本編では書かなかったことが、
まだどこかに散らばったまま残っている。
若い頃の話もあれば、
中年になってからの出来事もある。
笑える日もあれば、
胸の奥が少し痛む夜もある。
時系列も関係なく、
ジャンルも統一されていない。
ただ、そのどれもが
“俺の人生のどこかに確かにあった時間”だ。
ここには、
こぼれ落ちた断片たちを
気ままに拾い集めた記録を残していく。
45歳おじさん、マリゴに振り回される
週末、時間ができた。
60歳になった今、
古いCDやDVDを整理していたら、
下手糞なイラストが描かれた、
手書きのタイトルが書かれたCD-Rが出てきた。
▼実際のCD、よく見ればクレイジーカメレオンって書いてあった(笑)
ライブの時より落ち着いていて、
しっとりしていて、
「マリゴって、こんなふうに歌えたんだな」
と、60歳のおじさんは思わず惚れ直した。
その瞬間、
45歳の頃の自分がふっと蘇る。
あの日届いた、
マリゴからの一通のメール。
『今度の土曜なにしてますか?』
営業メールだとわかっていても、
45歳のおじさんはしっぽを振ってしまい、
気づけば新松戸のライブハウスFIREBIRDに
行く決意をしていた。
▼いつもこんなお色気画像を送ってきてくれた(笑)
一人で行くのもなんなので、エーイチを誘った。
するとエーイチは、甥っ子を連れてやってきた。
妹の忘れ形見を、なぜかライブハウスに連れてくるという
エーイチらしい判断である。
三人で6時のオープンと同時に入場。
前座のバンドが次々と出てくる。
しかしクレイジーカメレオンが出てくる気配はない。
7時、まだ。
8時、まだ。
9時、まだ。
甥っ子は飽きてきて、
エーイチも飽きてきて、
「帰るわ」とあっさり帰ってしまった。
残されたのは45歳のおじさんひとり。
しかしマリゴ可愛さで帰るわけにはいかない。
そして10時前、ようやくクレカメ登場。
マリゴは、元気いっぱいに飛び跳ね、
パワフルでキュートな歌声を、
FIREBIRDの地下に響かせていた。
おじさんは最後まで見届けた。
しかしライブが終わる頃には疲れ果てて、
マリゴに挨拶する気力もなく、
そのまま階段を上がって帰った。
数日後、メールが届いた。
「遅くまですみません、ありがとうございました」
ああ、
マリゴは俺が最後までいたのを知っていたんだな。
60歳の今、
CD-Rから流れる声を聴きながら、
あの夜のことを思い出す。
45歳のおじさんの、
ちょっとした浮き足立ちと、
ちょっとした寂しさと、
ちょっとした誇らしさ。
そんな夜だった。
▼こんな連中だよ!キュート![]()

