第8話 ~それぞれの夜~


事件発生から数時間経っても容疑者は特定されていなかった。警部は明らかに苛立っていた。その日に焼けた太い腕で少し寂しくなりつつある頭をガシガシとかきむしっていた。そこに慌てた様子の警部補が駆け込んできた。


警部補「コドン警部!!分かりました!」

コドン警部「何がぁ!どうしたんだっ?!」

警部補「礼拝堂を調べたところ、盗まれたと思われる物がひとつだけ判明しました!」

コドン警部「何だったんだ!?」

警部補「”許可状”です。犯人は許可状の場所が分からなかったのでしょう。探すのに手間取り、ようやく見つけたところでコローギ氏に目撃され口封じに…。」

コドン警部「…何故”許可状”なんか盗んだんだ?物取りには間違いないだろうが、犯人には何か他の目的がある…。許可状はその目的のために…。はっ!!」

警部補「おぉぉ!!コドン警部!何か分かられたんですね!」

コドン警部「ああ。犯人の目的はまだ分からんが、次の犯行現場は読めた。」

警部補「ど、どこです?」

コドン警部「フーリブ村の礼拝堂だ。」

警部補「フーリブ村…。何故分かるのですか?」

コドン警部「簡単な推理だ。許可状をひとつ奪っても何の役にも立たん。許可状は3つ集めてこそ意味がある。どうやら奴はパンツラ洞窟に入るつもりらしいな。だから、奴は必ず2つめの許可状を狙ってくるはずだ。」

警部補「だから、次はここから近いフーリブ村というわけですね!さすが”名警部コドン”!!」


そしてどこからともなく聞き覚えのあるBGMが流れ出す…。


『苗字はコドモ、それでも大人、その名も名警部コドン!真実はだいたいひとつ!!』


コドン警部「何がぁ!なーに下らんこと言いよるんだ!夜の森は犯人に待ち伏せされる危険がある。日が昇り次第フーリブ村に出発するぞ!!」

警部補「は、はいぃ!!」


ここで、コドン警部を紹介しておこう。


コドモ・コドン:60歳前後 腕利きの名警部 見た目は恐いがほんとは優しいツンデレデカ 口癖「何がぁ!」 アルファベットをラテン語読みする癖有り



一方そのころフーリブ村では…


夕食を堪能した6人はフーリブ村で1番安い宿にチェックインした。その後酒やツマミを買い込んで、宴会を始めようとしていた。


チョンペー「酒♪酒♪やっぱ一発目はビールかな♪」

ハッピー「あ、私も最初はビールで。ていうかみんなビールでいい?」

ケン「俺はビールはいいや。ん~、焼酎で。」

ロック「焼酎はええけど氷とかないでぇ。こうなったら生でええか。」

チン「ガンちゃんまじで?」

チョンペー「きでいけるって!だって今日は酔ったらこんまま寝ていいとばい☆」

ケン「ここにアホがおるよ。まー別にいいけど。」

メイ「そいじゃー、私は梅酒♪さ、乾杯しよ☆」

チョンペー「んなら、乾杯の音頭は今回の旅行の言いだしっぺ、ハッピー姐さんお願いします。」

ハッピー「ええ?普通でいいんでしょ?普通にいくよ?それじゃ…。キャンパーイ☆」

一同「かんぱーい☆」

ハッピー「はーい、みんな罰ゲーム!!!(ニヤリ)」

チン「ん?」

ロック「なんでやねん?」

チョンペー「あ。今もしかしてキャンパイって言ったと?」

ハッピー「そうよ♪」

一同「えぇぇぇぇぇ!!」

ケン「厳しかー。」

メイ「分からんかったー。」

チン「で、罰ゲームは?」

ハッピー「そりゃーねー。ほら、みんな手に持ってるじゃん(笑)」

ロック「にゃるほど。分かりやすい。」

チョンペー「今夜はまじで気抜けん…。」

ハッピー「はい、とりあえず空けようか♪」


ハッピーの満面の笑顔を合図にハッピー以外の5人は最初の1杯目を飲み干した。その後もハッピーの唐突なキャンに5人は翻弄されたが、このキャン&タマルールに慣れてくるとハッピーが飲む機会も増えていった。床に空のビンや缶が転がりだしたころには、6人が完全にできあがっていた。


ロック「ツマミはやっぱスルメやろ。」

チョンペー「たしかにスルメもいいけど、チータラも捨てがたい。」

メイ「どっちも好きー。」

チン「そういえば、ハッピーはいっつもポッキー買うてるね。」

ハッピー「ポッキー好きなんよね。」

ケン「てか、今日もMen'sポッキー…。」

ハッピー「やっぱMen'sポッキーが一番好き☆美味しいよね!」

チョンペー「Men'sポッキー確かに美味しいけど…、その発言ちょっとアレじゃない?(笑)」

チン「ひゃっひゃっひゃっ*よー考えたらせやね☆」

メイ「うん、ちょっといやらしい(笑)」

ハッピー「そうかなー?」

ケン「質問です。ポッキーの中で1番好きなのは?」

ハッピー「Men'sポッキー」

ロック「はぁーはぁーっ*はひっ、ひーっ*」

チョンペー「キター!ガンちゃんのツボ入りました☆」

メイ「てか、ガンちゃん泣いてる!!うけ過ぎだってー(笑)」


いい具合にお酒によい、彼らの笑いのハードルは大分低くなっていた。夜中であるにも関らず、離れであることをいいことに6人はおおいに飲み、笑い、騒いでいた。彼らの宴はまだまだ終わらない。



…第9話に続く。







第7話 ~異変~


スコールはすぐに止んだ。気温は少し下がったが、湿気のせいであまり変化は感じられなかった。早朝からの徒歩での移動により6人の体力はかなり削られていたが、疲労の表情を浮かべるものはひとりもいなかった。洞穴を出てからしばらくして一行はフーリブ村に到着した。


メイ「着いたー☆」

チョンペー「けっこう歩いたねー。」

チン「でもほんまにフーリブ村があるとはねw」

ハッピー「え?どーいうこと?」

ロック「あー、午前中にこの島の村の名前をみんなで予想しよってな。」

ケン「予想のひとつがフーリブ村だったわけよ。」

メイ「すごーい!何で分かったの?!ていうか普通予想とかできないでしょ?」

ハッピー「スクンラトに似てる言葉じゃないし…。ほんと何で分かったと?」

ケン「それはね…」


ケンはスクンラトがトランクスの逆であることに気づき、そこから下着の逆の名前で考えたことを説明した。


メイ「なるほどね。そいじゃー他にどんな予想があったと?」

ロック「それはまーいろいろとやな。」

ハッピー「またどーせ下ネタでしょ。」

チョンペー「姉さん、正解です。」

チン「よーし、それじゃー今からどないしよ?」

ハッピー「まずは宿を探さなきゃ。」

メイ「タマ!」


一瞬6人の時間が止まった。


ハッピー「え、メイちゃん…?」

ケン「どうしたメイちゃん?」

メイ「…いや、今はっちゃんがキャンって言わんかった?」

チョンペー「いや、言っとらんど。」

ハッピー「探さなきゃって言っただけだよ。」

メイ「あ、そうなんだ!聞き間違えちゃったwハハハ…。」

ロック「メイちゃんは言いたかったんやんな?せやろ?(笑)」

メイ「そ、そんなことないって…。」


メイは顔を真っ赤にして恥ずかしがった。このキャン&タマルールが採用されてから、一番集中していたのはメイであった。メイの中に乙女の恥じらいは微塵も無かった。この6人の中ではそんな恥じらいは必要なかったのである。だからこそ他の5人もひいてしまうことなどなく、むしろ自分も集中していこうと気を引き締めていた。メイの”おてつき”に一同は笑っていたが、大事なことを忘れてしまっていた。この中には”究極のS”がいたということを…。


『語尾につけたりもできるわけか…』


ハッピーの目がキラリと輝いたことに気づく者はいなかった。


ハッピーがSの血を熱くたぎらせている頃、スクンラト村は混乱に包まれていた。時は数時間前にさかのぼる。


6人を見送った後、キャシャリンは村唯一の病院に来ていた。


整形外科医「はい。これで肩はキレイにはいりましたよ。」

キャシャリン「あ、ありがとうございました。」

整形外科医「今後とも十分気をつけてくださいね。激しい運動は控えておかないとまた外れちゃいますよ。」

キャシャリン「は、はい。気をつけます。本当にお世話になり…」


バーンッ!!!!


キャシャリン「え???何???」

整形外科医「今の音は?礼拝堂の方から…?」

看護師「先生大変です!!!」

整形外科医「どうした!?何があった?」

看護師「礼拝堂で発砲事件が!!」

整形外科医「なにぃーー!!!まさか!」

キャシャリン「発砲…?この島で…。」


キャシャリンは礼拝堂に走った。そこはすでに騒ぎを聞きつけた村人達でごったがえしていた。礼拝堂の入り口に青ざめた表情のヤスーが座り込んでいた。警察に話を聞かれているようである。


警部「ヤスー巫女様、一体何があったんですか?」

ヤスー「うちにもよう分からないんです。庭を散歩してたら中ですごい音がして…」

警部「銃声、ですね?」

ヤスー「はい。…たぶん。そしたら、銃を持った男が飛び出してきて…。うち、慌てて中を覗いたんです。そしたら、じっちゃんが倒れてて。血がたくさん出てて…、ヒック、そして…。うぅぅ…。」

警部「…分かりました。今はゆっくり休んでください。おい!ヤスー巫女様をお連れしろ!」

新米警官「は、はい!では、ヤスー巫女様こちらに…。」

警部補「警部!!」

警部「状況を報告しろ。」

警部補「被害者はここの礼拝堂の僧であるコローギ、62歳。弾は被害者の右アキレス腱を貫通していました。その弾は礼拝堂内で発見されています。現在被害者は意識不明の重体でして、医師によると非常に厳しい状態らしく…。」

警部「アキレス腱を一発でか…。こりゃープロの犯行だな。それで、犯人の特徴は?」

警部補「はい。目撃情報によりますと全身黒の服を着ており、身長は165cm前後、がっしりとしていたそうです。残念ながら顔の特徴は分かりませんでした。」

警部「クソッ!何が目的だったんだ。礼拝堂内部の状況は?」

警部補「かなり荒らされていますね。物盗りの犯行でしょうか?おそらくはその現場を被害者に見つかり、発砲して逃げたのではないかと…。」

警部「何が盗られていたんだ?」

警部補「それが金目のものは何も…。」

警部「何がぁ!!急いで割り出さんか!!」

警部補「は、はいぃ!!」



6人がこの事件を知るのはまだ先のことである。



第8話につづく…





第6話 ~合言葉は「キャン」~


6人はスクンラト村を出発し、島の北側にあるフーリブ村に向かっていた。時刻は昼過ぎ。強い日差しが降り注いでいたが、森の木々の葉がそれを和らげていた。


チョンペー「(スゥーーー、ハァーー)まじで空気うめぇー。」

メイ「森林浴最高だねー。」

ハッピー「ほんと天気よくてよかったー。」

チン「でも、ちょっと暑過ぎひん?もちょっと涼しくてよかったわー。」

ロック「ほんまになー。でも、ここてめっちゃ雨降るときがあんねやろ?それに比べたらなー。」

ケン「でも、スコールみたいのがちょっと降ってくれると大分涼しくなるんだろうけど。」

チョンペー「…毎日スコールが降ったら、あれやね、消毒液みたいやね。」

ロック「は?」

チョンペー「ほら、消毒液て言ったら『ヒビスコール』たい。日々スコール♪」

ケン「…あっ、急に寒くなってきた。」

ロック「さぶぃー。さぶぃよー。」

チョンペー「いやいや、今のは結構よかったんじゃね?ねーチン?」

チン「んー、まーいつもよりは…。」

ハッピー「寒いよーwどうにかしてよーw」

ケン「大丈夫!チョンペーが暖めてくれるから!ほら、チョンペー、10秒やるけん!」

チョンペー「え!?は?待って、何でボケればいいと?」

ロック「そらー、ヒビスコール。」

チョンペー「まじで!?またー?厳しいなー。」

ケン「10、9、8…」

チョンペー「むむむ…。」

メイ「7,6,5…」

チョンペー「やベーやベー!はえーて!」

ハッピー「3,2,1、ハイ!!」

チョンペー「…!!えびす、えびす、えびす♪」

一同「???」

チョンペー「これぞまさに『エビスコール』!!」

一同「………」

チョンペー「え、ダメっすか?」

ケン「さー行こ行こ。」


一行は森の中を歩き続けた。1時間ほど歩き、フーリブ村まであと半分ほどといったところで急に空が曇ってきた。気象予報士の資格を持っている(ようにも見える)ケンが「こりゃあ一雨来るな。」とつぶやいた。空はゴロゴロと音を鳴らし、大粒の雨を降らせた。バケツをひっくり返したようなとよく言うが、そんなもんじゃなかった。言うならドラム缶をひっくり返したような…


チン「そら大げさて!!」

メイ「どうしたの急に?」

チン「いや、なんとなくつっこまなん気がして。変やね。」


…すいません。ナレーションにつっこむとは。チン恐るべし。

オホンッ!では気を取り直しまして。


6人は激しい雨の中を走っていた。足元はぬかるみ、服はすでにかなりの水分を含んでいた。


ハッピー「あそこに洞穴みたいのがあるよ!雨宿りしよー!」

チョンペー「異議なし!!」

チン「なんや、一本橋通らなあかんやん!」

メイ「みんな気をつけてね!」

ケン「顔が濡れて力がでないポー。」

チン「なんでアンパンマンやねん!」

ロック「ぇひ~ん、アンパンマ~ン(カバオ風)」


そのときである。一本橋を最後に渡っていたロックが足を滑らせ、丸太をまたぐ形で思いっきり股間を強打した。ロックは低い唸り声を出したが、気合で洞穴に駆け込んだ。その様子を見守っていた男3人は同情とも尊敬ともとれる表情でロックを迎え、そしてきつく抱きしめた。


ハッピー「どうしたの?え、こけたの?」


先頭を走っていたハッピーはロックに起こった事態を把握できていなかった。


ロック「ぅう…。キャンが…、俺のキャンが…。」

ハッピー「ん?キャン?何どうしたの?」

ケン「キャンと言ったらアレたい。」

チン「たしかに。キャンて言ったらアレやな。」

ハッピー「えー、分からんし。キャンて何?メイちゃんは分かるの?」

メイ「う、うん。なんとか…ね。」

ハッピー「なーにー?また私だけ知らないのー?教えてよー?」

ロック「チョンペー任せた。」

チョンペー「はいはい、来ると思いよった。そいじゃー、ヒントね。」

ハッピー「何?」

チョンペー「キャンはサザエさんに出てくる猫のことつたい。」

ケン「回りくどかね~。」

ハッピー「えー、タマでしょー。タマ…、キャン…。あ、分かった。」

チン「ひゃっひゃっひゃっ*キャンて言ったらタマしか無いわな♪」

ハッピー「へー、キャンって言うんだー。ふーん。」

ロック「キャンタマ!」

チョンペー「普通に言ったし!」

ケン「そいじゃー、キャンとタマに分ければいいたい。」

チン「キャン!」

ロック「タマ!」

チョンペー「タマ!」

ケン「今のはチョンペーちょいと遅かったね。」

チョンペー「勝手に反応してしまった。」

ハッピー「それおもしろそう☆私にもやらせて!みんなちゃんとやってよ!」

チョンペー「よっしゃ、そいじゃータマっていうときには敬礼付きねw」

メイ「一応聞いてみるけど、私もよね?」

ケン「もちろんたいw」

ハッピー「そいじゃーいくよ。…キャン!」

チョンペー、ロック、メイ「タマ!」

ハッピー「チンとケンがやってなーい。」

ケン「あ、ふつうにしくった。」

チン「同じく。」

ハッピー「てか、これ楽しいね!よし、今度から言い忘れたり、遅れたりしたら罰ゲームね♪いつ言うか分からんけん、集中しとってよ。」

ロック「それじゃー、ハッピー罰ゲームせんでええやん。」

チョンペー「そいじゃー、5人がバッチリ言えたときにはハッピーが罰ゲームね☆」

ハッピー「うーん。いいよ!」


とんでもないルールが設定されてしまった。ハッピーの「キャン」に対して「タマ」と答えるこのルール。人が聞けば半分以上に理解されてしまうだろう。しかし、6人にはそんなことを気にしている様子は一切見られなかった。いつしか雨は止み、空には大きな虹がかかっていた。


フーリブ村まであと少し。


現在旅の初日、時刻は午後3時24分、湿度30%。



…第7話に続く。