Tarinof dance company 「フィクション/Walter/Coco」 | げみスタ・えっ?!日記

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荻窪でダンススタジオを営む、げみの徒然なる日常。

柳本先生の舞台、高円寺から戻って、クラス受付を済ませ、
「後はヨロシク!」と向かった先は渋谷新南口。

space EDGE は白壁をバックにした、
80席ほどの横長のスペース。

長谷川まいこ先生と坂田守先生の「Tarinof dance company」は
今回は8人のダンサーとともに、
狭い空間から溢れださんばかりの、
熱の入ったパフォーマンスを見せてくれました。
 

「Coco」は昨年、座・高円寺でDuoバージョンを観たんだけど、
同じ作品を人数を増やしてのアプローチ。
同じテーマを違う手法で扱うと、また作品世界が深まります。
 

メインの男性を演じた石井武さんは、
客席との距離が近いにも拘らず、
役者のような集中力で、ゆっくりと観客を作品世界に引き込んでゆきます。
 

この男性役のキャラクターの違いからか、
昨年の坂田先生のヴァージョンでは
「狂気」や「オカルト」的な雰囲気でしたが(笑)、
石井ヴァージョンは「日常に潜む不安」のようなものが感じられました。
 

広い劇場でのDuo、狭い空間での群舞という、
敢えて逆の方向でのアプローチは、
空間の余白の広がりが、作品の広がりに繋がり、
狭い空間にひしめく濃密さが、作品の濃密さを表したように思えました。
 

「Walter」は戦争時に材を取った女性の群舞。

アーミーっぽいデザインの中にも、
おへそを出した女性らしい衣裳。
 

主題の割にはそんなに社会性や政治的な色は感じさせず、
身体の利く若いダンサーたちが思う存分踊ってくれる、
タリノフのボキャブラリーを示してくれた、小気味いい作品でした。
 

最後の新作「フィクション」も意欲作。
 

タリノフの二人に高橋純一さんという、バリバリ動ける3人が、
頭に厚いネット状の頭巾を被って登場。
視界に制限を設け、あえて過激な動きを封印した上で、
何を表現できるか、何を伝えられるかを模索するような作品。
 

外界から遮蔽された感覚で生きる人間、
それは自分の視界を遮られ、
自分の価値観しか見えず、
独りよがりのように見えて、
みなが同じ方向を向く思考停止状態。

そんな風に重く迫るテーマを、コミカルに飄々と演じていました。
 

いつか外すのかと思いきや、最後までその状態で踊りきり、
アンコールで頭巾を外した3人の顔は汗だくで、
蒸気をあげながらも、やりきった満足感と高揚感に紅潮していました。
 

贅沢な空間ではないけれど、
今、自分たちができる最善の公演スタイル。

まだ若い二人が、
自分たちのカラーやダンスの手法に固執せず、
どんどん新しいことにチャレンジしながら、
さらに若い世代を牽引してゆく姿に、
これからのダンス界の未来を見た気がしました。
 

みなさま、お疲れ様でした。
タリノフのお二人のクラスは、
7月より日曜19時からに繰り下がります。
第二弾のスタジオパフォーマンスの出演者も、絶賛受付中です!

(2017.06.18 所見)