本編では書かなかったことが、
まだどこかに散らばったまま残っている。
若い頃の話もあれば、
中年になってからの出来事もある。
笑える日もあれば、
胸の奥が少し痛む夜もある。
時系列も関係なく、
ジャンルも統一されていない。
ただ、そのどれもが
“俺の人生のどこかに確かにあった時間”だ。
ここには、
こぼれ落ちた断片たちを
気ままに拾い集めた記録を残していく。
NHKの集金
離婚して西船橋で再出発した頃の話を書いたけれど、
あの頃よりもっと若い、
23歳くらいの頃のどうでもいい話をひとつ。
俺の家でエーイチとアッキョと3人で酒を飲んでいたら、
突然ピンポンと呼び鈴が鳴った。
玄関を開けるとNHKの集金だ。
払う気なんてないので
「ちょっと待ってて」
と言ってドアを閉め、
そのまま放置して飲み続けた。
しばらくするとまたピンポン。
今度はエーイチが出た。
「お父さん、集金だよ」
と言ってドアを閉めて戻ってきた。
意味がわからないが、エーイチらしい。
またピンポン。
今度はアッキョが出る。
「俺はロックンローラーだからよ」
と言い放ち、ドアを閉めて戻ってきた。
これも意味不明だが、アッキョらしい。
その後、
ピンポンが鳴ることはなかった。
ただそれだけの話なんだけど、
3人の“らしさ”が全部出ている夜だった。