幸福は厩の中にゐる
藁の上に。
幸福は
和める心には一挙にして分る。
頑なの心は、不幸でいらいらして、
せめてめまぐるしいものや
数々のものに心を紛らす。
そして益々不幸だ。
幸福は、休んでゐる
そして明らかになすべきことを
少しづつ持ち、
幸福は、理解に富んでゐる。
頑なの心は、理解に欠けて、
なすべきをしらず、ただ利に走り、
意気銷沈して、怒りやすく、
人に嫌はれて、自らも悲しい。
されば人よ、つねにまづ従はんとせよ。
従ひて、迎へられんとには非ず、
従ふことのみ学びとなるべく、学びて
汝が品格を高め、そが働きの裕かとならんため!
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更くる夜
内海誓一郎に
毎晩々々、夜が更けると、近所の湯屋の
水汲む音がきこえます。
流された残り湯が湯気となつて立ち、
昔ながらの真つ黒い武蔵野の夜です。
おつとり霧も立罩めて
その上に月が明るみます、
と、犬の遠吠がします。
その頃です、僕が囲炉裏の前で、
あえかな夢をみますのは。
随分……今では損はれてはゐるものの
今でもやさしい心があつて、
こんな晩ではそれが徐かに呟きだすのを、
感謝にみちて聴きいるのです、
感謝にみちて聴きいるのです。
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つみびとの歌
阿部六郎に
わが生は、下手な植木師らに
あまりに夙く、手を入れられた悲しさよ!
由来わが血の大方は
頭にのぼり、煮え返り、滾り泡だつ。
おちつきがなく、あせり心地に、
つねに外界に索めんとする。
その行ひは愚かで、
その考へは分ち難い。
かくてこのあはれなる木は、
粗硬な樹皮を、空と風とに、
心はたえず、追惜のおもひに沈み、
懶懦にして、とぎれとぎれの仕草をもち、
人にむかつては心弱く、諂ひがちに、かくて
われにもない、愚事のかぎりを仕出来してしまふ。
青空文庫
最近 紅麹のニュースばかり
それで このことについて 少しリブログしてみました
海月