組んできた。私も沿岸各地を訪れ、漁業者がクロマグロの漁獲管理がいかに難しいか、そして、それを守るために大変な思いで取り組んでいるかを目の当たりにしてきた。
しかし、残念なことに、一部の県で無承認操業や漁獲量の未報告が明らかになった。これらを合わせても50トン以下なので、これまでの漁獲管理に影響を与えるような漁獲量ではないが、真面目に漁獲管理に取り組んでいる漁業者の努力に水を差すような出来事であった。
水産庁は、これら以外に違反がないか全国調査を行ったところ、全国9県で違反事例が明らかとなり、疑義のあった県には原因究明と再発防止の徹底を求めている。
さらに、水産庁は、「海洋生物資源の保存及び管理に関する法律」に基づくTAC(漁獲可能量)制度にクロマグロを追加することを発表した。政令指定は本年4月、規制適用は2018年1月になる予定だ。今後は、違反があれば3年以下の懲役または200万円以下の罰金が課せられることになる。
我が国の太平洋クロマグロの漁獲管理は、クロマグロ漁業関係国には強いアピールになっており、国際的な資源管理のために沿岸漁業者には資源回復までの期間は辛抱して頑張ってもらいたい。