回顧録ーMemoirs of the 1980sー -26ページ目

回顧録ーMemoirs of the 1980sー

激動の80年代、荒れる80年代。
ヤンキーが溢れる千葉の片田舎で、少年たちは強く逞しく、されど軽薄・軽妙に生き抜いた。
パンクロックに身を委ね、小さな悪事をライフワークに、世の風潮に背を向けて異彩を放った。
これは、そんな高校時代を綴る回顧録である。

エーイチから「アッキョの引っ越しを手伝ってくれ」と電話が来た。
それだけの話なんだけど、あの日の光景はいまでも忘れられない。
ゴミ袋の山、1.5tトラック、そしてアッキョの“血と汗と涙の結晶”。
なんてことない一日ほど、記憶に残るもんだ。

 

ある日、エーイチから電話があった。


「アッキョが引っ越しするんでさ、来週の土曜なんだけど手伝ってやってくれないか」
「俺が金は出すから、レンタカーでトラック借りてさ、運転してくれないかな」


相変わらず面倒見がいい。
ってか、アッキョのこと甘やかしすぎだ。
でもまあ、仕方がないのでOKした。


そして引っ越し当日。
エーイチと西船橋で待ち合わせ。
駅前のレンタカー屋に行ったんだけど…俺たちお馬鹿さんだったね。
予約なしでいきなり行ったもんだから、
都合よく2tとか1.5tのトラックなんて空いてるわけがない。


仕方がないので2件目へ。
またダメ。


駅前から少し離れたところにあった3件目で、
ようやく1.5tの平ボディーを借りることができた。


で、エーイチと2人してトラックに乗ってアッキョの家に行くと…
家の中、ごみ袋の山。


「なんだこれ、ぜんぶゴミか?」


と聞くと、アッキョは真顔で、


「馬鹿なこと言うもんじゃないよ。全部、持っていくものだ」
 

なんて言うんだけど、
誰がどう見ても“ゴミの山”にしか見えない。

 

当時の画像(引っ越し車両に見えない、産廃の山)

 

でもよく見ると、そのゴミ袋の中身のほとんどが洋服なんだよ。
アッキョは物持ちがいいっていうか、
完全に“捨てられない症候群”で、
高校の頃に着てた服から今の服まで、
一着も処分したことがないらしい。
だから言ったよ。


「引っ越しを機に少しは処分して整理しろよ」


って。
でもアッキョは、


「血と汗と涙の結晶だ。捨てるわけにはいかない」
 

と、がんとして聞かない。


さらに極めつけは、
昔から撮りためてきた写真の山。
中学の頃に撮った、
松田聖子とか河合奈保子のデパート屋上営業の写真が
ゴロゴロ出てくる。


「これ全部きれいに並べて整理したら、貴重な昭和アーカイブになるぞ」
 

と思うんだけど、
現実は何もかもが煩雑すぎて整理のしようがない。
写真ですらゴミ袋に突っ込んであるんだもんな。
強烈すぎる。

 

当時の画像(どう見てもゴミだ)

 

で、結局、一度では運びきれずに2往復するはめになった。
そりゃそうだ、あの量だもんな。


流石に2回目の頃には腹が減ってきて、
コンビニに寄ってアッキョに俺らの弁当も買わせようとしたんだけど、
ここでも結局、金を出すのはエーイチ。
ほんと、この面倒見の良さはなんなんだよって。
甘やかしすぎだろ。


で、すべての荷物を新しい部屋に運び入れたんだけどさ、
まあ、ゴミ屋敷だぜ(笑)。
アッキョは調子よく、


「今度、遊びに来ていいからな。泊めてあげますよ」
 

なんて言うんだけど、
俺もエーイチも即答で、


「遠慮しとくわ」
 

だよ。
ほんと、なんてことない話なんだけどさ──
こういう日のことほど、よく覚えてるんだよな。
 

当時の画像(せっせとゴミを運ぶアッキョ)