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回顧録ーMemoirs of the 1980sー

激動の80年代、荒れる80年代。
ヤンキーが溢れる千葉の片田舎で、少年たちは強く逞しく、されど軽薄・軽妙に生き抜いた。
パンクロックに身を委ね、小さな悪事をライフワークに、世の風潮に背を向けて異彩を放った。
これは、そんな高校時代を綴る回顧録である。

高円寺の「円盤」は、ただのレコード屋でも喫茶店でもない。
ライブもやれば、変な展示もある、あの街らしい“混沌の箱”だ。
そしてその夜、俺とエーイチは、18年ぶりにユミル──
元クララサーカスで、今はアメリコを率いる彼女──に会いに行った。
真夏の夕刻、缶ビール4本を手に電車へ乗り込んだ時点で、
もうこの日の物語は始まっていた。

 

 

まず説明しておくと、円盤というのは高円寺にある変な店だ。
レコード屋だったり、喫茶だったり、時々ライブイベントが行われたりする。
そしてアメリコというのは、かつてインディーズシーンを席巻した
元クララサーカスのボーカル、ユミル率いるロックバンドだ。


ユミルは、実のところエーイチも俺も昔からの“お友達”である。
だからライブに行くのはすっげー楽しみだった。
再会するのは、かれこれ18年ぶりだ。


真夏の夕刻、津田沼でエーイチと落ち合い、
缶ビールを4本買って各駅停車の三鷹行きに乗り込んだ。
プシュッ。
缶ビールを開けた途端、エーイチが妙にソワソワし始めた。


「いやー、こっぱずかしいな……」
「どの面下げて会うんだよ……」


普段のエーイチからは考えられないほど落ち着きがない。
まるで初恋の相手にでも会いに行くみたいな雰囲気で、
何度も座り直したり、缶を持つ手が落ち着かなかったり。


「別に気負うことねーだろ。向こうだって喜ぶって」


そう言っても、エーイチは聞いちゃいない。

高円寺に着く頃には、
もう完全に“緊張したオッサン”になっていた。


ライブまで時間があったので、古めかしい居酒屋に入った。
カウンターの前には昔のまんまのキャロルのポスター。
リーゼントを決めるジョニー大倉たちをバックに、
ただ「俺を見ろ」と言わんばかりの矢沢永吉。
やっぱ永吉はオーラが違う。

 

▼店に貼ってあったポスター

 

そんな話をしながらも、
エーイチはずっと落ち着かない。


「こんなオッサン面見せるのかよ……参ったな〜」


酒をグイグイ飲みながら、
俺たちはいよいよ円盤へ向かった。
店の前に立つと、エーイチは足踏みして動かない。
珍しく俺の後ろに隠れるようにして、
「お前先に入れよ……」なんて言ってくる。


仕方なく俺が扉を開けると──


そこに立っていたのは、アラフォーになったユミルだった。
18年ぶりでもすぐにわかった。


「来ちゃいました〜、久しぶり」


なんてヘラヘラしながら握手してもらう俺たち。
完全にミーハーだ。
それにしても、俺たち2人は店の中で浮いていた。
静かにライブ開始を待つ若い連中の中に、
泥酔したオッサン2人が乱入し、
いきなりユミルを捕まえて握手したり談笑したり。
連中、なんだと思っただろうね。


ライブを堪能し、帰りの電車でビールを開ける。


「来てよかったな〜」
「だな」

 

二人して大きくうなづき、
そのまま夢の世界へ落ちていった。

 

▼ユミルとの再会にはしゃぐ45歳のオヤジ二人(2008.8.9撮影)