外伝|45歳おじさん、マリゴに振り回される | 回顧録ーMemoirs of the 1980sー

回顧録ーMemoirs of the 1980sー

激動の80年代、荒れる80年代。
ヤンキーが溢れる千葉の片田舎で、少年たちは強く逞しく、されど軽薄・軽妙に生き抜いた。
パンクロックに身を委ね、小さな悪事をライフワークに、世の風潮に背を向けて異彩を放った。
これは、そんな高校時代を綴る回顧録である。

本編では書かなかったことが、
まだどこかに散らばったまま残っている。

若い頃の話もあれば、
中年になってからの出来事もある。
笑える日もあれば、
胸の奥が少し痛む夜もある。
時系列も関係なく、
ジャンルも統一されていない。
ただ、そのどれもが
“俺の人生のどこかに確かにあった時間”だ。
ここには、
こぼれ落ちた断片たちを
気ままに拾い集めた記録を残していく。

 

45歳おじさん、マリゴに振り回される

 

週末、時間ができた。
60歳になった今、
古いCDやDVDを整理していたら、
下手糞なイラストが描かれた、

手書きのタイトルが書かれたCD-Rが出てきた。

 

▼実際のCD、よく見ればクレイジーカメレオンって書いてあった(笑)

 
誰にもらったのか覚えていない。
なんとなく再生してみたら──
流れてきたのは、マリゴの声だった。

 


ライブの時より落ち着いていて、
しっとりしていて、
「マリゴって、こんなふうに歌えたんだな」
と、60歳のおじさんは思わず惚れ直した。

 


その瞬間、
45歳の頃の自分がふっと蘇る。

 

あの日届いた、
マリゴからの一通のメール。


『今度の土曜なにしてますか?』


営業メールだとわかっていても、
45歳のおじさんはしっぽを振ってしまい、
気づけば新松戸のライブハウスFIREBIRDに
行く決意をしていた。

 

▼いつもこんなお色気画像を送ってきてくれた(笑)


一人で行くのもなんなので、エーイチを誘った。
するとエーイチは、甥っ子を連れてやってきた。
妹の忘れ形見を、なぜかライブハウスに連れてくるという
エーイチらしい判断である。


三人で6時のオープンと同時に入場。
前座のバンドが次々と出てくる。
しかしクレイジーカメレオンが出てくる気配はない。


7時、まだ。
8時、まだ。
9時、まだ。


甥っ子は飽きてきて、
エーイチも飽きてきて、
「帰るわ」とあっさり帰ってしまった。

 

残されたのは45歳のおじさんひとり。
しかしマリゴ可愛さで帰るわけにはいかない。


そして10時前、ようやくクレカメ登場。
マリゴは、元気いっぱいに飛び跳ね、

パワフルでキュートな歌声を、
FIREBIRDの地下に響かせていた。


おじさんは最後まで見届けた。
しかしライブが終わる頃には疲れ果てて、
マリゴに挨拶する気力もなく、
そのまま階段を上がって帰った。


数日後、メールが届いた。


「遅くまですみません、ありがとうございました」


ああ、
マリゴは俺が最後までいたのを知っていたんだな。


60歳の今、
CD-Rから流れる声を聴きながら、
あの夜のことを思い出す。


45歳のおじさんの、
ちょっとした浮き足立ちと、
ちょっとした寂しさと、
ちょっとした誇らしさ。


そんな夜だった。

 

▼こんな連中だよ!キュートハート