第25回:レゲエバーで始まった恋 | 回顧録ーMemoirs of the 1980sー

回顧録ーMemoirs of the 1980sー

激動の80年代、荒れる80年代。
ヤンキーが溢れる千葉の片田舎で、少年たちは強く逞しく、されど軽薄・軽妙に生き抜いた。
パンクロックに身を委ね、小さな悪事をライフワークに、世の風潮に背を向けて異彩を放った。
これは、そんな高校時代を綴る回顧録である。

あの夏前、俺たちは3年のカズとトモに出会い、
市川真間の地下にある怪しげなレゲエバーへ連れて行かれた。
あの日から、俺たちの青春は少しだけ大人びた。

 

話は少し前後する。なんせ昔のことだ、都合よく時系列通りに思い出せるわけがない。
ということで、高校2年、夏も近い頃の話をひとつ。
女の話にはあまり触れたくないんだけど、今回はちょっとだけ…。


朝からエーイチが興奮気味に言ってきた。
「こないだのカッコイイ女の子、うちの女子部の3年だったぜ。名前もクラスも調べついたんでさ、手紙書いて下駄箱に入れてくる」
下駄箱に手紙。いいだろ、この時代感。


そして放課後。
彼女たち2人も俺たちのことを知っていたらしく、あっさり誘いに乗ってきた。
2人の名はカズとトモ。
カズはツンツン頭の正統派パンクのいかした娘。
トモはバリバリのパンクって感じじゃないけど、独特で不思議な雰囲気を持ったカワイイ娘だ。


駅まで一緒に歩いていると、
「あたしの知ってる店に行こうよ」
と誘われた。
連れて行かれたのは、市川真間駅前のぼろっちい雑居ビルの地下1階にある怪しげなバー。
トモは本当に馴染みの店らしく、
「マスター、今日は新しい友だち連れてきたよ」
と入っていった。
カウンター越しに現れたのは、レゲエチックな髭面坊主頭の兄ちゃん。
店内はレゲエの雰囲気一色。
これまでに体験したことのない怪しげな空気に、俺は興奮したのを覚えている。
ボブ・マーリーを聴いたのは、たぶんこの時が最初だった。
“ノー・ウーマン・ノー・クライ”を聴くと、今でも彼女たちのことを思い出す。

酒も飲まずにアップルタイザーで盛り上がってたんだからな。
やっぱ青春だったんだよ。


その日、夕方から夜遅くまで彼女たちと話をして、すっかり意気投合した。
カズは中学の頃からパンクバンドを組んでベースを弾いていたらしく、
最近は新宿ツバキハウスに出入りしている“お洒落番長”。
トモはパンク専門ではないけど、やっぱり中学の頃からこんなバーや、市川のリブルってライブハウスに出入りしていたらしい。
俺らとは違って筋金入りというか、独特の世界を持っている彼女たちに、俺は憧れてしまった。
いや、憧れを通り越して惚れてしまった、というのが正しい。


そして俺はトモと付き合うようになり、エーイチはカズと付き合うようになった。
そうやって、俺たちは大人の階段を上り始めたのだった。