※(ローマ数字5、1-13-25) 幸福

 

幸福はうまやの中にゐる
わらの上に。
幸福は
和める心には一挙にして分る。

  かたくなの心は、不幸でいらいらして、
  せめてめまぐるしいものや
  数々のものに心を紛らす。
  そして益々ますます不幸だ。

幸福は、休んでゐる
そして明らかになすべきことを
少しづつ持ち、
幸福は、理解に富んでゐる。

  頑なの心は、理解に欠けて、
  なすべきをしらず、ただ利に走り、
  意気銷沈して、怒りやすく、
  人に嫌はれて、自らも悲しい。

されば人よ、つねにまづ従はんとせよ。
従ひて、迎へられんとには非ず、
従ふことのみ学びとなるべく、学びて
汝が品格を高め、そが働きのゆたかとならんため!

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更くる夜
  内海誓一郎に

 

毎晩々々、夜がけると、近所の湯屋の
  水汲む音がきこえます。
流された残り湯が湯気となつて立ち、
  昔ながらの真つ黒い武蔵野の夜です。
おつとり霧も立罩たちこめて
  その上に月が明るみます、
と、犬の遠吠がします。

その頃です、僕が囲炉裏ゐろりの前で、
  あえかな夢をみますのは。
随分……今では損はれてはゐるものの
  今でもやさしい心があつて、
こんな晩ではそれがしづかに呟きだすのを、
  感謝にみちて聴きいるのです、
感謝にみちて聴きいるのです。

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つみびとの歌
  阿部六郎に

 

わが生は、下手な植木師らに
あまりにはやく、手を入れられた悲しさよ!
由来わが血の大方は
頭にのぼり、煮え返り、たぎり泡だつ。

 

 

おちつきがなく、あせり心地に、
つねに外界にもとめんとする。
その行ひは愚かで、
その考へは分ち難い。

かくてこのあはれなる木は、
粗硬な樹皮を、空と風とに、
心はたえず、追惜のおもひに沈み、

懶懦らんだにして、とぎれとぎれの仕草をもち、
人にむかつては心弱く、へつらひがちに、かくて
われにもない、愚事のかぎりを仕出来しでかしてしまふ。

 

             青空文庫

 

 

 

最近 紅麹のニュースばかり

それで このことについて 少しリブログしてみました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海月