日本が誇る永遠の名機 日本光学 ノバー 7×50 は、やはり素晴らしかった。 | BLRM ブラッキー リッチモア ~ Be Lucky Rich More!! のブログ

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〜 SINCE 2015.4.8

双眼鏡マニアの方なら、一度くらいは、

 

「 ノバー 」或いは「 Novar 」と言う名前を、

 

聞いた事があるのではないだろうか?

 

 

我が国の光学界の重鎮、日本光学が設計、開発を行い、

 

大日本帝国海軍にて、制式として採用されていた、

 

7×50 7.1° のスペックを持つ、IF式双眼鏡の事である。

 

双眼鏡マニアの間で語り継がれて来た伝説の名機だ。

 

 

以下、オーナー様や、先人の方々から教わった情報を交えて、

 

お伝えさせて頂こうと思う。

 

 

とりわけ、中島 隆 先生の著書「双眼鏡の歴史」の中で、

 

本機について詳しく紹介されており、参考にさせて頂いた。

 

(  P.218, P.438,P456 等 )

 

この場を借りて、中島隆先生には、感謝の辞を申し上げたいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

対物筒が脱着出来る構造となったツァイスタイプの、

 

一見、ごく普通のIF型双眼鏡のようだが、

 

対物部に刻印された、丸で囲んだ「航」の文字が確認される。

 

 

これは当時、艦橋にて 艦艇の運航を司る、

 

航海科用であった事を表しているそうである。

 

 

他にも、魚雷、機雷担当の水雷科用の「水」、

 

砲術科用の「砲」、飛行科用の「空」等もあったようだ。

 

 

また、当初はプリズムカバーに刻印されていたようだが、

 

後に、対物カバーに刻印されるようになったそうである。

 

 

プリズムカバーに刻まれた、飛行科用の「空」の個体。

 

 

 

 

 

 

尚、対物筒は、ツァイスのように、

 

内と外の2重構造にはなっておらず、

 

先端の対物カバー部は、ダブルリングのような仕様となっている。

 

(  後に陸軍制式となった、八九式は2重構造となっており、

 

 対物カバー部のダブルリング仕様は廃止されている。)

 

 

 

 

 

 

 

上陣笠部には、海軍双眼望遠鏡 購買規格の検査に合格した印の、

 

カタカナの「オ」のような文字と、「桜」の刻印がされていた。

 

 

通常は、イカリマークの刻印なのだそうだが、

 

桜の刻印は、戦時中に船舶の護衛を目的に創設された、

 

海上護衛総隊 を示すものであるらしい。

 

 

よって本機は、海上護衛総隊に向けて納品されたもののようだ。

 

( 画像はレストア後のもの。)

 

 

 

 

 

 

通常の錨マークの検印

 

 

 

 

また、戦時下に於いて、ノバーの供給量が大幅に拡大し、

 

生産体制を見直す必要に迫られたようだ。

 

 

結果的に、それまでのあまりに厳し過ぎる検査基準を

 

下方修正する事で、増産体制が整えられたのである。

 

 

ちなみに、下方修正されたからと言って、

 

当然乍ら、実用上は全くそれまでのものと遜色が無い。

 

 

参考までに、あまり詳細は述べる事は出来ないが、

 

CARL ZEISS等も、ある時期から下方修正がされているが、

 

誰も気付いていないようである。

 

 

下方修正された検査にパスした個体には、

 

丸に「規」の文字が刻印された。

 

 

 

 

 

 

また、同型が後に大日本帝国陸軍でも制式採用され、

 

八九式双眼鏡 と呼ばれたようだ。

 

 

これは、制式となったのが、昭和4年、

 

即ち、皇紀2589年だった事に由来する。

 

 

参考までに、海軍用のノバーと陸軍用の八九式では、

 

対物筒の仕様や、ブリッジ部のネジの有無、ネジの規格等、

 

構造や仕様に若干の違いがあるようなので、

 

正確に言えば「ノバー」と「八九式」は違うと言う事になる。

 

 

とは言え、双方を表して、

 

「ノバー型双眼鏡」と言われていたようだが、

 

その後もしばらくは、7×50 7.1°のスペックの双眼鏡を総して、

 

「ノバー」と呼ばれていたようだ。

 

 

陸海双方から、我が国の国防を担って来た、

 

本物中の本物の、光学兵器としての双眼鏡である。

 

趣味のオモチャとは訳が違う素性の双眼鏡なのである。

 

 

そんなノバー型双眼鏡の基本設計は、何と大正12年の事であった。

 

日本光学は、大正10年辺りから、ドイツより技術者を召喚し、

( 恐らくは、CARL ZEISS JENAの技術者かと思われる。)

 

双眼鏡の生産技術等に関して、指導を請うていたそうである。

 

そのせいか、ノバーは、BINOCTAR 7×50 にとても良く似ている。

 

 

CARL ZEISS JENA BINOCTAR 7×50

 

 

 

 

 

 

 

 

そうこうして、満を持して開発されたのが、

 

日本光学 ノバー 7×50 7.1°  である。

 

そんな伝説の名機が、私の元に、やって来たのであった。

 

 

実は私は、軍用ではなく、民生用( 業務用) の、

 

1949年以降の戦後に作られた

 

「 Novar 」を所有しているのだが、

 

当時の軍用機の「ノバー」を見るのは初めてであった。

 

 

ちなみに当時、民生向けの業務用機は「 Novar 」

 

軍用機は「ノバー」とカタカナ表記となっていたようだ。

 

 

また、軍用機には右の接眼部にレティクルレンズが装備され、

 

左のプリズムカバーに、レティクル装備を示す意で、

 

漢字で「 “目盛入” 」と書かれている。

 

 

ちなみに、業務用機の Novar には、

 

レティクルは装備されていない。

 

 

 

 

 

 

ともあれ、敢えてカタカナで表記された、ノバー、

 

当時の時代背景を象徴しているかのようで、大変興味深い。

 

 

 

拙宅所有の戦後に作られた Novar 7×50

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、そんな伝説の名機であるノバーであるが、

 

オーナー様からは、「お任せの最上級でお願いします。

 

徹底的にオーバーホールをして欲しい。」との、

 

大変ありがたい ご依頼を頂いた。

 

 

名機に相応しい手厚い処遇を受けさせてあげたい、

 

と言う事なのだろう。

 

 

私自身にとっても、大変ありがたい事であるが、

 

何よりも 本機にとって、とても有難い事であろう。

 

良いオーナー様の元に嫁いで、本機は大変に幸せ者である。

 

 

オーナー様の、本機に注ぐ愛情の深さと、

 

名機を所有するに際しての覚悟ある姿勢、

 

その在り方に心を打たれた私は、延べ約1か月を費やして、

 

可能な限りのレストア作業をさせて頂いたのだが、、、

 

 

結論から言おう。

 

レストアを終えて、試し覗きをした時、

 

あまりの素晴らしさ、見事さに、

 

あらためて感嘆、驚愕したのであった。

 

それに関しては、あらためて詳細を後述させて頂きたいと思う。

 

 

今回も可能な限り、本来の在るべき姿を目指して、

 

オリジナルに敬意を表し、極力オリジナルに忠実に、

 

レストアさせて頂いた。

 

 

まずは、伝説のノバーの完全解体の様子をご覧頂きたいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

日本製品らしく、非常に精緻で丁寧な、

 

極めて工作精度の高い設計、構造で、

 

当時のCARL ZEISS JENA製に匹敵するくらいの、

 

見事なものであった。

 

 

対物部の当初の様子は、恐らくは油土かと思われるが、

 

いわゆる当時のシーリング材のようなものが、

 

びっしりと充填されていたが、経年劣化を感じさせるものであった。

 

ひとまずは徹底クリーニングを行い、後にシーリング処理を施す。

 

 

 

 

 

 

対物レンズのコバ塗りは、お約束通り剥げてしまっていたので、

 

コバ塗り施行をさせて頂いた。

 

 

 

 

 

 

対物鏡筒の内壁の黒塗りも薄くなっていたので、

 

専用塗料で塗り直させて頂いた。

 

 

迷光対策、漏光対策は非常に大切だと、

 

常々、私は考えている。

 

 

 

 

 

 

 

対物カバー裏にも、シーリング処理を施す。

 

 

 

 

 

 

対物レンズの固定ネジが、何と片側に3箇所もあった。

 

左右で合計6箇所となるが、これほど多いのは初めて目にした。

 

徹底振りが凄まじい。

 

 

ネジは劣化していたので全て交換し、

 

欠損していた箇所は補填させて頂いた。

 

 

ただ、もしかすると、3箇所全てを、

 

固定する訳では無いのかも知れないが、詳細は不明である。

 

 

 

 

 

 

 

対物部全てのパーツのオーバーホール後

 

真鍮製のパーツが、何とも美しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

次に接眼部だが、当初は汚れとカビで、なかなかに酷い状態であった。

 

 

 

 

 

 

接眼部を全て分解し、オーバーホールを行う。

 

 

 

 

接眼レンズにも、コバ塗りを施行させて頂いた。

 

 

 

 

 

 

ピントリングも徹底的にオーバーホールさせて頂いたが、

 

よりスムーズで快適なピント操作を目指して、

 

ネジ切り部は、雄側雌側の双方とも研磨させて頂いた。

 

 

 

 

 

 

接眼レンズの周囲も、油土にてシーリングがされていたので、

 

新たにシーリング処理を施す。

 

 

 

 

 

 

プリズムも徹底クリーニングと、コバ塗りを施行させて頂いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鏡体内部もクリーニングした後、黒塗りが薄くなっていたので、

 

黒塗り処理をやり直させて頂いた。

 

ノバーは、迷光対策も、かなり徹底されていたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

やはり、内壁を黒塗りにすると、一段と絞まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プリズムカバーの裏側も、徹底クリーニングの後、

 

あらためて、シーリング処理を施させて頂いた。

 

 

 

 

 

 

また、プリズムカバーの止めネジは、1本1本、

 

全てクリーニングした後、研磨させて頂いた。

 

 

こちらも真鍮製と思われる、非常に美しいネジであった。

 

ネジの1本も、今では貴重なのである。

 

 

 

 

 

尚、左接眼側のプリズムカバーの一部が、

 

打痕のような凹みがあったので、

 

少しでも目立たなくなるように、

 

可能な限り、修復させて頂いたのだが、

 

あらためて、板金の難しさを痛感した次第である。

 

 

 

 

 

 

 

一通りのクリーニング、オーバーホールを終えて、

 

対物部を組み立てる。

 

まるで、お風呂上がりのように、サッパリした。

 

 

 

 

 

 

 

次に接眼部も仮組みし、光軸を調整させて頂いたのだが、

 

光軸の調整時、本機の工作精度の高さに驚いた。

 

 

これまでに手掛けさせて頂いた国産機の中では、

 

間違いなくトップクラスの精密さ、緻密さで、

 

眼幅を変えても、光軸の状態に殆ど変化が無く、

 

本機の工作精度のレベルの高さが伺えたのであった。

 

 

多くの民生機では、なかなかこうは行かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光軸を調整した後は、本来シーリングされていた箇所を、

 

全てシーリング処理を施させて頂いた。

 

本機は、海軍用途だけあって、シーリング対策が徹底されている。

 

 

せっかく、ここまでシーリング対策がされているので、

 

鏡体内部には、アルゴンガスを封入させて頂いた。

 

 

アルゴンガスは、防錆や防カビ、結露に対して有効なだけでなく、

 

全ての波長域に対して透過率が極めて高く、

 

また、ガスの残存率が高いので抜けにくく、

 

見え味も向上するので、良い事尽くめなのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

延べで、約1か月程を費やしてしまったが、

 

ほぼ完全に修復作業が完了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考までに、ノバーの右接眼レンズの、

 

レティクルの様子をご紹介させて頂こう。

 

精密な目盛りが、縦軸と横軸に刻まれている。

 

 

ちなみに、陸軍用の八九式のレティクルは、

 

十三式等と同様の、横軸の目盛りだけのようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ノバー 7×50 の見え味であるが、

 

私は覗いた瞬間、本当に驚いてしまった。

 

 

像の抜けの良さや、精彩感や解像度、中心像のシャープさが、

 

トップレベルであるのは勿論なのであるが、

 

何よりも驚かされたのは、歪みの少なさだ。

 

 

少なく見積もっても、90%以上あるのでは?

 

と思える圧倒的な良像範囲の広さであり、

 

周辺像に至るまで解像度が保たれており、

 

像が殆ど崩れないのである。

 

像周辺の減光も、体感的には殆ど感じない。

 

 

後の、Nikon 7×50SP 等も非常に優れた双眼鏡で、

 

周辺の歪曲等が極めて少ない優秀な性能であるが、

 

もしかすると、それ以上なのでは??

 

と思えるような歪曲の少なさであった。

 

 

また、拙宅所有の戦後に作られた「 Novar 」 よりも、

 

更に歪曲が少ないように感じた次第である。

 

 

Novar と、7×50SP が同程度と言った感じだろうか。

 

とは言え、Novar も SP も極めて優秀なので、

 

ノバーが異次元と言うべきだろうか。。。

 

 

私がこれまでに経験した双眼鏡の中では、

 

間違いなくトップ3に入る周辺歪みの少なさであった。

 

これには心底、驚かされたのである。

 

 

コーティングの有無を除けば、本機以上に高性能な双眼鏡は、

 

現代、果たしてどれだけあるのだろうか!?

 

 

間違いなく、我が国の双眼鏡の名機中の名機として、

 

未来永劫、語り継がれるであろう。

 

 

そんな本機の修復に携わる事が出来て、

 

本当に幸せで、光栄な事であった。

 

オーナー様には、あらためて感謝の意を申し上げたいと思う。

 

 

現在でも十二分に通用するどころか、現代に於いても、

 

本機以上の性能を有する双眼鏡は、なかなか見当たらない。

 

 

当時の日本人の極めて高い技術力を目の当たりにして、

 

日本をナメるな!! 日本人をナメるな!!と、

 

我々が忘れかけた 侍魂、大和魂、桜魂 を、

 

思い起こさせてくれるような気がしたのであった。

 

 

ノバー 7×50 には間違いなく、大和魂が込められていた。

 

日本人の誇りと意地と尊厳を、垣間見れたような気がしたのである。

 

 

この日本の精神を、ノバー共々いつまでも忘れずに、

 

大切にして行きたいものである。

 

 

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

 

感謝

 

 

 

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