回顧録ーMemoirs of the 1980sー

回顧録ーMemoirs of the 1980sー

激動の80年代、荒れる80年代。
ヤンキーが溢れる千葉の片田舎で、少年たちは強く逞しく、されど軽薄・軽妙に生き抜いた。
パンクロックに身を委ね、小さな悪事をライフワークに、世の風潮に背を向けて異彩を放った。
これは、そんな高校時代を綴る回顧録である。

人生の中で、なぜか色褪せずに残り続ける人がいる。
俺にとっては、若い頃に出会った一人の女性がそうだった。

 

若い頃、俺には“忘れえぬ人”がいる。


同じ学校に通っていた女性で、
当時から俺に好意を寄せてくれていたのは感じていた。
けれど、どこか影をまとったような、
重たい空気を抱えた人で、
俺はうまく距離を取っていた。


卒業して社会に出て、
そのまま自然に離れていくと思っていた頃、
彼女から長い手紙が届いた。
気持ちのこもった文章が何枚も続いていて、
その真剣さに胸がざわついたのを覚えている。


しばらくして電話もかかってきて、
押しに弱い俺は、ついに会うことになった。
最初に会ったのは、夏の始まりの夕方。
街の屋上にあるビアガーデンで、
風が気持ちよくて、
どこか映画のワンシーンみたいな雰囲気だった。

 

画像はイメージです


それから何度か会うようになり、
彼女は俺を“夜の大人の世界”へ案内してくれた。
カフェバーや、当時流行っていた洒落た店。
若かった俺にはどれも新鮮で、
最初の頃は胸が躍った。

 

けれど、次第に気づいた。
俺が求めていたのは、
夜のきらびやかな世界より、
昼の光の中で過ごすような付き合いだったことに。
ドライブしたり、遊園地に行ったり、
そんな“普通のデート”に憧れていたんだ。


ある日の帰り道、
価値観の違いから軽く言い合いになり、
そこから距離が開いていった。


そして、いつものように自然消滅した。


今思えば、
あの頃の俺には受け止めきれない重さがあったのかもしれない。
それでも、
夜の世界の楽しさを教えてくれた彼女には、
今でもどこか感謝している。