(213) 「トリニティ・ブラッド ノウ・フェイス」 吉田 直 | Beatha's Bibliothek

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※本の紹介には連番がついています。


もっと早く読書ブログ書くつもりが・・・・(;^_^A 。

今回は、吉田直さんの「トリニティ・ブラッド 

ノウ・フェイス」でございます。

トリニティ・ブラッド―Rage Against the Moons〈3〉ノウ・フェイス (角川.../吉田 直
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これで、Rage Against the Moonsのシリーズも3冊目。

今回出てくるAx派遣執行官は表紙になってる、ノーフェイスこと

ヴァーツラフ・ハヴェル。いかにも聖職者って感じの方です。

主人公のクルースニクことアベル、ダンディライオンこと

ガルシア、プロフェッサーことワーズワース博士、

ソードダンサーことユーグ、ガンスリンガーことトレスも

引き続き出てきます。

もちろん、彼らの上司、カテリーナ枢機卿、その異母弟で

教皇のアレッサンドロ、その後も出てくるようになる

ヒスパニア公子、アントニオ・ボルジアもいます。

あとは、敵キャラで、死の淑女の異名をとるシスター・パウラ。

色んな話が今回も続いていて、新たな仕事も同時進行です。

今回は、2つ目の話の冒頭部分をご紹介しますね。




弾は確かに腹を打ち抜いたはずなのに、黒コートの驀進は

いささかも衰えず、不気味に肉薄してきます。「ウソでしょ!?

6発とも当たったのに!」アベルは声を詰まらせました。

その黒コートだけではなく、トレスに両膝を打ち抜かれた者も、

教授(プロフェッサー)の仕込み杖に肩を砕かれた者も、

確かに倒したはずの6人が6人とも平然と立ち上がり、

何も感じないかのように戦槌を振り回しています。

「これって防弾チョッキか何かですかね、ワーズワース博士?」

「いや、彼らは動死体(ゾンビ)だよ、ナイトロード君・・・。

ほら、これを見たまえ」鋭い足捌きと共に勢いよく跳ね上がった

ステッキが、最も近い黒コートのガスマスクを弾き飛ばし

ました。その下から現れたのは、死人の顔です。「死体に

電気的な処理を施して、戦闘機械に仕立てたらしいね。

以前、設計理論だけは、論文で読んだ事がある。自動化歩兵

とかいうやつだ。まさか本当に作るやつがいるとはねぇ」

「きょ、教授、危ないです」悲鳴のようなアベルの警告にも、

教授の顔色は変わりません。ひょいとステッキを立て、

自動化歩兵の頭部へ先端を向け、グリップを捻りました。

「ああ、まったく嘆かわしいねえ。科学をこんな形で悪用

するなんて、もはや冒涜だよ」ぼやきと共にステッキの

先端から噴出した火炎は、榴弾砲に匹敵する威力を

備えていました。「頭を吹き飛ばしたまえ。彼らはすでに

死人だ。何度死のうと、文句は言わんと思うよ」

「だそうです・・・。聞こえましたか、トレス君?」

「了解(ポジティブ)。卿らも車を離れるな。敵を撃破しても

護衛対象を倒されては意味がない」ボンネットごと撃ち

抜かれたリムジンの中に、2つの人影が見えます。

プラークの街はずれのこんな寂しい河原に、わずか

3人の護衛と共にいたのは、教皇庁で最も高貴な2人、

国務聖省長官カテリーナ・スフォルツァ枢機卿とその異母弟、

教皇アレッサンドロ18世その人です。「・・・それにしても、

お忍びって、そもそも極秘じゃありませんでしたっけ!?

それが、いきなり襲われちゃうだなんて・・・内部情報が

だだ漏れじゃないですか!」「アベル君!上だ!」

教授の警告に、アベルは顔を上げました。午後の太陽を

背に浮かんだ影、それが、跳躍した自動化歩兵だと

悟った時には、死者は硬直した神父の上に、凶器を

振り下ろしています。「伏せたまえ、アベル君!」警告と

ともに、青い光がほとばしりました。魔剣のように閃いた

炎が、死せる兵士の頭を吹き飛ばしました。「た・・・・、

助かりました~、教授!すごいじゃありませんか。

たまには役に立つ物も作るんですねえ」「この程度の

連中など、偉大な科学の前では、過酸化水素水をかけ

過ぎた二酸化マンガンも同然だよ」「お、なんかよく

わかりませんが、こうなったらその調子で、残りの連中も

やっつけちゃって下さい!」「いいだろう。さあ、これが

科学の力だ!む・・・?」「ど、どうしました?」「いかんな。

燃料切れのようだ」「な、なにいっ!?」反撃の手段を

なくしてしまった事は、死者たちにも伝わったようです。

「うわ!襲ってきますよ、教授!なんか、他に偉大な科学の

力はないんですか!?」「ああ、大宇宙の驚異の前では、

人類の科学は無力だよねえ」「さっきと言ってる事違うぅぅ!」

喚いたアベルの頭上を、巨影の群れが次々と舞って行きます。

車に突撃をかけたのです。「トレス君、そっちに敵が」

「了解している」「トレス君、後ろにもです」アベルの警告に

応えて、トレスの右手が動きました。銃口だけを後ろに回して、

いつの間にか後方に忍び寄っていた別の一体を吹き飛ばし

ました。しかし、それが隙となり、旋回した戦槌が、彼の

右肩を打ちました。鮮血のように噴き出した皮下循環剤が

レザーコートを朱く染めていきます。だが、死者の狙いは、

あくまでも車内の2人でした。トレスには見向きもせず、

最後の一体が戦槌を振り上げたのです。直撃を受ければ

中の2人はただでは済みません。「まずい!」教授が叫んだ

時には、戦槌は死神の雄叫びのような声をあげて振り

下ろされています。ぐしゃぐしゃに潰れたリムジンとその中の

2人を、3人の神父たちが幻視しました。まさにその時、

まるで見えない盾にあたったかのように、戦槌が弾け飛び

ました。




冒頭の部分を少しだけ、ご紹介しました。

なぜ、鉄槌は弾け飛んだのでしょうか?

お忍びだったはずなのに、なぜ、敵に情報が

漏れてしまったのでしょうか?

ご興味のある方は、読んでみて下さいね。