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回顧録ーMemoirs of the 1980sー

激動の80年代、荒れる80年代。
ヤンキーが溢れる千葉の片田舎で、少年たちは強く逞しく、されど軽薄・軽妙に生き抜いた。
パンクロックに身を委ね、小さな悪事をライフワークに、世の風潮に背を向けて異彩を放った。
これは、そんな高校時代を綴る回顧録である。

あの夏の夜、俺たちはなぜか湘南を目指して走っていた。
オンボロ車にラジカセ爆音、窓全開、怪しい3人組。
潮風とパープルレインが混ざり合う中で起きた、
ちょっとバカで、ちょっと惜しくて、忘れられない一夜の話だ。

 

ある夏の夜、俺とエーイチ、そしてオガワ君の3人でドライブに出かけた。
この組み合わせは珍しいし、行き先が湘南ってのもまた珍しい。理由は忘れた。


俺の車はオンボロで、クーラーなんて付いてない。
カーステレオも無いから、いつもラジカセを積んでフルボリューム。
窓は全開、乗ってるのは怪しい3人組。
そりゃあ警官にもよく止められた。
でも酒も違反もしてないから自信満々。
「おっ、巡査さんですか、ご苦労様です」なんておちょくってた。
ムキになって車内を探しても何も出てこない。ほんとご苦労なこった。


その頃はプリンスが売れてた時期で、
パープルレインを爆音で流しながら、
エーイチは窓からケツ出してフリフリしてた。
プリンスといえばケツ出しだしな。
あれ?もしかしてクイーンのフレディのつもりだったか。まあどっちでもいい。


そんなこんなで湘南のどこかの海岸に到着。
砂浜を歩き、防波堤にひょいと登って腰を掛け、ビールをプシュ。
男3人でくだらない話をしていると、
どこからか女の子3人組がやってきて声をかけてきた。


「そっち行っていい?登れないから手貸してよ」


と言うので、上から手を握って引っ張り上げてやる。


「ビールちょうだい」
「もうねーよ」
「それでいいよ」


そう言って、呑みかけのビールにそのまま口をつけてきた。

おっと、こりゃいい展開じゃん。
3対3、ちょうどいい。
盛り上げて、むふふ……なんて企んでいたら、オガワ君だ。


「面倒くせーから行こうぜ」


そう言って立ち上がり、勝手に歩き出す。
あーあ。


女の子たちも「あっそっ」と言って、別のグループの方へ行ってしまった。
まったくもう、オガワ君ったら硬派なんだから。
困ったもんだね、参ったね、残念だね。

 

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