まず、ゴリラが主人公に「人類存亡の危機」を語るというストーリーからして、興味を惹かれる。


「取る者」と「残す者」という農耕民族と狩猟採集民族の対比で、地球の資源を取りつくす者と残す者に分け、「取る者」は、世界を征服し、統治しなければならないという世界観が強く、「残す者」は世界と調和して生きていくという世界観に生きているとしている。


環境問題も行き着くところは、人口問題であり、資源と人口のバランスが取れていないことが問題なのだという。


増加する人口に対応するには、食料の増産が必要で、食糧が増産されるとさらに人口が増えるという。


このまま行くと自然環境が破壊され、野生の動物が絶滅し、結局地球は人間も住めなくなってしまうことをわかっているけれどやめられない人類。


なぜなら、我々はある物語(地球を破壊する物語)を知らず知らずのうちに演じているという。


さらに、旧約聖書の失楽園のアダムとイブの物語やカインとアベルの物語で、旧約聖書は「残す者」が書いたものを「取る者」が後に真意もわからず借用したというくだりは、クリスチャンにとっては衝撃的な内容かもしれない。


本書を初めて読んでから、10年くらいたっているが、状況はあまり変わっていない。二酸化炭素の排出量を減らすことは、枝葉末節でしかない。


人類が生き残るには、我々の考え方を根底から変えないといけないという本質に迫る名著だ。



ただ、現在は絶版になっているのがもったいない。


『イシュマエル』ダニエル・クイン著 株式会社ヴォイス刊