後日また5人で集まり、長谷川の記憶を頼りに検討をつけた場所へ向かった。
しばらく辺りをうろついていると長谷川が、
「あっ、これ夢に出てきた。
あっ、この家も覚えてる。」
確認しながら歩く。どうやらこの辺りで間違いないが、一体ここに何があるというのだろう?
そして、ある一軒の家の前を通ったとき長谷川が
「ここだ❗いつもこの家の前で夢が終わる。」
えっ?普通の家やん。
確かにここは長谷川の家からそんなに離れてはいないけど、普段使う道でもないし表札見たけど『吉田』?長谷川が知ってる家でもないし、そりゃ通りすぎたことくらいはあったやろうけどもさ。
俺たち5人が家の前でウロウロしていたからだろうか?その家の中から40代~50代くらいと思われる女性が出てきた。
「何かうちにご用ですか?」
その女性に聞かれ、長谷川が
「以前に吉田さんにお世話になった者です。ちょうど近くに来たものでご挨拶にと思いまして。」
とごまかした。
おーい‼️よくそんなウソを💦
どの吉田さんだよ。家族構成も知らんのに。
(その節はホントにごめんなさいm(__)m)
すると女性が
「それはありがとうございます。
せっかく来ていただいたのですが、実は主人は昨年亡くなりまして。」
と答えた。
5人とも絶句。色々な想像が頭のなかを巡ったが、思わず「お線香あげさせてもらえませんか?」とお願いしてしまった。今思えばよくもまあ、得たいの知れない男5人も家にあげてくれたなぁと思うわ。
仏壇に手を合わせお参りさせてもらった。
仏壇の上の鴨居に遺影がある。きっとこの方だろう。
長谷川「やすよさんやようこさんのこともお話よく聞かせてもらいました。」
奥様「そうですか。娘たちのことをホントに可愛がっていました。」
あの口にしてた2人の名前は娘さんだったのか。
長谷川「そうですよね。ところで、吉田さんはご病気か何かで?」
奥様「いえ、自分で…。」
長谷川「えっ…。…。そうですか…。」
重苦しい空気に押し潰され、これ以上聞くことなんてとても出来なかった。
何とも言えない空気のなか、吉田さんの奥様へお礼を言って家を後にした。
その後もお互い言葉少なく解散。
そして次の日、長谷川から電話があった。
「夢の中にあの遺影の男性が出てきた。
きっちりとしたスーツ姿で現れ、何度もありがとう。ありがとう。って言って消えていった。」と。
あくまでも想像でしかないが、あの近くの山で自ら命を絶った男性がたまたま自分の家の近くに住んでいた長谷川を見つけて、自宅へ帰ることが出来たのではないのか。
自ら逝ってしまった人間は、自分で自分の家へ帰ることも出来なくなるのかも。
この1件があってから俺は日々生きていてどれだけ辛いことがあっても自ら逝くことだけは絶対にしてはいけないと決めている。
その行為の先が今よりも楽になるなんてことは無いのではないのか。と考えさせられた出来事だった。
終わり
長文、読んでいただきありがとうございました。
m(__)m